第六章の2
「なんだよ、これ。」
目の前に広がる光景。それは、倒れた3人とそいつらを見下す男子生徒だった。地面に伏してピクリともしない生徒や丸まり腹部を抑えて唸る生徒、部室棟の壁の血痕を辿った先に倒れている生徒。
部室棟の血を見る限り顔面を壁にぶつけられ、そのまま下へずれ落ちて倒れたのだろう。
倒れている男子生徒とは面識がないが、この惨状を作り出した奴は知っている。剛田 剛、遠山高校内では悪名高い。
「来る時を間違えたな。こいつらみたいになりたくなければ、サッサと消えろ。」
俺への脅しか。眼鏡をかけていなかったら言われた通り逃げていただろう。
今、優先すべき事は3人の怪我だ。だが、一般の救急でいいのだろうか。リスト関連だから避ける方が良いのではないか。
どうすべきか。麗化に電話はどうだろう。麗化なら確実かもしれない。
「動かねぇのか?刺激が強すぎたか?」
速水さんの時といい、自身の能力に浮かれた奴は挑発的になるのか。
どうでもいいや電話しよう。スマフォを取り出し麗化に電話する。だが、言い方はこうだ。
「陽野 二式です。遠山高校、部室棟裏で男子高校生3人が怪我しています。気を失っている人もいるので救急をお願いします。」
麗化は詳細を聞いてくるが、それを無視して電話を切る。次にする事は。
「細かいことを先生に説明するため、職員室についてきてくれますか?」
「今の状況を見て、よくそんな事言えたな。」
右手の拳に力が入れて近づいてくる。このまま突っ立っていると殴られて終了だ。
「いえそれ程でも。私は怪我人を放っておけないタチですので。」
怒れ、怒れ、そして正しく判断できなくなれ。
「あまり俺を舐めんじゃねぇぞ。」
右腕を振り上げ俺に殴りかかる。
体勢を低くして左へ避け、そのまま勢いに任せて逃げる。
「逃がすかよ。」
追い掛けてきた。狙い通りだ。このままついて来い。そうすれば麗化が3人を安全に病院へ送る事ができる。
このまま人の多い校内で目立たせ、先生に任せるのも手だが剛田が安静でいられるだろうか。暴れて先生の身に危険が迫るのではないか。
剛田が安静になればいいのか。安静にならざるを得ない状況を作りだす方法がある。しかし、これは最悪な方法だ。下手をすれば一生癒えない怪我を負わすことになるかもしれない。
だが、これしかない。




