第一章の2
ここは何処だ………
立っている場所は交差点の中心、周りは高層の建物だけで、人が見当たらない。車も走っておらず、まるでこの世界に自分以外いない様な感覚に陥る。
ただいえることは俺が住んでいる葉山荘の近くではない事だけ。
「急に走ったら危ないかな。」
背後から声がする。
「お前が住んでいた部屋は、葉山荘の二階でドアの前は人がすれ違えるかどうかの渡り廊下と申し訳程度の手すりじゃないかな。」
俺は声の方向に向き「どうなっている?なんだこれは。俺は部屋から出ただけなのに何が起こった?」と、怒りを込めて言った。
「みた通りかな。」
惚けた声が帰ってくる。
「答えになって無い。説明しろ。」もう一度強く言った。
彼女は視線を斜め左下に落とし、一度溜め息を大きくついて「ここは大山じゃないかな。」と言った。
「大山?」情けない声が俺の口から出た。
大山は、俺が住んでいる葉山荘から駅に向かって歩いて20分、電車で1時間30分揺られて着く場所だぞ。
「そうかな。」
「俺は部屋から出ただけだ。何故大山にいる?」
「空間を少し弄ることで、扉と大山の一番大きい交差点を繋げただけじゃないかな?」
空間を弄るとはなんだ。彼女の口から出る言葉の羅列に翻弄されてばかりだ。
「理解出来てない顔かな。」「当たり前だ。」現在の自分を言い表されたからか、相手を肯定する言葉が口から出て行った。
「いいかな。お姉さんが教えてあげるかな。」満面の笑みを浮かべていきなり言い出した。
俺が彼女の言葉を認めたため、余裕を持ったのだろう。
「ここは大山、会社が密集しているため本来は黒い海になるくらい人がいるんじゃないかな。今は交通規制をかけているからいないんじゃないかな。」彼女は、得意げに説明しだした。
「会社の売り上げ等は国からの厚い手当があるから大丈夫じゃないかな。その他には......」瞼が重い、話し声もただの音に聞こえる。視界は揺らぎ、自分が立っているのか座っているのかわからない。
「薬が効いてきたかのかな。普段使わない表情筋を動かすべきではなかった、とても疲れたかな。」




