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黒幕令嬢のサーヴァント  作者: 球磨川つきみ
第二章:黒幕令嬢と双盾の騎士
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 双盾の騎士は、竜王を打倒したその日の夜、パンチ・クラブの会合場所に集った面々にこう頼んだ。


「空高く飛べる道具か、乗り物か、その中で最高のものはなんだろうか?」


 天馬だ、龍だ、魔法の箒だ、いいや羽ばたき飛行機械だ。

 そんな声が方々から上がる。だがどれも彼を満足させる答えとは言いがたかった。


「他に、何かないか? これに乗ってやって来たら誰もが驚くというようなものは」


 再度そう問いかけると、遠慮がちに一人が言った。


「あのう……地龍、というのはどうでしょう」

「地龍? しかしあれは空を飛ばないのじゃなかったかい」

「ええ、ですが飛べないわけではありません。翼も魔力もありますから、滅多に飛ばないだけです。

 ですから……そんな地龍で飛んでいけば」

「なるほど、そいつは驚くな」


 普段地を進む、その方が慣れており早いという地龍。

 そんな地龍に乗って雲より高い位置にある天空城へ乗り付ける――それはとても素敵なアイデアであるように彼には思われた。


「でもそもそも飛んでもらえるのか?」


 別の会員が言った。


「さあ……龍の中でも地龍は気難しい方だと言いますし、わかりません」

「それじゃあ意味が無いだろ。誰か会長に、従順な地龍を献上できるのか?」


 その会員がそう皆に問いかけると、奥のほうでひょっこりと手が上がった。


「献上はできないが、乗せることならできる」


 その男の声に、周囲はどよめいた。


「ただし、俺も同伴しなきゃならないが」


 彼は竜王崩御の報を聞きつけ帝都に引き返し、それ故にファーブニルと遭遇せず無事だった男。

 地人将テラだった。



■□■□



 翌日。

 空を切り裂く音を後方に聞きながら、双盾の騎士とテラを載せた地龍将は飛翔する。

 空を飛ぶなど何年ぶりだか――コルドは自らの足が地を掴まない、この状態に不安定さを感じながらそう考えた。


「島が雲の上にあるってのは本当ですかい、旦那」

「ああ、本当だ」


 風に流されないよう声を張り上げながら、二人は言葉をかわす。


「あの人がこの世界に来ている以上、空中庭園もセットのはずなんだ」

「なんかよくわからんが、とにかく雲の上を目指しゃいいんですね?」

「そうだ。頼んだよテラ」


 帝国の重鎮たるテラとコルドが、皇帝を殺害せしめた双盾の騎士に従うのは理由があった。

 彼らが皇帝グルムンドの強さにこそ敬服し、従っていたというのがまず一点。より強い相手に従うのは、彼らにとって間違いでもなんでもないということ。


 もう一点の理由は、テラがパンチ・クラブの会員であり、クラブの会長に心酔していたということだ。

 スケールの違う強さ、そして企図する内容。そうした相手に従うことはなんとも、心が安らぐのだ。

 安心を与える、ということ。それは一種のカリスマなのである。


「……見えた。あれが空中庭園だ」


 雲間を裂いて現れたその島の大きさに、テラとコルドは圧倒された。

 地龍将コルドの巨体が小さく見えるほどの大きさは、島と呼べるものなら当たり前だが、驚くべきはそれが天高くに浮いているということだろう。

 しばし二人が天の回廊をひた走る中、双盾の騎士は独りごちる。


「懐かしきかな、バルベロー空中庭園。懐かしきかな、マスターマインド」



■□■□



 そして、男は空中庭園に降り立った。

 場所は門前。『試しの門』とその門衛の眼前である。


「貴方は――」


 クース・トースがその顔を見て目を見張る。

 見覚えのあるエルフの目は、かつて以上に爛々と危険な光をたたえていた。


「――トランポンタ、様」

「今は、トランで通してる。そう呼び捨てで構わないよ、クース」


 かつてこの屋敷を追われた男が、再び姿を表していたのだ。



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