11:魔王様と魔法の鏡 どこかの王様編
先ほどのフォルカー様がよほど衝撃的でしたのか、魔王様は魔法の鏡を見つめたまま微動だにしません。でも確かに、フォルカー様との付き合いの長い私ですら、あの光景を見た瞬間に強力な石化の魔法を受けたようでございました。
日の浅い魔王様でしたら、驚かれるのも無理はないかと。
「ケロ」
「いかがなさいましたか?」
「これ、映し出すだけじゃないの?」
「通常はそうでございます。ただ、この大陸にある鏡という鏡は、魔王様のこの鏡と通じておりますゆえ、先ほどのような現象が起こったものかと」
「そうなの?」
「はい。有事の際、魔王様のご命令を各地に伝えるための、手段のひとつでございます」
「なるほどねーじゃあ、ふつうは向こうから見えないんだ」
「はい。此度は、魔王様の魔力コントロールが不安定だったのと、たまたまフォルカー様の・・・あー・・・浴室に鏡があった為、あちらからも私たちの様子が見えたものと思います」
「あーなるなる」
「集中して、念じてください。魔王様でしたら、すぐに使いこなせます」
「よっし!じゃあ次は、一番近い国の偵察、だッ!」
「さすがは魔王様。他国の情勢を把握なさるのは、良い心がけかと思います」
「まあただ見てみたいだけなんだけどねー。ところで王様の名前は?」
「ベルンハルト・ディートリッヒがよろしいかと。ワイゲルト国の王でございます」
「よっしゃ!じゃあいくぜ!ベルンハ・・・ルト?ディー・・トリヒ?」
「魔王様。疑問系はまずいと思います。しかも間違えてます」
「だいじょーぶ。・・・ほら!何か映りだし・・・」
「お初にお目にかかります、魔王様」
「誰だキサマーーー!!」
「魔王様。失礼ながら、あれは―――」
「ベルなんとか王でないことはわかる!わかる、わかるよ!いくらなんでもわかるよケロ!」
「失礼しました」
「ていうか、あれ何!?イカ!?イカに顔あったよ!」
「キザったらしい顔をしておりました」
「なんかキラキラ光ってたよ!」
「ホタルイーカでしょう」
「え?ホタルイーカ?(ホタルイカじゃないの?)」
「はい。大陸の南の海域に生息する、魔大陸一有名な海産物です。イカの中の王様と言われておりまして、焼いて食べると美味しゅうございます」
「食べるの!?」
「おや。昨夜のディナーにもございましたが?」
「のぉぉぉ!!」
今度は塩辛で食べたいと仰ってましたよ。