第三章の1
「体調の方は大丈夫ですね。」
記録が終わったのか、濃い青をした眼鏡をつけた井端さんは、タブレットを右手にある机に伏せて置く。
「次は、瞳の色を見るようになっているのですが。」
「何かあったのですか?」
「瞳の色を見ること自体は簡単なのですが、初めて見る結果ですので……」
井端さんは右人差し指を顎に当て考えるそぶりをする。
「私だけで判断しない方がいいと思うので、麗化先輩を呼んできますね。」
そういって井端さんは出て行った。安全を取ったのか責任から逃げたのかはわからない。だが「麗化か……」俺に薬を2度も打った人。
「会いたくねぇ。」
あの一件から自分の中に麗化に対して苦手意識ができあがった。
しかし、俺の気持ちを無視して奴は来る、軽快な足音とともに来る。
「また何かしでかしたのかな。」
俺のせいになるのか。俺は何もしていないのだが。
麗化は「例外処置をするこっちの身にもなってほしいよ。」と漏らしながら近づいてきて、いつぞやと同じように両手で顔を固定された。
「片目だけの変色かな。」
「はい。この場合、どのように報告書に記入すればよいのかわからなくて。」
「柔軟に対応できない行政側には、いつも通り黄色、研究員に対しては黄色の横に括弧付きで片目のみと記入しようかな。」
「わかりました。」
「ほかにすることはあるかな。」
「いえ、ありません。ありがとうございます。」
「じゃあ、来たついでに説明でもしようかな。」
顔の拘束ほどいて立ち上がり大きく伸びをしながら言う。
「まずは、おめでとうと言っておこうかな。これで能力を持つモノ、リストになれたかな。君の能力はどのようなものかはまだわからないけど、種類だけは瞳の色で判断できるよ。君の瞳が黄色であるから諜報関連の能力かな。自分で確認するといいよ。」
俺は麗化からピンクの手鏡を受け取り、顔を映す。確かに右目が黄色になっている。
「色は3種、赤、青、黄。赤は肉体強化関連で、青は物質のコントロール。黄色はそれ以外すべてとなっているけど、ほとんどの能力が諜報で役に立つから諜報という種類に分類分けしてるかな。」
ということは、麗化は諜報で、井端さんはコントロールか。
「で、ここからが大切な話。お金の話かな。」
麗化の声が大きくなった気がする。
「薬を打ったモノには技術開発協力金として月末に5万円が支給されるかな。」
5万か。一人暮らしの俺にとってはうれしいお金だが、生死を彷徨ったことを考えると少し足りない気がする。
「もう一つが捜査協力金。能力者の中には力に浮かれて暴れる奴がいるかな。だからそいつを逮捕することを手伝うと報酬としてもらえるかな。」
「金額は?」
「明確な金額はわからない。仕事量によるかな。」
即座に金額を聞いたことに呆れたのか溜息をつく。
俺は一人暮らしの学生だ。実家から仕送りをもらっているとはいえ健全な学生。いろいろお金がかかるのです。仕方ない。
「その他にもいろいろあるけど、それは追々話していこうかな。」
そういうと麗化は井端さんに「あとは任せたかな。」と一言おいて部屋を出た。
半ば無理やり説明を終わらせたようなところである。麗化から役割を押し付けられた限り、次は井端さんが話を進行することになるのだが。
「私はこれからどうすればよいのでしょう?」
「ですよね。」やはり戸惑った様子である。これは俺が何とかしなければならないのか。
「とりあえず朝食を食べませんか。」




