第四章の5
「能力のオンオフに境目はほぼないんだよね。これを教えろと言うんだから、依代さんと可変さんは鬼だよね。」
境目がほぼない?それだと教えてもらう事はできないと言っている様なものではないか。
「それは、諦めろと遠回しに言っているのでしょうか?」
「そんな事を言ったつもりはないよ。実際、何人も俺の指導を受けてできるようになったリストもいるし。」
取り繕ったのか、それとも自身の指導力を自慢しているのか。だが、切り替えが出来るようになれることは判明した。
「でも、その言い方だと確実ではないんですよね。」
「感覚の良さが重要だからね。その人の持っているモノに左右されるかな。」
才能重視か。俺にできそうにないな。
「できなくても落ち込まないでね。最低、前よりはマシ程度にはするから。」
「それ、どの程度のことを言ってるのですか?」
「裁量かな。」
判らねぇよ。
「期待しないくらいに期待していいよ。」
余計にわからなくなった。
「始める前から結果を知ろうとしないで、まずは行動してみよう。」
「はい。」どうしよう。嫌な予感しかない。
「始めよっか。先ず火をつけます。次に、どれくらい火を伸ばそうか想像します。ほらできた。」
単純明快。これほど斬新な教え方が出来る人に講師を受け持っていただけるなんて、涙が出ちゃう。涙が出る理由は言わないけど。
「すみません。バカな自分には理解できなかったようです。もう一度詳しく、教えてください。」
「これ以上ない程、分かりやすく教えたつもりだけど?」
何処がだよ。「殴っていいですか?」
「暴力は良くないよ、二式くん。それに俺の方が年上。」
「では、豊富な人生経験を活かして、神経を逆撫でするようなことをしないでもらえないでしょうか。」
「善処するよ。」
「絶対にしないやつですよね、その言葉。」
頭痛くなってきた。
「じゃあ、今度こそしっかりと教えるよ。」
「本当にお願いしますよ。」
期待と信頼はすでにゼロを通り過ぎてマイナスに振り切ってるけど。
「諜報系の能力を持ってる人は、大部分が感情が能力を発動する条件になってるんだ。」
まともに説明している。
「それはどういう事ですか?」
「二式くん。最初の逮捕協力で、何か強い感情を持った瞬間はなかった?」
「強い感情ですか。最初の攻撃を受けた時、死ぬと思った、とかならありますよ。」
後は、死にたくないから避けようとか……
もしかして、これか?
「何か気づいたことがあったようだね。良かったら教えてくれるかな?」
死なないために避けようと思った。そして避けるために……
「相手の動きを絶対に見逃さない、と思いました。」
「きっとそれだね。その感情が二式くんの能力を発動するトリガーになったんだね。」
成る程、感情で発動する、の意味がわかった気がする。
でも「都合よくそんな感情できるものでしょうか。」
「そこに気づいちゃったか、二式くん。俺、ここで能力の使い方を理解したことにして、取りやめて寝ようと思ってたんだけど。」
「寝るのは自分に能力の使い方を理解できるまで教えてからにしてください。」
「ハードル上がってない?」
「誰かさんが務めを果たそうとしないからじゃないですかね。」
「なんだか敬意がなくなってきてない?まあいいけど。」
因果応報、自分の行為を悔い改めろ。
「で、意識的に感情を変化させて能力を発動するのは難しい、だっけ?それは格好や行動と結びつける方法でなんとかなるよ。実際、それを教えてできた奴いるし。」
「それ、気になります。詳しく教えてくれませんか?」
「前回の奴は、男2人。片方は迷彩服を着て双眼鏡を覗く事で、もう片方も格好は同じく迷彩服、スナイパーライフルのスコープを覗く事だったかな。」
行動を結びつける……
ある行動をとれば能力を発動する、という意味か。
それなら意図的に能力を発動できるかもしれない。
にしても前回の二人、完全に趣味だな。俺には目立ったが趣味ないため、その2人のようなことはできない。
「どうしようかな。」




