17:魔王様と勇者 時代遅れ編
魔王様とフォルカー様のやりとりに呆気にとられていた勇者が、気を取り直して鞘から剣を引き抜きました。それに倣って、魔術使いと僧侶も各々の武器を構え始めました。
「魔王はどこだ!」
「いや目の前にいますって」
「バルヒェット魔王は熊のような大男のはずだ!」
「まじで!?そんな噂流れてるの!」
「いえ魔王様。それは先代様でございます。ルディ・バルヒェット魔王様」
「あーなるなる。―――だそうだよ、勇者様。ちなみに私は1192代目の魔王だったかな。いいくに作ろう鎌倉幕府ーってね」
「で、では先代魔王はどうした!?他の勇者が倒したのか!」
「倒されちゃったの?フォル?」
「・・・いえ。お正月に餅を喉に詰まらせて、そのまま・・・(ぐすっ)」
「餅に倒されたの!?」
「ああ・・・いま思い出しても、悲しゅうございます」
「・・・だそうだよ、勇者様。いろんな意味でごめんね」
「う・・・うそだ!魔王が餅を喉に詰まらせたくらいで死ぬか!」
「でも事実だし」
「ええい!本物の魔王をだせ!」
「乗り遅れていますよ、勇者様。時代は熊魔王ではなく、良い子の魔王様です!」
「そんな魔王がいてたまるかー!!」
時代遅れの勇者も、聞いたことありませんけど。