第二章の8
「やめろっ!」
へ、ベット?なんで俺、寝てんの?
周りを見ると代わり映えしない俺の部屋。
「そうか、薬を撃たれて寝たのか…」
ちょっと待て、え、生きてる?俺は生きてるのか?
自身の身体を触ったり、抓ったりして確認をする。
「ただいま帰りました。と言っても返事なんかありませんよね。」
「あっ」ここで来るのか。目の前にいるは井端さんの陰。
井端さんの表情は驚愕。この反応は当然だろう。
なぜなら、井端さんが見た光景はベットの上で泣きながら裸で自身の体を触りまくる変態の姿だからだ。
夕焼けか朝焼けか、紅く染まった部屋で、涙を流す裸の男とそれを見て驚く女性。2人の間にしばしの沈黙が訪れる。
この沈黙を破ったのは女性。井端さんは見る見るうちに顔を赤くなり、最後には悲鳴を上げて玄関へ走って行った。
「待ってくれー!」
男が発した必死の言葉は紅い空に響いて消えていった。
「-で、身体を触っていたと。」「はい。」
1Rの部屋にベットの上で正座をしている青年とベットの傍に立ち見下ろす女性。
自身の面目をかけた決死の弁護により、井端さんはなんとか納得させることができた。
しかし、彼女の神経を逆撫でするようなことはしたくないため、何時でも土下座することができる正座をして反省の色を見せる。
弁解することができた頃には空は明るくなっており、紅かった空は朝焼けによるものであったと知る。
「外を見て現実逃避をするのはやめてください。変態行為をした理由を納得することはできたとしても、私が不愉快な思いをした事実は変わらないのですよ。」
「誠に申し訳ありません。」
俺が薬の作用で意識をなくしていた間に服を脱がされていなければ、そもそも起こらなかったのではないかと思う。
だが、詭弁を弄する井端さんを前にそのようなことは言えるのか。答えはNOだ。
今の状況でそんなことを言うとどうなるのか、想像しただけで恐怖する。あらぬ非でも認めて謝り続けるのが吉だろう。
「もういいです。今からしなければならない事項があるのでそちらの方を進めますね。」
萎縮している俺を見かねたのか、井端さんは大きくため息をして、やや呆れ気味で言った。
「今からするのは体調の確認等ですので身構える必要はないですよ。では、私は用紙を取りに行きますので。」
そう言って井端さんは玄関へ向かっていった。
残された俺は何しよう。「って、考えるまでもないか。」
それはなぜか「さて、服を着よう。」今まで俺は裸だったのだから。




