24:魔王様と将軍 監視編
美しい火の鳥は、瞬きひとつの間に人の形へと姿を変えました。
短く切り揃えられた真紅の髪、群青色の武人らしい鋭い瞳。細身でありながら、一度武器を手にすると一騎当千の活躍をなさる鍛えられた四肢。
すらりとした長身の、妙齢の美女。
ギャッラルブルーの監視役、モーズグズ将軍閣下でございます。
「モーズグズでございます。以後お見知りおきを」
「はじめまして。魔王のリョーコです。でもどうして、ひと月もここで生活してるのに、会うのは初めてなんでしょうね?」
「それは私が、ギョッル川の警護を任されているからでございます」
「川?お城の先の、あの大きな?」
「はい。その川に架かる唯一の橋・ギャッラルブルーを監視しております」
「魔王様。ギャッラルブルーはここへの唯一の道でもありますので、この大陸で二番目の実力をお持ちのモーズグズ将軍が、その任に就かれています」
「ものすごい美女なのに、それでいて実力ナンバー2だなんて!まさに女性の憧れ!」
「恐縮でございます」
「あれ?ナンバー1ってもしかしてもしかすると・・・」
「はい。フォルカー様でございます」
「まじで?(あれでナンバー1?)」
「いずれ引きずり下ろしてくれます、あんな男」
不敵に微笑むモーズグズ将軍。
―――を、見て怯える魔王様。
「・・・ケロ。美女が笑うと、迫力あるね(ぶるぶる)」
「はい。恥ずかしながら、私の尻尾も少々元気がなくなりました」
「ところで魔王様」
「ぅわい!(びくっ)」
「何かお困りのことはございませんか?あの男は小姑みたいに口煩い割りに、変なところで気が回らないというか、使えないというか、むしろ変態というか」
「(変態って)・・・と、とりあえず大丈夫」
「あの男は、歴代の魔王様の中でも最強の貴方様にすっかりご執心故、ただでさえ締りの無い顔がさらに締りが無くなって頭の中も緩みきっている様子。そんな男に魔王様の補佐を任せるのは甚だ不安ではございますが、私もギャッラルブルーを離れられぬ身・・・もしも何か不都合がございましたら、すぐにお呼び下さい。いついかなる時でも駆けつけます」
「あ・・・ありがとうございます」
「あの男が不貞を働いた時は、一瞬で仕留めましょう」
「し、仕留め・・・」
「おまかせください」
将軍閣下は、まるで高貴なバラの花の様に美しく微笑まれました。
それを見た、大陸ナンバー1の実力者殿は、部屋の隅でぶるぶると震えていらっしゃいました。
フォルカーが最後の一文でしかでてきてませんね。
ナンバーワンなのに。