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暗殺計画

第四章  暗殺計画





 う~ん、と隣で腹を空かせたライオンのように唸り声を上げているのはアロックだ。

図書館に来てハナハドの読み漁っている本と似たような本と格闘している。

「この文章、難しすぎて分からないよぉ。」

 ハナハドはローン語の解読をノートに書き込みながらせっせと自分の仕事をやっている。

シャロンの隣ではハナハドを手伝おうと自分でも分かる現代語の文献を見つけだして読んでいるアロックだが、内容がサッパリのようだった。

「アロック殿。無理はなさるな。せっかく図書館に来たのだから自分の好きな本でも読んでいてくだされ。」

 はっきり言って、アロックはハナハドの役にはまったく立っていない。

お荷物というわけでもないが、居ても居なくても変わらない存在だ。

それよりはシャロンの方がまだ役に立っているだろう。

カタコトでもローン語が分かるのだから。

シャロンもハナハドと同じように文献から分かるローン語をノートに書き写していた。

「何か私だけ全然役に立ってないようで、何もしてないなんて嫌なんだよ。」

 全くもってその通りである。

自分が役に立っていないと分かっていつつも、何か関係のある書物でも読んでいないと、アロックの気がおさまらないらしい。

だから、難しい本とも額と額を合わせて睨み合っているのだ。

「アロック、せっかくだから他の本でも読んだら?アロックには無理だって。」

「無理じゃない。」

「けど、楽しくないだろう?」

「それは…。」

 アロックは目を横にそらした。

やっぱり、何を書いてあるのかサッパリな文章とのにらめっこは笑えないらしい。

「アロックってさ、あまり本を読んだことないんでしょ?だったらこの機会に色んな本と触れ合ってみるのもいいんじゃない?何も無理して文献の手伝いしなくてもさ。自分に合った本を読むのだって、アロックのためにはいい勉強になると思うよ。その方が、僕もハナハドさんも嬉しい。」

「そ、そうか?」

 アロックはハナハドを見た。

ハナハドは笑顔で髭を揺らしながら頷いた。

「そうですじゃ。図書館とは楽しむべきところ。アロック殿が楽しんでくださる方が、わしとしても仕事がはかどりますですじゃ。」

「分かった!」

 パタン!とアロックはにらめっこをしていた本を潔く閉じた。

「じゃあ読みかけの本、読破してるから。」

 この前シャロンから薦められた本はまだ少ししか読んでいない。

家にいる時は案外読まないものなのだ。

だからこの機会に読んでしまおう、とアロックは図書袋の中から持ってきていた本を取り出した。

綺麗な銀河系が表紙に描かれている。

 ハナハドの手伝いに図書館に通い始めてから一週間が経つ。

毎日毎日、図書館通いだ。

本当はシャロンにはもっと別なところに行きたいところがあるのに。

「ねぇ、フィランド姫の墓ってどこにあるの?」

 アロックに聞いても、いつも話を外に逸らされる。

フィランドの話を出すと、きまってアロックは違う話を持ってくるのだ。

明日はどこどこに行こうとか、昨日の晩飯は何を食べたかだとか。

どうしてもシャロンをフィランドの墓には連れて行きたくないらしい。

だからこうやって、毎日フィランドから遠い場所へとシャロンを連れて行く。

そして、ハナハドと出会ってからは、今日も行き先は図書館だった。

 ハナハドとは向かい合わせの席で、シャロンは文献を漁る。

ローン語は授業で専攻していたから、カタコトと言いつつもだいたいのところは分かる。

下手な考古学者よりは博識だろう。

 ローラン族は生きることに熱心な種族だった。

その種族のことを、死ぬことに対して熱心な自分が調べている。

大雑把に縫い合わされた服の縫い目みたいにちぐはぐしていて、何とも奇妙な気分だった。

死にたいのに、生きる術を探している。

 ローラン族はどうしてそんなに生きることに熱心だったんだろうか。

ふと疑問に思った。

どうして自分たちの寿命を延ばそうと、そこまで必死になれたんだろう。

さっさと死にたいとは思わなかったのだろうか。

いくら文献を調べても、ローラン族の心は全く掴めなかった。

ハナハドはどうなのだろうか。

ローラン族の心に触れられただろうか。

「ハナハドさん。」

「何ですじゃ、シャロン殿。」

「ハナハドさんは、どうしてここまで生きることができたんですか?」

「そりゃ、健康に気を使って、体も毎日鍛えておりますから…。」

「そうじゃなくて…。」

 身体的なことを聞きたいわけじゃない。

「死のうとか、死にたいとか、思わなかったんですか?」

「どうしてそう思わなければならないんですじゃ?」

 はて?と不思議そうな顔をしてハナハドは髭を手でしごいた。

「だって、世界は汚いじゃないですか。」

 自分の思いをシャロンはハナハドに話した。

ハナハドは口を挟まずに静かに最後までシャロンの思いを聞いていた。

「シャロン殿はまだまだ若いのぉ。」

「そりゃ、十八ですからね。」

 体は十八のミッハ、シャロンの本当の年齢は十六だけれども。

「シャロン殿は死んだら楽になると思われますかな?」

「はい。」

「しかし、その確証がどこにありますか?誰も死後の世界なんて見たことがない。」

「でも、今の世界よりはずっとマシでしょ?」

「もしかしたら、もっと辛いかもしれない。そうは考えたことはないですじゃ?」

「…考えたことありませんね。」

 今から抜け出したいばかりに、死後の世界について考えたことはなかった。

ただ、今よりはマシだろうくらいにしか思わなかった。

「今の世界ですべきこと、したいこと。わしはそれをしたいと思うから死のうとは思わなかったのですじゃ。シャロン殿は?」

「僕には、したいことも何もない。」

「本を読むことは?」

「好きだけど、人生の楽しみになんてできない。」

 他にやることがなくて体を持て余していたから本に没頭したいと思っていただけ。

「世界には楽しいことが溢れていますじゃ。シャロン殿はまだそれに巡り会えていないだけ。」

「一生巡り会えそうにないんですが。」

「いいや、巡り合える。好きな人でもできれば、世界は一転しますですじゃ。」

 ふぉふぉ、とハナハドは笑った。

「あれは、わしが二十二の時じゃった。街で評判の美人な娘さんがおっての…。」

 いつの間にか、話がハナハドの昔懐かし話になっていた。

美人な娘がいて、口説くのに必死になって、やっと手に入れて、結婚して、それからは幸せだったこと。

天命が来て自分より先に死んでしまったけれども、最後まで笑って暮らせたこと。

話しているハナハドは本当に幸せそうで顔がとろけそうだった。

見ているこっちまで幸せな気分にさせる。

ハナハドの幸せの蜜が、シャロンの舌にまで届きそうだ。

「アロック殿とはどうなんじゃね?」

「なになに?私がどうかした?」

 本に熱中していたアロックは、自分の名前を呼ばれてはじめてハナハドの声に気付いた。

「いや、シャロン殿とアロック殿はわりとお似合いのカップルではなかろうかと。」

「あ、そう見える?見える?」

 きゃっきゃっ、とアロックは嬉しそうに肩を弾ませた。

「冗談。何で僕がアロックと…。」

「何よ、シャロン。私じゃ不満ってわけ?」

「不満も何も…僕の体はミッハだよ?」

「だから何?」

「アロックとそんな関係になったらオカシイだろ?」

「でも、シャロンはシャロンじゃん。シャロンは私のことキライ?」

 そんな目で聞かないで欲しい。

反則だ。キライだなんて言えるはずがない。

「キライじゃないけど、恋愛対象ではない。アロックは妹みたいなもんだ。」

「なんだよ、残念。私にもやっと彼氏ができるかと思ったのに。」

 ぶー、とアロックは頬を膨らませる。

心なしか、少しだけ頬が林檎のように赤い気がした。





 シャロンの推薦した本に飽きてきたのか、一時間も読書をすると、アロックは気晴らしに別の本を探しに書物の並ぶコーナーへと歩いていった。

「ところでシャロン殿。」

「はい?」

「あなたの体はミッハ殿のものだと申されましたな?」

 ハナハドには全ての事情を話している。

アロックが勝手に喋ったのだ。

ハナハドは嘘のような本当の話を頭から否定せずに信じてくれた。

「元に戻る方法はないのかね?」

「今のところは。でも、元に戻る必要なんてありませんよ。自分は死ぬためにミッハになっているんですから。」

 海の中で出会ったミッハからの願い。

フィランドの隣で死にたいを実行するために、フィランドの墓の隣で自殺を図るために、ここにいる。それが今の存在意味だ。

「生きようとは思いませんのじゃ?」

「死のうとして海に飛び込んだ人間ですよ。」

「もう一度、生き直そうとは?」

「思いません。」

 シャロンはハッキリと言った。

「アロックがなかなかフィランドの墓に案内してくれないから自殺できないんです。」

「それはどうかな?」

 ハナハドがシャロンを見据える。

全てを見透かされているような気がして、一瞬だがゾクリとした。

「本当は死にたくないのではないのですじゃ?」

「そんなことないですよ。」

「では、なぜ自殺しないのですじゃ?」

「それは、アロックがフィランドの墓に案内してくれないから。」

「アロック殿でなくとも、街の人間に聞けば姫様の墓は分かるのでは?」

 はっ、とシャロンは胸を突かれた思いだった。

そうなのだ、フィランドの墓なんて何もアロックに聞かなくとも、街の人間に聞けば分かったはずだ。

では、何故それをしなかったのか。

「最近、生きていることに充実感を感じているのではないのかの?」

 充実感?

「アロック殿と一緒にいて、どうですじゃ?」

「毎日毎日、色んな場所に連れて行ってくれるから飽きることはないけど。」

「そうですじゃ。それが充実感ですじゃ。」

 ハナハドは白い髭をユラユラとさせて笑った。

「充実しているからこそ、死ぬことが怖くなる。」

「怖い?」

 そんなこと、思うはずがない。

海に飛び込んで自殺した人間だぞ。

一度投げ出した命をどうして惜しく思わなければいけないのか。

命を捨てるのは一度も二度も同じだ。

「わしは死ぬのが怖い。今が充実しているからですじゃ。そして、やりたいことがまだまだたくさんある。」

 ハナハドには八十歳になってもまだ夢があった。

この世にまだ未練がある。

まだ死にたくない。

しかし、時間は確実にハナハドに迫ってきていた。

あと何年生きられるだろう。

「わしは生きたい。だから、お前さんのような若者を見ていると、羨ましくなるですじゃ。まだまだ残された時間が多い。わしにはないものですじゃ。」

 シャロンはまだ若い。

ハナハドの半分も生きていない。

「わしは協力は惜しまぬ。だから、お前さんが生きたいと望むのであれば、お前さんの体がお前さんのもとに戻る方法を探しますじゃ。」

 シャロンは考えた。

自分の体に戻りたい?戻りたくない?

「いや、けっこうです。」

 自分は一度死んだのだ。

だから、もう一度生きるなんて許されない。

 シャロンは分厚い本に目を落とし、ノートにペンを戻した。





 シャロン、もといミッハの家に今日も定刻通り朝ごはんを食べてから行ったのに、今日はもう出かけた後だった。

シャロンの奴、どこに行ったんだ?

「アロック、この頃毎日兄さんと一緒ね。」

「なに、アイネス?もしかしてヤキモチ?」

「そんなのじゃないわ。ただ、珍しいなぁと思って。」

 家に上がってお茶くらい飲んで行きなさいよ、とアイネスにすすめられたので、アロックはミッハのお宅にお邪魔した。

「あなたと兄さん、確かに仲が良かったけど、毎日遊ぶような仲じゃなかったのに、最近は毎日一緒よねって、ちょっと不思議に思っただけ。」

 リビングのテーブルにティーカップが二つ並べられる。

ポットから漂ってくる匂いはアップルティーだ。

開け放たれたカーテンから窓に覗く日差しが温かい。

二度寝をしてしまいそうだ。

 どうぞ、とアイネスから熱い紅茶をご馳走される。

アロックはフーフーと息で紅茶を冷ましてから、コクリと一口飲んだ。

「ねぇアロック。最近のあなた、少し変わったわね。」

「何が?」

「可愛くなった。」

「はぁ?」 

 ブブッ、と紅茶を噴き出しそうになるのを、もう少しのところでアロックは口の中で押しとどめた。

「アロック、好きな人でもできたんじゃない?」

「な、ななな、何でそんなこと分かるの?」

「見れば分かるわよ。もしかして、兄さん?」

「違う!」

 アロックはバン、とティーカップをテーブルに置いて否定した。

中の紅茶がピチャリと跳ねる。

「好きな人は…できた。でも、ミッハじゃない。」

「じゃあ、誰?」

「アイネスの知らない人だよ。」

「だったら教えてくれてもいいじゃない。」

「やだ。教えない。」

 ぷん、とアロックはそっぽを向いた。

「アイネス。」

「なぁに?」

「もしもさ、自分の好きな人が『死にたい』なんて言ったらどうする?」

 アロックの表情が真剣なものに変わる。

「死なないでってお願いするわ。」

「それでも駄目だったら?」

 今度はアイネスの表情が真剣になる。

親身になって、アロックの話を自分の身に置きかえて考えている。

「やっぱり、お願いする。止めるわ。どんな手を使ってでも。だって、好きな人よ?好きな人が死ぬのよ?」

 そんなの悲しすぎるわ。

 アイネスの瞳の端に涙のあとが滲み出した。

何かを思い出しているらしい。

「あ~もう、アイネス!泣かないでよ!」

「泣いてなんかないわ。ちょっと目にゴミが入っただけよ。」

 バレバレの嘘。

それでもアイネスは強がって、最後まで涙は一粒もこぼさなかった。





 今朝はアロックが家を訪れて来る前に家を出た。

向かった先はただひとつ。

「ここがフィランド姫の墓か。」

 昨日の夕方、アロックと別れた後、街の人間に聞いた。

そんな簡単なこと、アロックに聞かなくとも街のどの人間も常識のように知っていた。

姫様のお墓は城の真後ろの王族の墓地だよ、と。

 王族の墓地だというから一般者は立ち入り禁止かと思ったら、門兵もなく、誰でも勝手にはいって好きなように花束を添えていいようになっていた。

だから、誰にも咎められずにすんなりと入ることが出来た。

 少し拍子抜けした。

こんなに簡単に辿り着くことができるなんて。

 早朝、こんな早くから墓参りに来る人など一人もいない。

王族の墓は普通の人の墓を二十個も三十個も集めて積み立てたように大きくて、その大きな一つの墓に代々、火葬された骨が入れられるようになっていた。

フィランド以外の王族の死者も、ここに眠っている。

「さて、どうやって死のうか。」

 薬物死。窒息死。焼死。刺殺。首吊り自殺。

他にも色々あるけれど、どれも痛そうだし苦しそうだ。

楽な死に方はないものか。

「死ぬのに楽なんて、ないよな。」

 そうだ、楽な死に方なんてないのだ。でも、

「苦しいのも、痛いのも一瞬。」

 死ぬと決めたら、一瞬であっちの世界に逝ける。

一瞬だけだったら、どんな苦痛も我慢できる。だったら…

 シャロンは腰にさしていた短剣を抜いた。

スルリ、と刃物と皮布の擦れる音がする。

 ゆっくりと短剣を上に持ち上げた。

腰から胸へ、そして胸の中心にある骨に沿ってユルユルと喉元に持ってくる。

これで一突きすれば、一瞬とはいかないかもしれないけれど、すぐにあっちの世界へと旅立てる。

これでミッハの願いを果たすことができる。

 シャロンは目を瞑り、ぐっと息を呑んだ。

短剣を持つ手に力を入れる。

勇気も込める。

今まさに、喉元を貫こうとした。

「駄目だよ、そんなことしちゃあ。」

 カラン、と地面に短剣が落ちる。

誰かに叩き落とされた。

茶色い瞳に夕焼けのように明るいオレンジの髪。

「…リアリド。」

「死ぬなんて、駄目だからね。」

 そう言って、リアリドは短剣を拾い上げた。

「リアリド、何でこんなところにいるんだ?」

「ふらっと散歩に出てみたら、ここに入っていく君を見かけたんだ。だからお話でもしようかなぁと思って追いかけていってみたんだけど。」

 まさか死ぬ直前だなんて思わなかったよ。と気が抜けた笑い方をリアリドはした。

リアリドにつられて、こちらも気が抜けてくる。

死のうとして張っていた緊張は何だったんだ。

「この前言ってたお姫様のお墓、ここなんだね。」

「うん。」

「死のうとした。」

「うん。」

「でも、死ねなかった。」

「…うん。」

「やっぱり君はまだ死ぬ運命じゃないんだよ。」

 今度は危ないことに使わないでね、とリアリドはシャロンに短剣を返した。

短剣の重みがずっしりと手に響く。

命の重みのようにも感じた。

「朝ごはんはもう食べたの?まだだったらぼくと一緒に…。」

 リアリドの言葉が切れる。

シッ、と口に人差し指を口元にあてて、シャロンをかばうように自分の後ろに隠す。

「誰?そこにいるのは!」

 リアリドが叫んだ瞬間、黒の覆面で顔を隠した男たちが三人、茂みの中から出てきた。

「ミッハ、覚悟!」

 三人の男たちは一斉にシャロンに向かって襲いかかってきた。

右手には短剣が握られている。

鋭利な刃がミッハの首と心臓を狙う。

 カキン!

 リアリドが腰の剣を引き抜いて、男たちの短剣をなぎ払った。

三対一、三人の覆面男たちとリアリドが刃を交わす。

三分ほど剣の交わる音が響いただろうか。

男たちがリアリドから距離をとって後ろに引き下がった。

「チクショウ!こんなアクシデントが入るなんて!」

「おい、引き上げるぞ!」

 男たちは短剣を握ったまま、シャロンたちに背を向けて逃げていった。

「さっきのは何だったの?」

 リアリドが剣を腰の鞘に戻す。

「さぁ…、僕にも分からない。」

 シャロンにも男たちの正体は分からなかったが、目的は分かった。

「僕の首を狙ってたみたいだ。」

 男の一人がミッハの名前を叫んでいた。

「でも、どうして君があの人たちに狙われているの?」

「分からない。でも、ミッハを殺そうとしていた。」

 ミッハはなぜ命を狙われているのか。

心当たりは何もない。

ミッハのことならアロックにどんな人間でどんな交友関係で、どんな人物だったかは聞いている。

アロックでも知らないミッハが、どこかにあるのか。

「あの人たち、また君も狙ってくるかもしれないね。」

 リアリドが腰の剣の柄をトントンとたたいた。

「これも何かの縁だね。よし、ぼくが君の用心棒をしてあげるよ。」

「リアリドが用心棒?」

「ぼく、こう見えても剣の腕はけっこうイイ線いってるんだからね。」

 リアリドはニッコリと笑った。

リアリドに守られて、シャロンの命はまた少し延びてしまった。





「失敗した。」

 男の一人が報告する。

最近、真夜中の教会に明かりがついていることが多い。

誰かが何かを中でひそひそと話しているからだ。

男たちは五人いた。

皆が顔を向かい合わせて、円形の丸テーブルを囲んで話し合っている。

「はやくミッハを殺してしまわなければ、予言が現実のものとなってしまう。」

 予言。

ミッハが生きていれば、彼らの恐れている予言が本物のものとなってしまう。

「ミッハが一人でいる時を狙え。」

 男たちは頷いて解散した。


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