第一章の1
「これであなたは、ヒトをやめました。」
彼女はそう言って俺に近づき、そして俺の手元にある宅配物を乱暴に取ると「やはり、私がしなければならないのですね。」と、力なく漏らした。
宅配物を散らかった机に置いてガムテープを外し中から何か物を取り出すが、それは身体の陰にあるため、俺からは彼女の背中しか見えない。
一段落ついたのかこちらに体を向けた。
「今から、あなたにこの薬品を打ちます。この薬があなたの身体にあっていれば、適合者、つまり超能力者になることができます。」と、言って茶色い瓶を俺に見せた。
「もし、体に合わなかった場合......」
少しづつ声が小さくなっていき、最後には何も聞こえなくなる。
「まだ、あの事ひきずっているのかな?」
玄関から鼻にかかった声が聞こえた。
振り返り声のした方を見ると、俺と同じくらいの身長、髪は腰までの長さがあり後ろで1つにまとめているスーツ姿の女性がビジネスシューズを履いたまま上がってきた。
「職務を放棄するのはいけない事じゃないかな?」声が横を通って行く。
「いつもの黙りかな?」何度もこの様なやり取りをしているのか、溜め息混じりに言った。
スーツ姿の女性は、頭を掻きながら俺を見て、溜め息をつく。
「私から、説明するしかないのかな?」と床に吐き、険しい目で俺に向き直った。
「お前は、もうヒトじゃない。その薬を打つのは、絶対だ。」
「いいかな。」と俺に吐き捨て、彼女はポケットからハンカチを取り出しながら俯く女性に向き直りハンカチを渡した。
「勝手に話を進めないでください。2人は誰なんですか?薬ってなんですか?」
「関係ないかな。取り敢えず打たせてもらっていいかな。」
そう言って、黒く光る重々しい物体を内ポケットから出し、俺に向けた。
「まて、何をしているんだ。」
「大丈夫かな。」何が大丈夫だ。
「それは、なんだ。」声が荒立つ。
「離れた距離の物体に当てる道具、銃かな。」
「ふざけるな。」俺は後ろを向き、ドアに向かって全力で走った。




