終わりの始まり
目が覚めると僕は椅子に座っていた。
安っぽい、事務用の椅子だ。
この部屋はなんだろう?
六畳ほどの部屋に窓は無く、大きい換気扇があるだけだ。
目の前にはこれまた、安っぽい事務用のデスクに卓上ライトもついている。
取り調べ室か?刑務所にもあるのか?
部屋に時計がないから時間が分からないが、換気扇からオレンジ色の明かりが見える。夕方か。
僕はここで、1番大変な事に気付いた。妙に下半身が涼しいと感じていたが、僕はズボンを履いていなかったのだ。上は着てきたワイシャツ一枚に下は黒のスラックスを履いていた筈が、今はボクサーパンツ1枚になっている。
急いでズボンを探したが六畳の部屋では、探すまでもなかった。
途方に暮れているとドアが開き、我孫子が入ってきた。
慌てて椅子に座りパンツ姿の下半身を隠す。
「何をこそこそしてるんだ?」
女性にこんな姿を見せたのは初めてだ。自分でも分かるほど顔が赤くなっている。
「いや、そのズボンが…」
僕は耐えきれずに俯いた。
「あ〜ズボンね!貴方、お漏らししちゃったから私が脱がしたのよー。
覚えてない?」
この歳になって漏らした…嘘だろ…
その上、女性にズボンを脱がしてもらうなんて……
「百舌鳥、落ち込んでるところ申し訳ないが、今から百舌鳥が担当する4人の囚人達と一人一人面談してもらう。
担当囚人を把握する事が目的だ」
担当の4人の顔はチラッと見ただけだが、すぐに気を失ったから白取以外は殆ど記憶にない。
と言うか囚人達に失禁姿を見られてどんな顔して面談したら良いんだ…
「あの…やっぱり、し、失禁した所は彼女達にも見られてますよね」
「あぁ、全て見られてるさ。当たり前だが百舌鳥は今相当舐められてる」
あぁ。もうだめだ。出勤初日に大失態すぎるだろ。しかも、僕の職業は刑務官だぞ……これからずっと馬鹿にされなければいけないなんて。
もう、ため息も出なかった。
「何時までも落ち込んでても、仕方がないだろ。今からの面談であいつらに刑務官としての権威を見せてやれ」
励ましてくれてる。こんな俺を…
取調室から出て行こうとする我孫子、チラッと振り返り僕の方を見た。
「ぷっ」
笑った……わざわざ振り返って……
やっぱり我孫子さんも僕の事、バカにしてたのか。
我孫子はそのまま出て行ってしまった。
うん?ところでズボン返して貰ってないぞ……どうすんだよ僕……
これから付き合っていく4人の少女達との面談が始まろうとしていた。