第七章の1
空は暗く、街灯も灯されたころ、労働で疲れた運転手が速度制限を無視した速さで車を走らせ帰宅する中、俺は1人ゆっくり自転車をこいで帰っていた。
剛田の件で疲れたからというのもあるが、晩飯について考えていたために早く走らせる事ができなかった。
帰路に着いたのが遅くなってしまったため、料理して食べるより、さっさと風呂を済ませて布団で寝たい。だが胃は飯を食えと叫ぶ。市販の惣菜でもでも買おうか、金ないけど。
どういう事だろう。俺の部屋に明かりがついている。俺は登校する前に部屋全体を確認するため、電気を消し忘れた可能性は低い。
強盗か、ならば入る前に何か武器になるものを持つべきだ。しかし、武器になるものは持ち合わせていない。ないよりマシだから眼鏡をかけておこう。
俺の部屋付近に着くと食欲を掻き立てる香りがする。扉に耳を当て耳を立てると非常に穏やかなリズムが聞こえる、これは鼻歌か。中に誰かいるのが確定した。ノブに手をかけてみると鍵がかかってない。意を決して開けるしかない。
「誰かいるのですか。」
ゆっくりと開き、中を確認する。
「お帰りなさい、二式さん。」
開いた先はフライパンで野菜を炒めている井端さんであった。
「井端さんか。」俺以外に鍵を持っているといえばこの人だけだからな。当然といえば当然か。これなら眼鏡は要らないな。
「どかしました?」
「電気が付いていたから強盗でも入ったのかと。」
「そういえば連絡を入れてませんでしたね。」
井端さんはそういうと、火を止めて、俺の方を向き笑顔を見せながら「ごめんなさい。」と謝った。
井端さん、故意じゃないですよね?その笑顔の裏に何か隠してませんよね?
「でも、家にいたのが井端さんで良かったです。鞄を置きたいので通って良いですか?」
玄関前に台所があるため、部屋に入るには必ず通ることになる。
調理中の井端さんには悪いが仕方ない。
「はい、大丈夫ですよ。夕飯も出来上がるので、待っててください。」
「わかりました。」




