署長室
この少女が署長⁈
どう見ても小学生にしか見えない…
署長らしい所は紺色の制服を着ているけど、ただそれだけだ。
ボーと考えているとまたも、脛に蹴りが入った。
「痛っ!」
靴の先に鉄が入っているのか鈍い音がしたて、俺は飛び上がった。
「何をジロジロ見ている!お前、今日付で配属された百舌鳥だろ?」
「はっはい!百舌鳥です!」
「この島は初めてだろ?私が直々に説明してやる」
我孫子が部屋の隅に置かれていたホワイトボードをゆっくりと運んで来た。
ホワイトボードにはこの島と思われる地図が貼られて居る。
「まずはこの島の事から教えようか。お前も今日、本土から来たから分かるかもしれんが、本土からこの島までは4.8キロある。船で50分ぐらいだな。飛行場は無いから船でしかこの島から出ることは出来ない」
「あの、定期便はやっぱり無いですよね」
「無いな。物資を運んでくる船が週に一回来るだけだ。
分かってはいたが一応聞いてみたがやっぱりそうか…
「まぁそんなに落ち込むな。病院もコンビニも無いがなんとかなる」
まるで、吉幾三の歌の様だ…
「炭鉱があった時代は色々と娯楽施設もあったみたいだけどな…
もう50年も前の話さ。五年前にこの刑務所が出来るまでは立ち入りも禁止だったしな」
この島に多くの人々が生活していたと思うと余計に悲しくなる
「次にこの刑務所の話しだが、私は今から用があるから我孫子とこの中を見て回りながら説明を聞いてくれ」
我孫子はあからさまに不機嫌な顔になっていた。
「えー、所長めんどくさくなっただけでしょ?」
「いいから早く行け!」
戎所長が二つの黒いバインダーで我孫子の頭を勢い良く殴った。
「痛っ。わかりましたよ。もう…」
我孫子はバインダーを受け取ると逃げる様に部屋から出て行った。
置いて行かれると思い我孫子の後を追う。チラリと後ろを振り返ると戎署長がニヤリと笑っていた。
署長室を出ると我孫子は待っていてくれた。
不機嫌になっていると思ったが、我孫子はクスクスと笑っている。
「子供みたいだったでしょ?署長」
「いや…確かにびっくりしたけど。
署長って何歳なんですかね」
「うーん…私も探ってるんだけど今だに分からないのよね〜」
見た目は小学生にしか見えなかったけど…それを言うのはやめといた。
「まぁおチビちゃんの事は置いといて、このファイル読んどいてね。
この島と刑務所について詳しく書いてあるから」
戎署長から受け取った黒いファイルだ。
一冊は表紙には猫鼠か島情報と書かれた割と薄めのファイル。
もう一冊は私立猫鼠島女子重刑務所と書かれ、持ち出し禁止の赤い判が押されている分厚いファイルだ。
歩きながら読むのは難しい。
後でゆっくり読むことにし、脇で無理やり抱えて歩き出した。