16:魔王様と勇者 第一印象編
魔王様はたいそうワクワクなさっているのか、興奮を抑えられないご様子で勇者一行を見下ろしていらっしゃいます。
そう。今まさに目の前にいるのは、我々の天敵である勇者一行でございます。
本来なら魔王様にご足労頂かなくとも、この程度の勇者ならば中級モンスターで十分事足りるのですが、魔王様がどうしてもご自分の目で勇者一行を見たいと仰った為、こうして直々にお相手なさっている次第でございます。
魔王様のお供として、護衛役のフォルカー様と私、それから案内役のポチと、ここまで我々を運んだ(まだダンジョンに派遣されていなかった)二丁目の空き地のドラゴン兄弟がお側におります。
実際、護衛は私だけで十分だったのですが、従者は多いに越したことはないので。
魔王様はドラゴン(兄)の頭の上に乗ったまま、にっこりと微笑まれました。
「ども。まおうです。就任1ヵ月目の若輩者ですが、どうぞよろしく」
「まままま魔王様!勇者に挨拶をするとは何事ですか!カーッ!」
「いやー最初が肝心だと思って。面接は第一印象で決まるんだよ」
「目の前にいるのは面接官ではなく、天敵の勇者でございます!」
「えー」
「なんですか、その不満そうなお顔は!!」
でも魔王様。その挨拶では内定は取れませんよ。
勇者がまだひと言も発していないという事実。