25:魔王様と将軍 美意識編
突然ですが、またもや勇者が攻めてきました。
此度の勇者はなかなか腕の立つ者のようで、隙が無く、常に我々の一挙一動を監視しております。共の者もそれなりに修羅場をくぐってきた者たちばかりで、けっこうな力をもった魔術師も中にはいるようでございます。他にも屈強な兵士や、経験を積んだ僧侶も多数おります。
前回の勇者一行とは違い、経験値も実力もはるかに勝った一行ではございますが・・・
「なんだ貴様ら。かようにみすぼらしい姿で、魔王様にお会いできると思っているのか。身の程を知るがいい、愚か者どもが」
「ふん。我らを見かけで判断するとは。モーズグズとやら、そなたも大したことないな」
「大いに関係ある。美しい心は、美しい生活からと言うではないか。よって、魔王様の軍を預かる者として、お前たちのような見た目の貧しい者どもが魔王様の視界に入ることは、断じて許さん!」
「み、見た目は関係なかろう!!」
「馬鹿か貴様。お前のように油の浮いた顔を、誰が好き好んで見たいと思う?生え際も危ない上に、なにやらオッサン臭い。お前、居酒屋で出されたお絞りで、顔を拭く性質だろう?」
「な、なぜそれを!!?」
「やはりか・・・。休日になると、家族に邪魔者扱いされているな?」
「ぐっ!」
「娘に"お父さんのパンツと一緒に洗わないで!"と言われているな?」
「ぐはっ!!(吐血)」
「貴様のような中年勇者、断じて認めん!魔王様のお美しい漆黒の瞳が穢れるわ!!」
「け、穢れるとはなんだ!中年を馬鹿にするな!」
「あと20歳若返ってから出直して来い!!」
「あんまりだぁぁー!!(号泣)」
一部始終をドラゴン(兄)の背中の上でご覧になっていた魔王様は、搾り出すようにこう仰いました。
「・・・情け容赦無ぇ」
モーズグズ将軍の言葉攻めで、(中年)勇者一行が尻尾を巻いて逃げていきました。