第13話 新たな試練の兆し
湖畔の朝。
リリアはまだ抱きかかえられたまま、アシュレインの腕の中で目を覚ました。
掌には昨日の光の余韻がまだ微かに残っている。
「……アシュレイン様、今日は……どのように過ごせばよろしいでしょうか」
リリアは丁寧に尋ねる。
「今日は少し体を休める日だ。だが、光の修練も欠かすな」
アシュレインの声は低く、しかし優しい。
セリナがそっと近づき、リリアの手を整える。
「リリア様、準備が整えば、今日の訓練に向かいましょう」
藤色の髪が陽光に輝く。彼女の視線には、守るべき者への決意が宿っている。
ユウとセリオンも外で剣や魔法の調整をしている。
「リリアさん、昨日以上の光を出せるようになったら、今日の試練もきっと乗り越えられます」
ユウが穏やかに言うと、セリオンは腕を組んだまま頷く。
「王の番として、皆で支えます。無理はさせませんが、成長の糧となるでしょう」
アシュレインは湖のほとりに立つリリアを見下ろす。
「今日の試練は、光の親和性をさらに高めるものだ。単に力を使うのではない、光を通して精霊と心を通わせる」
リリアは息を整え、掌に小さな光を宿す。
「……わかりました、アシュレイン様」
湖面がゆらめき、昨日の精霊の気配が微かに漂う。
『お前の力はまだ磨かねばならぬ。だが、今日の光を通して試す価値がある』
「……精霊様、今日もご指導くださいませ」
リリアの声に、光がわずかに強く反応する。
その瞬間、湖の向こうの空に黒い影が現れる。
大きな竜の群れが、竜の国の領域に侵入してきていた。
アシュレインの瞳が鋭く光る。
「我が国に危機が迫っている……リリア、今日は戦いと修練、両方だ」
リリアは頷き、抱きかかえられたままアシュレインの胸元に身を委ねる。
セリナは剣を握り、ユウとセリオンも戦闘態勢に入る。
「我がリリアを守り、竜の国を守る!」
アシュレインの低く響く声と共に、湖畔に静かな決意が満ちていく。
光の波がリリアを包み、竜の国の守護者たちの視線が揃う。
「皆、準備はいいな?」
「はい!」
その声に応えるように、竜の国の守護者たちの翼が一斉に広がる。
新たな試練と戦いが、今、静かに幕を開けたのだった。
竜の国に何故竜が襲ってきたのか次回わかるはず・・・です




