第十三章の2
「今思えばすべて彼の策だったと思います。実験室に颯太を連れてきたところから何もかも…」
想像を絶する話を聞いた俺は何もできなかった。
何も罪がない子供が大人の勝手でその子の命が左右される。
このようなことが許されてよいのか。
「井端さん。その孤児院は今も。」
「いいえ。孤児院の建物は今も残っており、児童養護施設として機能しています。しかし、実験施設としては使われていません。」
一安心か。だが、一時的なものとはいえ、悪逆非道な施設が存在していた事実は変わらない。
二度と起こらないでほしい。
「それで、井端さん。彼について聞くことはできますか。」
俺の問いに対して首を静かに横に振る。応えることができないという事だ。
今もその協力が続いているのだろう。それだと一つ疑問が出てくる。
「どうして俺にそのような話を。」
「第四課、通称シカについて調べられているのですよね。二式さん。」
彼女は悲しそうに、相手を哀れむように、憂いを帯びた細い声で話す。
何故ここで第四課が出てくるのか疑問に感じたが、少し考えある一つの答えが出る。
「まさか、その孤児院は。」
いつか言われた麗化の言葉が想起する。「国の指示で動き、情報は外部へ流れない。国の好き勝手にできる。君が一歩踏み込んだ先は闇だ。」
井端さんがいた孤児院は正に国の暗部そのものではないか。それにこのタイミング。それはつまり。
「孤児院は現在の第四課にあたる役割をしていました。」
暑くないのに汗が流れる。決して爽やかな汗ではない。俺の心を表すかのように酷く不愉快な汗。
対象は子供ではなくなった。だが、人道的なものではない組織が今もまだ闊歩している。
「これ以上関わると、二式さん、あなたも剛田さんのようにシカへ送られる可能性が出てきます。捜索はやめてください。」
素直に頷くしかない。麗化ではないが、命あっての物種だ。身の安全が何よりも優先する。
「話は変わりますが、颯太君は実の弟さんではなかったのですね。」
辛気臭いのはいったんやめよう。先ほどの話を聞いていると井端さんは実の弟ではないがブラコンの気がある。この空気を入れ替えるにはもってこいだ。
「実際は違いますが、資料上では実の弟になっていますね。孤児院を出るときにそのようにしました。」
「そうなんですか。」
弟さんについて強い興味はない。だが、ないわけではない。相手の機嫌を損なわない程度に返事をし、とりとめのない話をしてシカの話を終えた。
次回は11/20に投稿します。
今週でリアルの方が落ち着いてくると思います。(だといいなぁ…)
なので来週から火曜と木曜の投稿に戻します。(戻せるよね、なるよね。)
これからもよろしくお願いします。




