第七幕 3
第七幕 3
オスクロ国からの使者が来てから二日後、俺はようやく出した結論をみんなへ伝えた。
「よく分からないけど、たのしそー!」
無邪気はしゃぐのはライライだけで、あとはみんな硬直している。
「正気なの……?」
ヴィリオーネなんて、本気かではなく、正気かと訊ねてくる始末だ。
「当然だ。やっぱり、俺にはロレンツォの代わりなんて無理だったんだよ」
「ですが、なにもそのようなことをなさらなくとも……他にも方法はあるはずです」
「なら、それを教えてくれよ」
縋ってくるアレクに冷たく言い返す。
この二日間、知恵熱が出そうになるほど熟考しても誰も、俺がロレンツォのフリを続けるという消極的な案以上に、優良な策を思いつかなかったのだ。それでは根本的な解決になっていないし、なにより俺は、いつ正体がバレるのかと怯える今の生活に嫌気が差している。バルタザールなんかはあからさまに、「リセイ様はもう充分テュルクワーズのために骨を砕いてくださいましたから、もう休んでいただいて結構ですよ」と俺をお払い箱扱いしてくるのだ。
「これが、俺と、この国にとって一番いい方法なんじゃないかと思う。意義を唱えるなら別案を上げてくれ」
イザベルは顎に手を当てて思案に沈み、その隣で直立不動の姿勢を保っているエステルも眉間に皺を寄せたまま何も言わない。アレクは何かを言いたそうに口を開けてはまた閉じるを繰り返し、ライライは沈痛な面持ちの一同を不思議そうに見上げている。
「……リセイ様が、決めたなら、いい……とわたしは、思う」
意外にも、ドミニカが真っ先に同意してくれた。
「ドミニカ……!?」
ヴィリオーネが真意を疑うように少女を見つめる。
「だって……反対しても……リセイ様、する。……だったら……応援、したい」
その言葉に五人がハッとして顔を上げた。
そこに容認の兆しを感じ取り、俺は自分自身を奮い立たせるように、ゆっくりと宣言した。
「ロレンツォの死を公表する。それも、今伝えたように、最悪の形で大々的に」