第12話 光と絆の翼
湖畔に黄金の光が残る朝。
竜の国は戦いを乗り越えたものの、静けさの中に緊張感がまだ漂っていた。
リリアは掌に残る光の余韻を感じながら、ゆっくりと立ち上がった。
「……皆、大丈夫でしょうか」
藤色の髪をゆるくまとめたセリナが微笑みながら頷く。
「はい、リリア様。魔物は完全に撤退いたしました」
ユウは剣を軽く振って服の汚れを落とし、リリアに笑みを向ける。
「さすがリリアさんです。危なげなく魔物を押し返されました」
セリオンは腕を組んだまま、少しだけ口元を緩めた。
「光の制御が格段に上達していますね。王の番として、ますます頼もしいです」
リリアは少し照れながらも胸の奥に温かさを感じる。
「皆と一緒に戦えたから……できたのだと思います」
その時、湖面の光が微かに揺れ、精霊の声が風に乗って届く。
『よくやった、我が子よ。光はお前自身のものだ。だが、まだ磨き続けねばならぬ』
リリアは小さく頷き、決意を新たにする。
「はい……私、もっと強くなります」
その瞬間、アシュレインが翼を広げ湖畔に降り立つ。
金色の髪が朝日の光に輝き、瞳は深く揺らめく光を宿していた。
「我が光……よくやった、リリア」
彼はそう告げると、静かに手を差し伸べた。
リリアは躊躇いながらも、アシュレインの手を取る。
「……アシュレイン様」
その声に、アシュレインは静かに微笑み、力強く抱き上げた。
湖の光が二人の影を映し、黄金に輝く水面が周囲を照らす。
セリナはリリアの隣で微笑み、ユウとセリオンも戦いの疲れを見せながら安心した表情を浮かべている。
「今日は……少し休んでください」アシュレインが言い、リリアを抱きかかえた。
抱きかかえられたリリアは、もはや戸惑いではなく、自然に安心感を感じていた。
「……はい、アシュレイン様」
静寂の中、黄金の光が竜の国を包み込み、戦いを共に乗り越えた絆を象徴しているかのようだった。
リリアの心に、これまで以上に確かな自信と勇気が芽生える。
「私も……皆と一緒なら、どんな試練も乗り越えられます」
湖面に映る黄金の光と、翼を広げるアシュレインの姿。
竜の国に、新たな希望と光が静かに輝き始めたのだった。




