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黒幕令嬢のサーヴァント  作者: 球磨川つきみ
第一章:黒幕令嬢と瀟洒な従者
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9



「さて、楽しいことになると良いのだけど」


 まずは、彼らの忠誠を試してみようではないか。

 一人でも牙を向いてきたなら面白い事になる。そう考えながらしかし、先程交わした声のみのやりとりの限りでは、そうなる望みは薄そうだとも思う。


 だが、ここは自分が遊んでいたゲームのようでいて、それとは違う世界だ。

 重要なのはその点だった。


 自分のことを見も知らぬ、西園寺の名など聞いたこともない。そういう者達があふれている筈だ。

 どうしてこんな事が起こったのだろう? 異世界に転移? セフィロトの重大にして奇妙なバグ? まるで答の出ない謎。


 未知と障害。その二つは、退屈と達観で凍りついた彼女の心を溶かしうる、数少ないものである。

 もしかしたら――いいえ、きっとダメねまた傅かれるだけ――そう、諦めながらも心のどこかでは期待している。


 己の価値観を揺り動かすような出来事を。

 この世は退屈なものではないのだと、この不思議な出来事が示そうとしてくれているのではと。

 まるで白馬の王子様を待つ、無垢で幼い少女のような心で、西園寺巴は期待しているのだった。


 現実の、西園寺の邸宅においてはその可能性を感じさせたのすらたった一人。

 機械のように仕事をこなし、人形のように傅くつまらない男だけれど。

 小娘一人に牙を剥くことすらできないあの意気地なしは、時折、ほんの少しだけ、意外な所を見せてもくれる。


 何か、ではなく、誰かという個人に限るならば、自分はその従者にこそ世界で最も期待をかけているのだと。そんな事には気づかないままに、彼女は諦めながら期待する。


 心躍る、夢物語を――。



■□■□



 空中庭園の地下、最奥にあたるその広間は美麗な調度品の数々で彩られていた。

 銀枠の窓の外には魔法による偽りながら、煌めく星空が映し出されている。

 天蓋から吊り下がったシャンデリアの華美にして優雅な事は比類なく、ペルシャのそれにも似た自然的で複雑大胆な模様の絨毯は床面にあることでその部屋全体の気品を示してもいた。


 かつてそこにあった、アヤトと主を除く33名のギルドメンバーが座っていた長大な円卓はどけられ、今はそれに比べれば随分小さなラウンドテーブルと5つの椅子だけが用意されていた。


 円卓ラウンドテーブルよりも高み、数段の階段の先にはギルドマスターたるトモエの為の玉座がある。

 マスターマインドというギルドにおいて、頂点とは常に一人、彼女だけを指す。一者独裁の組織であった。

 さて、部屋の用意は整い、紅茶はライヒがもうすぐ運んでくる手はずになっている。というところで、最初の到着者が姿を表した。


「これはこれは、まだ筆頭殿しかおられないようですのう」


 扉を開けることなく、いつの間にか姿を見せたその幼女は、魔法使い然としたローブと三角帽子を身につけていた。

 透明だが時代がかかった調子の、幼い声質とはアンバランスな言葉がアヤトに向けてかけられる。


 第二エリア、情報腐海の主。『司書』(ライブラリアン)のリベルだ。

 転移魔法が妨害されているこの空中庭園内で、短距離といえどそれをなし得るのは彼女ぐらいのものだろう。

 無論のこと、ギルドメンバーとして無条件に転移が許可されているアヤトとトモエを除いての話だが。


「ああ、まだ時間よりも15分早いからな。席につくといい」

「ふふ、少々緊張してしまいますな……我が君の座の御前に、とは」


 時代がかったようなその言葉からは、毛ほどの敵意も感じられない。〈敵感知〉(センス・エネミー)にも反応なし。

 やはり、ギルド所属のNPC達はファーブニルという例外を除けば皆、頂点たるトモエに忠誠心を持っているようだ。

 心配事項のひとつが解消されつつある事に、アヤトは密かに胸をなでおろした。


「ところで、筆頭殿」

「うん?」

「今晩のご予定などは?」

「今のところ決まっていないが……それがどうかしたのか」


 主の命令がなければ、という前提があるが、予定などない。

 自力での現実への帰還は、主が気乗りしていないのもあるが、見通しがそもそも無い事から一旦は棚上げされている形だ。


 このダアトと仮に名付けられた世界について、なるべく多くの情報を得られねば帰還の見通しも何もあったものではない。

 原因も、実のところ何が起こったのかという結果についてすらも、あまりに不透明なのだから。


「では、今日は筆頭殿の部屋に夜這いに行っても構わぬということじゃな?」

「お前は何を言っているんだ」


 リベルの幼姿とかけ離れた発言にアヤトは耳を疑う。

 彼女は人の姿こそしているが、人ではない。〈ツクモガミ〉という物に宿る異形種族で、二つ名の通りその本体は魔導書である。故にか、言葉遣いと共に精神年齢も幼くはないだろう。


 だとしても、今の発言はなんだ。

 従者として感情を表面に出さぬよう常日頃から務め上げている彼が、思わず素で言葉を返していた。


「いや、じゃからな、今夜あたり性行為を楽しまぬかと」

「言葉の意味がわからなかったわけじゃない。何故いきなりそんな発言をしたのかと訊いている」

「女の儂にそれを言わせるので? イケズじゃのう」

「…………」


 なんだろう、これは。

 ちょっと理解が追いつかないが、そう。確かリベルの設定を書いたのは虻蜂とっちゃう氏だ。

 ギャップ萌えなる概念をしきりに提唱し、アヤトに対しても語ってきた彼は、このキャラについても話していた。


 ――ロリなのに、ジジイ言葉。幼いのに、性に奔放。これ最高。アヤトさんならわかるでしょ?


 ――トモエ様が面白いって言ってくれる設定は、つまり意外性だよ。ギャップ萌えが手っ取り早いのさ。


 ――アヤトさんもトモエ様っていう激ツン女王様が萌えなら、既に理解出来てるのさ。ドントシンク、ドントフィール!


「儂の想いは知っておろうに。罪なお方よ……」


 考えず、感じるなと言われても。

 熱っぽく潤んだ瞳で見上げられる、この状況を一体どうしろと。


 ――自分のキャラを設定に入れるのも感触よさ気だったよ。僕の事が好きだという設定を、トモエ様は笑いながら見ていたから。


 それは9割方馬鹿にしていたのだと思うが、きっと彼も承知だったのだろう。「あんな美人キャラに馬鹿にされるとかご褒美ですねわかります」と意味不明な供述も添えていたのだし。


「――って、あいつのせいかよ!」


 小声で呻く。

 そうだ。ファーブニルの時に判明したではないか。

 少なくともNPCたちの認識に限り、ギルドメンバー達に関する事柄は、全てアヤト一人に統合されているのだと。

 ならば、特定のギルドメンバー、例えば虻蜂とっちゃうへの好意などが設定されていた場合……。


「んん?」


 アヤトの呻きを聞き取ったのか、それとも表情の変化を感じ取ったのかは定かでないが、疑問符とともに首を傾げる幼女の姿は純粋に可愛らしいものがあったが、それはそれとして対処に困る。

 彼は西園寺巴以外の女性にさほど興味がないのだ。そしてそれ以前に、ロリコンではない。


「なんじゃ、夜までたぎる獣欲を抑えきれぬかえ? なんなら、ここで始めても良いのじゃぞ」


 本当に、どうしたものか。ツッコミは通じず、幼い彼女の外見的に怒鳴りつけてやるのもためらわれる。


「何をサカってんのよ紙切れが」


 アヤトが思案の末に黙殺を決め込もうとしたところに、割り込む声があった。

 快音と共に扉を開け放ったその人物は、釣り上がった眼差しでリベルを睨む。

 淡く金色に光るツインテールの先は軽くカールしており、頭の上には猫の耳がついている。


「アヤト様とその、そんな事しようなんて羨ま――ふざけた事言ってんじゃないわよ、発情期のケダモノじゃあるまいし」


 リベルにつかつかと歩み寄っても音を立てない程度の軽鎧を身につけた、ハイティーンの少女。

 空中庭園の結界のただ一つ意図的に開けられた侵入口に配される、試しの門の番人。


 彼女が第一エリアの主たるワーキャット、その名も『ツンデレ門番ゲートキーパー』クース・トースだ。


「儂には猫と違って発情期などありゃせんわい」

「ワーキャットにだってないわよ!」


 ツンデレ萌えを公言し、その信念に従ってクース・トースを手がけたクラウド氏。

 何故か彼もまた、アヤトに対して同好の士にそうするように、熱い口調でそれを語ってきたものだった。

 だからといって、この二つ名は正直どうかと当時も思ったアヤトであるが、トモエ様がお認めになったのでまあいいかとスルーしていた。


 もちろん、こんな事になるとわかっていたら止めさせたさ。他の設定ともども。

 鉄面皮の裏に嘆息しそうになる呆れを隠しながら、アヤトは思った。


「おお、そうじゃったの。毎日発情期で年中交尾可能じゃったか、これは失敬」

「紙切れとインクの塊のくせに発情してるアンタにだけは言われたくないわよ!」

「儂の場合は高度な情動というのじゃ。ケダモノ風情と一緒にするでない」

「ワーキャットはケダモノじゃないってーの!」


 そろそろ割り込んで止めておくべきか。

 主のやって来た時まで、こんな口喧嘩が続いていてはみっともない。


「二人共、騒がしいぞ。そのへんにしておけ」 


 現実の部下たちにそうするように、アヤトは幾分低い声音でたしなめる。


「は、はい! ごめんなさいアヤト様!」

「う、すみませぬ」


 互いに対する態度から、頑として譲らない性格かと思いきや、アヤトが割って入った瞬間、やたらと聞き分けがよくなる二人なのだった。

 クースは慌てたように椅子の一つに腰掛ける。


「おぬしのせいで筆頭殿に怒られたではないか」

「アンタがこの神聖な場所でサカってたのがそもそもの原因でしょうが」


 そう小声でやりとりする二人は、どちらもアヤトに対して好意を持ち敬意を払っている。

 だがこれは、彼ではなく別の相手への好意をすり替えられたものであり、言ってしまえば勘違いに等しい。


 だからアヤトは、それに関しては後ろめたさと申し訳無さを覚えていた。

 リベルとクースに対して。そして確かな情熱を持って二人を作り上げた虻蜂とっちゃう氏とクラウド氏に対してもだ。

 彼はこと、自分の主人が絡まない限りにおいては至極常識的であり、またゲーマー根性とも言うべき感性も持っている。


 彼の世代――VRゲームが一般化した後に生まれた世代――の御多分に漏れず、彼もVRゲームは話題作を中心にだが、いくつもプレイしていた。だからゲームの中とは言え確かに仲間であった二人のプレイヤーに対して、この状況が後ろめたいのだ。


 そして、元はといえばセフィロトのプレイを主人に勧めたのもアヤトであり、その事がVRゲームの虜囚とも言うべきこの状況に関して、主人に対する責任もより一層のものを感じさせていた。

 たとえ彼女がこの状況を楽しんでいると言っても。やはり、責任はある。


 しかし、情報が足りない今はどうしようもないのだ。わかってはいるが歯がゆい。

 そんな思いが顔に出そうになったその時に、三番目の到着者がクースによって開け放たれたままの扉を通過して来た。


「クラウディウス、お招きに預かり参上した」


 ――その男は、筋肉マッスルだった。


 首は丸太のように太く、肩から手の先にかけて大小数々の力こぶが隆起する。

 胸から腹にかけてはぴっちりとした薄いシャツ以外は何も身につけておらず、その下の筋肉の盛り上がりは驚嘆する他無いほどに見事ではち切れんばかりであった。


 下半身は大きめのボクサーパンツのみが最悪の部分の露出を阻んではいたが、骨太な体格のために隠せているのはそこだけで、歩を進める度に脈動する大腿筋のほとんどは露わになっている。

 そんな、全長にして3m近い大男。


「げ……」

「う……」


 クラウディウスの肉体から立ち上る湯気と、火炎属性ダメージを与える熱気に少女と幼女が、それぞれにうめき声を上げた。

 この場にいる全員が、火炎属性への耐性は持ち合わせている為肉体的ダメージはないが、問題なのは精神的影響である。


 男で、そしてゲームグラフィックとしては見慣れているアヤトでも、これを間近で目にするのは少々キツかった。


「我輩も急いで来たつもりだったが……早い到着だな二人共。はっはっは、元気があって結構結構!」

「う、うむ。まあのう」

「トモエ様からの招集だし、急いで来たいのは皆同じよね」


 二人共、ほんの微かに声が引きつり気味だったが、それでも普通に筋肉と言葉を交わしていた。

 どうやら、仲間意識もあるようだ。ということはクースとリベルの言い合いは、単に二人の相性が良くないだけであろう。

 その相性の悪さが、好意設定のバッティングによるものでないことをアヤトは心中で密かに願った。


「そして……我らが主君の唯一の近衛たるお方よ。こうして相まみえる事ができて誠に嬉しく思う次第、ここに表意致す」


 第5エリアである暴虐の闘技場のチャンピオン。『剣闘士』(グラディアートル)クラウディウス・カエサルが深々と一礼する。


「私に対しては、それほど畏まらなくても構わない。互いにトモエ様にお仕えする仲間だろう?」

「おお、なんと勿体無いお言葉。恐懼の極みと存じまする」


 同じような立場の人間――西園寺家の従者にして綾人の部下――と接するのは慣れているが、ここまで畏まり敬意を表する相手は流石に居なかったために、アヤトも若干戸惑った。

 だが、当主たる巴に対してはこれと同等かそれ以上の態度と言葉で敬意を表す者達も見てきたため、やはりその戸惑いは若干のものに過ぎなかった。


「まあ、おまえも掛けると良い。合わせた椅子は用意してある」


 普通サイズの椅子ではどう考えても収まりが悪く、下手をすれば重みで壊れかねないということで、クラウディウスのものだけは大きめの、そして頑丈な椅子をあらかじめ見繕っておいた。


「おお、かたじけない。では失礼して」


 ドシン、と重苦しい音を立ててクラウディウスは着席し、幾重にも材質強化魔法がかけられたマジックアイテム〈不壊の椅子〉アンブレイカブル・チェアーがミシミシと苦悶を漏らした。


 アイテムのレアリティはE~Aまでの数量無限、つまり店で購入できたり、強力なエネミーからドロップしたり入手難度はともかくとして、理論上いくつでもワールド内に存在しうるものと、S及びSSという数量有限、即ち存在する数が決められた超希少品とがある。


 その区分けで言えば、〈不壊の椅子〉アンブレイカブル・チェアーのレアリティはC。どこでも購入できるという程ではないが、マスターマインドに所属している程の高レベルプレイヤーなら、手に入れようと思えばいくつでも手に入る程度の物だ。


 そのレアリティ設定は、こうした壊れにくい家具アイテムが入手困難だと、重量にして数百キロにもなるジャイアントや酸で接触物を溶かしてしまうスライムを始め、いくつかの種族を選択したプレイヤーが困るからだろうと推察される。


「あと来ておらぬのは、変態聖母と時計男かの」


 集った面々をぐるりと見回して、リベルが呟く。


「リベルさん、酷い呼び方をしないで下さいますこと?」


 楚々とした、という言葉がぴったりな柔らかい声が呟きに返事をした。


「創造主様が付けてくださった二つ名は『吸血聖母』であって変態ではありません」

「おっと、聞かれていたとはこりゃ失言じゃった。まあ許せよ」

「別に怒っているわけではありませんのよ」


 そうは言っても、糸のように細い目は感情を伺わせず、口元は常に悠然と微笑みの形に持ち上げられている。

 彼女は黒を基調とした修道服に身を包み、白いウィンプルに黒いベールをかけたその清楚な外見の下からも、成熟した大人の色香を漂わせていた。


「けれど紙で出来ているだけあって、口は軽いし人間性も胸板も薄っぺらいときておりますのね。お可哀想に」

「うぐ……」


 第3エリア、禁魔大聖堂を預かる『修道女』(シスター)エリザベート。またの名を『吸血聖母』

 その特徴は丁寧な言葉づかいから発される毒舌。

 舌鋒の鋭さはクースの子供っぽいそれとは比較にならなかった。


 リベルが言い返そうとしないのは、彼女が相手では口論に収まらない公算が大だからであろう。

 種族は竜人であるにも関わらず付けられた『吸血聖母』の二つ名は、この空中庭園で最も血を好むという、その性向によるものだ。


 殺人性愛者にして吸血性愛者――そう設定されていたとアヤトは記憶している。

 加えて魔法の行使が封じられる禁魔大聖堂の主たる彼女は、ところどころ豊満ながらも華奢で清楚な見た目を裏切る、純然たるパワーファイターである。こんな設定混ぜるな危険。


 だから考えた奴は誰だよ責任者出てこいと言いたくなるが、エリザベートのキャラを考案したのはあまうすというプレイヤーでありここには居ない。そして責任者はと言えば誰あろう天上天下唯我独尊なるトモエ様なのだった。


「ああ、アヤト様。貴方のような下賤なマゾ犬にお目通りが叶って嬉しいですわ。メイスでってもよろしいでしょうか?」

「斬新な歓喜の表現だな。やめてくれ」


 かつて無いほどの悪罵を浴びせられた気がするが、そんなものはリアルでもゲームでも慣れっこのアヤトである。(120%主のお蔭で)

 寛大な気持ちでスルーしつつ、暴力反対の意を彼は示した。カンスト級の筋力で殴られて喜ぶような趣味はアヤトにはない。


「あら、残念」


 修道服の裾からはみ出ていた大きなトカゲのような薄緑色をした尻尾がしゅるりと引っ込む。

 その先端でメイスを巻き取って振るうために出そうとしていたのだろうが、龍鱗の肌を覆い隠す服の内側へ、衣擦れの音を立ててなめらかな尻尾が消えていくその様子は、どこかエロティックだ。


 そんな扇情的な仕草を見せるエリザベートに近くまで詰め寄られても、アヤトが眉一つ動かさないでいられるのは、ひとえに主への陶酔の域にある忠誠故だ。


 他の女に心動かすことなど決してできない。

 彼の中の西園寺巴に対する想いと比べれば、万象一切塵の如く。天秤の向こうに載せるには、地球すらも軽すぎるのだから。


 気のない執事から離れ、先に着いていた者達のように着席しようとした時、時計の針を刻む音が聞こえてきた。


「チク、タク、チク、タク……」


 刹那ほどの狂いもなく正確に時を刻むその音は、部屋に滑らかに入り込んだ男の顔そのものから響いていた。


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