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21:ケルベロスと魔王様
ドラゴン(兄)の背中の上、恐れ多くも魔王様の腕に抱えられながら、私はそっとそのお顔を見上げました。魔王様は、それは楽しそうに微笑まれてらっしゃるので、自然と私も楽しくなりました。
「ケロ?どうしたの?」
魔王様が楽しそうなので私も楽しくなりました。
そう申し上げたら、魔王様はますます艶やかに微笑まれました。
「そう。ケロも楽しいんだね」
魔王様がお幸せでしたら、私もまた幸せでございます。
「ケロは、勇者がキライじゃないの?」
魔王様のキライなものが、私のキライなものでございます。
「あれま。じゃあ、ケロもユーレイがキライなんだね」
私は平気です。
「おや?」
なれば、魔王様をお守りすることもできましょう。
「うん。そうだね」
貴方様がお好きなものは、私の好きなものでございます。
貴方様が憎いと思えば、私がすべて喰らってさしあげましょう。
魔王様が好きな物は好き。
嫌いな物は存在を抹消しちゃう。
ちょっと歪んだ愛。
愛らしい外見に惑わされてはいけません。