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生きる

第七章   生きる





「そう、ハナハドは死んだんだな。」

 アロックが泣きそうな瞳で言った。

 化け物がいなくなったのを確認すると、家の中に隠れていた人々が少しずつ外に出てきだした。

店もカーテンを開け始める。

 ハナハドの死体を担いで、シャロンとリアリドは教会へと帰って行った。

そこでひっそりと葬式をあげてもらい、教会の裏にある墓地でハナハドを火葬してもらった。

墓石には、ハナハドの名前だけ彫られてある。

普通は生まれた年から死んだ年を刻むものだが、誰もハナハドの誕生日を知らない。

「生きるって、難しいことだね。」

 小さな葬式の後、シャロンとアロックだけがハナハドの墓の前に残った。

ハナハドをイメージした白の花束が墓前には添えられている。

「ハナハドは生きたいって思っていたのに、死んじゃった。」

「うん。」

「でも、死にたいって思っていたシャロンはまだ生きてる。なんか不思議な感じだよね。」

 シャロンは自分の手を見つめた。

指を閉じたり開いたりすれば、閉じたり開いたりできる。

自分の意思で動かすことができる。まだ、生きている。

「シャロンは、まだ死にたいって思う?」

 アロックが下からシャロンを見上げてみつめてくる。

くもりのない瞳だ。

純粋な心の持ち主。

その持ち主が、自分に世界の綺麗なところを教えてくれた。

いいや、世界が綺麗なんじゃない。

「アロックは、綺麗だね。」

 そうだ、綺麗なのはアロックなのだ。

そして、それに恋をした自分は彼女の傍から離れたくないと思った。

生きて、彼女の隣にいたいと思いはじめた。

「な、なんだよ!唐突に!」

 シャロンに綺麗と言われて、アロックはあたふたと頬をピンクに染めた。

「ありがとう。君に出会えたから、僕は世界を見る目を変えることができたんだ。」

 世界は相変わらず人々の手によって傷つけられながら廻っている。

けど、ほんのひとにぎり、指先の間から流れ落ちる砂のように本当に少しだけだけど、綺麗な部分があった。

「世界は美しいね。」

 シャロンはアロックに向かって言った。


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