18:魔王様と勇者 蛮行編
先代のルディ・バルヒェット魔王様は、熊のように力強く、筋骨隆々のお方でございました。
先代様は勇者イジメがたいそうお好きな方で、難解なダンジョンを作っては、来た道すらわからずぐるぐると迷い続ける勇者を見て楽しんでいらっしゃいました。
それから美しいものが大好きなお方で、どこぞの国に見目麗しい姫君がいるという噂を聞けば、浚ってきてご自分の花嫁になさろうとする程。
あのお方は、たいへん魔王様らしい魔王様でいらっしゃいました。
そこをいくと、当代魔王様はなんとも魔王様らしからぬ振る舞いをなさる方であると言えましょう。
あのお方は、今までのどんな魔王様とも違う、とても不思議な魔王様でございます。
「と、とにもかくにも!我ら人間への非道の数々!許すまじ!」
「非道の数々って・・・まだ魔王就任一ヶ月目ですが?」
「あの恐ろしいダンジョンは、お前たちが作ったのだろう!」
「あー、あれね!」
「そのとおり!あのすばらしいダンジョンは、魔王様が手ずからお創りになられたもの!」
「やはりか!我らに害為す存在め!」
「えぇ~。あのダンジョンは、ちゃんと子供からご老人まで楽しめるように作ってますよ。途中途中に回復アイテム設置してるし」
「あれほどお止めしたにもかかわらず!魔王様、あなたというお方は!!カーッ!」
「(無視)それに、ゴールには賞品として"7泊9日の海外旅行ペアチケット"を用意してるし」
「いつのまに用意されたんですか、魔王様!!」
「ペアチケット!?なぜ魔王がそんなものを!!」
「他のダンジョン・・・前の魔王がつくったヤツは、センスないから壊しちゃったし」
「なんたる蛮行―――!!!」
あまりの衝撃的事実に、フォルカー様が気絶されました。