第三章の3
変に緊張するな。
気乗りはしないがこれからするのはたった1つ。暴れる超能力所持者の逮捕。
パトカーで麗化はリストを捕まえるために怪我をさせても構わないと言っていた。
後に最悪殺してもいいとも言っていたが、それは避けたいな。
「お前もリストか。俺を引っ捕えに来たのか?」
俺の瞳を見て判断したのか、目の前の男が挑発的に話す。
「はい。その通りです。殴り合いは避けたいので、できれば抵抗せず捕まってもらえると助かります。」
身長と顔立ちから判断するに、20代前半だろう。
「誰が捕まるか。」男性は鼻で笑う。
「お前は黄色だろ。右目のコンタクト外れてるぞ。」
なるほど。諜報系はそんな風に見られてるのか。確かに力も無ければ物を操ってトリッキーに振る舞うこともできない。
そもそも、俺は自身にどんな能力を持っているのかもわかってないのだが。
さて、どのようにして捕まえようか。
言葉巧みに相手を騙して、丸め込めたら楽なのだが、そんなことができるほどの語彙力が俺に備わってないし、相手も騙されるような馬鹿じゃないだろう。
さっきは冗談半分で抵抗しないでくれと言ったが、本当に抵抗せず捕まって欲しい気持ちになってきた。
「おい、俺の話聞いてんのか?」
「すみません。考え事してました。」
「おまえ、他人の話は聞くように先生に教えられなかったのか?」
こいつ、やけに喧嘩を売るような言動をするな。テレビかなんかでこんな奴を見たことあるような気がするぞ。
罵詈雑言を重ねる目の前の青年男性。喧嘩を売る男性。
「噛ませ犬か。」
自分の強さに浮かれて主人公に挑発して結局負ける。うん。雑魚キャラの典型とも呼べるものだな。
「おまえ、なんて言った?自分の立場と言うものがわかってないようだな。」
男は身体を震わせ言葉には力が入っている。これは怒ったな。俺、死んだ。
男は脚を前後に開いて力を込める。そして……
えっ。俺飛んでる?後ろに跳んでる?
いつの間に、こいつ、近くに来たんだよ。
いきなりの出来事で理解が追い付かない。
背中に受ける強い衝撃、落ちる木の葉。
腹に少しの違和感、意思と反して咽せる俺。
腹を殴られたのか。だが、それだけだと俺が今植木にもたれかかってるわけがない。何が起きたんだ?
混乱を伴いながら顔を上げて目にした光景は、俺が元いたであろう場所に砂埃が舞い上がり、その中心に男が右手を突き出して立っている姿であった。




