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19:魔王様と勇者 また会う日まで編

打ちひしがれた様子でその場に崩れ落ちた勇者・・・と、なぜかフォルカー様。

勇者の後ろでは、魔術師(男)・僧侶(女)が哀れみを帯びた瞳で勇者を励ましております。

フォルカー様の頭上では、魔王様がとくに悪びれた様子も無く、カラカラと愉快そうに笑っておられます。


「だってあのダンジョン、小難しい上に毒ガスとか溶岩とか、悪趣味ですからー」

「先代様のダンジョンが・・・よよよ」

「ほら!迷路はもっと面白いヤツじゃなきゃ!私が小さい頃は、よくヒマワリで作った迷路で遊んだものだよ!」

「ヒマワリで勇者が倒せますか!カーッ!」

「いや、そもそもなんで倒すこと前提なの?」

「勇者は天敵ですぞ!?」

「でも私は争いごと嫌いだからねー。痛いのも怖いのもヤだ!―――というわけで勇者様」

「ななななんだ!?(裏声)」

「(そんなに驚かなくても)・・・えー私は争いごとも痛いのも、血を見るのもユウレイと遭遇するのも嫌いなので、人間の国に攻撃することはないからご安心を」

「まをうさまぁぁ!!」

「魔王じゃなくて"まをう"になってるよ、フォル」

「そんなことはどうでもよろしい!―――人間に屈服すると仰るか!?」

「違う違う。人間は人間で、私たちは私たちでのんびり暮らせばいいじゃんってこと。どっちが上とか、どっちが滅ぶとか、そんなの疲れるだけだから」

「ふん。魔王がよく言う」

「おやおや」

「魔王様!考えをお改め下さいませ!人間は我らの―――」

「フォル」


その瞬間、フォルカー様の顔色がさっと変わりました。魔王様の言葉ひとつで、あの上級魔力を持つフォルカー様ですら、捕食される側の弱き者のように声も出せず萎縮しております。

あのお方から発せられる強大な魔力は、ただそれだけで我々の心に畏怖の念を抱かせるのです。


「私は、誰が傷つくのも見たくない。私を"王"と崇める魔物も、私を"敵"と罵る人間も」


我らの王。

魔を統べる、絶対的な支配者。

でも誰よりもお優しいお心を持った、平和主義の魔王様。


「勇者様でしたら、戦意を持たぬ者とそれでもなお戦いたいなんて、まさか言わないでしょう?」


にっこりと花のように微笑んだ魔王様は、最後にこう仰りました。


「私の名前はリョーコ・サトウ。この名前をキッチリ覚えて、また遊びにきてね」


第1192代 リョーコ・サトウ魔王様。

この日を境に、その御名前が世界に知れ渡りました。

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