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泡沫の夢、幻の未来  作者: 蚊取り線香
第五章
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第五章の2

移動教室、10分という短い休憩時間で動かなければならない。本当に休憩しているのか、していないのか疑問にかんじるのだが。だが、忙しい最中でも構わずに話しかけてくるやつはいる。


「やっと見つけました。陽野 二式さんですよね。」


鞄から筆記用具や教科書、ノートを取り出し、教室を出る準備をしていると、いきなり話しかけられた。身長は鳩尾(みぞおち)あたりで、髪の毛は短く、茶色がかっている。記憶を辿るが思い当たる人はいない。しかし、十中八九転校生だろう。


「私の名前は(はな)と言います。1年B組です。」


押しかけるように言ってくる。できるなら名字も教えて欲しいのだが、今はそれどころじゃない。


「華さん、用なら後でいいかな?次の教室に行かないといけないんだけど。」


「すみません。次、化学だったのですね、すみません。昼休憩、昼休憩にもう一度会って貰えますか?」


申し訳なさそうに断ると、慌てて頭を下げ、顔を上げたと思うと次に会う約束を押し付けて来た。

彼女は、どうやら1つのことに集中すると周りが見えないらしい。

教室から次々に出て行くクラスメイトや鞄から取り出した教科書、少し見れば分かるものを見落としている。


現に何度も頭を下げて謝っている華さん自身が、準備に手間取って出遅れたであろうクラスメイト何人かから見られていることに気づいていない。正確には華さんに対する視線でなはなく、何度も女の子を謝らせてる男への非難の目、だが。


「わかった、わかった。昼休憩ね、よろしく。」


俺は世間の冷たい風から逃げるように荷物を持って教室を出るしかなかった。今なら無実の罪で裁かれる人の心境がわかる気がする。


話していた時間が想像より長かったらしく、教室に着く前に予鈴がなった。


「すみません、遅くなりました。」


扉を思いっきり開け、肩で息をしている姿を先生に見せる。実際は疲れていないが必死に走って来た、というアピールだ。


「10日休んでおいて遅刻をするとは何様のつもりかな?」


この声と、語尾の「かな」の言い方、聞いたことがある。麗化だ。


1週間ほど忙しいと言っていたのは、教師として高校に入るためだったのか。と、なると井端さんもいる可能性があるな。


「呆けてないで早く席に着くかな。」


「はい。」


「じゃあ、前回の続きをするかな。」


今、前回の続きと言わなかったか。それに、10日休んだとも言っていた。つまり、10日前から赴任していたということではないか。

しかし、俺は何度も顔を合わしていたはず。


化学はグループで1つの実験をする。グループが同じである宮に聞いてみるか。


「あの先生いつから担当していた?」


「本格的に担当するようになったのは今日からなんだけど、授業の進行方法の違いで生徒が混乱しないために、とかで何度か来ていたよ。」


いちいち腹立つ笑顔だな、女子には受けがいいんだろうが。それにしても、麗化にも生徒を想う心があったんだな。俺に2回も薬を打った同一人物とは思えない。


何度か来ていた……

つまり、合間を縫って授業に来ていたということだな。俺といた時間は24時間ずっとではない。だから、学校に顔を出すことはできる。


銃を突きつける麗化が印象強く、目の前の人が本物なのか疑ってしまう。


「そこ、喋らない。実験で怪我しないためにもしっかりと聞くことかな。」


「すみません。」


悪いな、宮。一緒に謝らすことになって。だが、1つわかったよ。前の先生が一斉に辞めてできた枠に麗化らが採用されたことがな。

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