第四章の2
「随分と詳しく話してくれたね。」
俺の話に対して関心を示す依代さん。自分でも驚くほど記憶していると思う。
「お陰で2つに能力を絞ることができたよ。1つ目は鮮明に記憶してるところから記憶能力、2つ目は相手の事をよく観ていることから観察能力。でも、元から備えてる才能というのも十分にあり得る話だから過信はしないでほしいな。」
そういうことか。諜報系の能力は目立ったものが少なく、更に、その人が持つ元々の能力も関係してくるから、判断基準があやふやで判りにくいのか。
「麗化さんは現場監督してたんだよね。何か二式くんについて気になったこと、気付いたこととかないかな。あったら教えてほしいな。」
「気になったことか」
顎に右人差し指を置き、右斜め上を見上げて考える素振りをする。
「動きは初心者そのものだったのに変に落ち着いていたとかかな。」
「そう、そういったものが欲しいんだ。」
「後は、最後に答えあわせ?みたいなことされたかな。」
「それはどういった事だい?」
「えっと、速水 走太の能力がどういったものかだったか、かな。」
「ありがとう麗化さん。今ので二式くんの能力が何か判断できたよ。」
余程嬉しかったのか、声が大きくして麗化にお礼をいう。
「後は確認のために二式くんに質問しようと思うんだけどいいかな。いいよね。」
「俺に質問ですか。」
「そう、速水君の能力と使い方について言ってくれないかな。確かなものじゃなくてもいいからさ。」
分かりましたよ、断ることができそうにないし。
「予想でいいんですね。では、速水さんの能力はパワー関連で脚の筋力。これは麗化さんに確認しました。以降は想像です。彼の攻撃方法は、一度地面を後ろに蹴って、それで得た勢いで滑ること。後は相手にその勢いを伝えるために手を広げて前に突き出すだけ。こうすることで相手を突き飛ばすことができます。」
一度避けた時に見た直線、あれは滑ってできたもの。手を広げていたと思ったのは最初に突き飛ばされた時だ。あの時俺はチョッキを着ていた。
チョッキを着る時に触って感じたのだが、一世代前の物で現代の弾丸を止めることができないとはいえ、身を護るだけあって相当の硬度があった。
あんな物を握り拳で殴ったら指が骨折するだろう。しかし、あの男は骨折していない。だから骨折しない手のひらで突き飛ばした、としか考えられない。
殴ったではなく突き飛ばした、と思った理由は簡単。あいつのスピードだ。
目で捉えきれない速度で滑るため殴る動作ができない。だから殴るのではなく、手を突き出して掌で滑る勢いを伝える。滑る勢いが尋常じゃないからこそできる技。
「すごいね。驚いたよ。二式君の言った通りさ。」
依代さんは拍手をして賞賛する。
「これで確実だね。二式君は観察力が薬で格段に上がった。でも、この能力には感情や性格に干渉する時があるんだよね。だから二式君が初めての逮捕協力でも落ち着いていたのは、これのせいだと思うよ。」
感情や人格に干渉?それはかなり危険ではないのか?
「このままだと今後の人付き合いに影響するかもしれないよね。」
確かにそうだ。
「そうならないためにも能力をコントロールできるようになって、友達や近所の方とコミュニケーションを取る時には能力を使わず、逮捕協力の時だけ能力を発動しよう。」
「それは今からですか?」
「当たり前じゃないか。思い立ったが吉日だよ。麗化さん、今日、環君は居るよね。」
「シフト上はいることになってるけど、本当にいるかは知らないかな。」
「確かにあの人は自由奔放に生きてるからね。」
「そんな人から教えられるんですか?」真面目に教えてくれる気がしないのだが。
「環君は能力の使い方をよく知っているから、一番講師に向いてるんだ。だから、行ってみよう。」
「この時間だと体育館の控え室で寝ていることが多いから、行くならそこかな。」
2人の話から環という人はまともな奴に思えない。
「気乗りしないな。」




