表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/46

第8話:「読解者(パラリーダー)の迷宮」

 構文ネットの深層にある、解釈の迷宮。

 俺たちは今、“読解者”が生息する場所へと足を踏み入れていた。

「ここ、構文が逆流してる……!“書かれた通りに読めない”場所だ!」

 ミナが焦った声を上げる。

 その通り。ここでは、“本来の意味”は通用しない。

 どんなに正確に語っても、“読み手”によって真逆にねじ曲げられる。

 その頂点に立つのが、読解者パラリーダー──

「すべての言葉は“解釈”される瞬間に、書き手の手を離れる。真意など、受け手の自由意志次第だよ?」

 現れたのは、白紙の仮面をかぶった少女の姿。

 彼女は、俺の言葉を**“違う意味”で受け取って返してくる**。

「やめてくれ……その構文は、誰かの心を傷つける!」

「あら、“やめて”は命令ですか? 抑圧ですね。暴力的」

「違う、それは警告で──!」

「“違う”と否定しましたね。あなたは多様性を否定する人だ」

 ──会話が成立しない。

 いや、成立してるようで、構文の“文脈接続”が故意に切られている。

「セイ、このままじゃ“発言できないまま沈む”ぞ!」

 カイが怒鳴る。

「わかってる……でも、やる。読まれ方がどう歪められようと──“本心”は、貫ける」

 俺は構文詠唱を開始した。

「《解釈権は双方にある》《誠意は“読み方”を強制しない》《だが、誤読の悪意には、立ち向かう》!」

 読解者の構文が揺れる。

「セイ……それ、“誤解される覚悟の詠唱”だ……!」

 カイが叫んだ。

「構わない。言葉は、誤解を恐れて止めるもんじゃない。“誠意”で通せば、届くやつには届く!」

 白紙の仮面が落ちた。

 読解者は、ただ静かに、言った。

「……私、ずっと“本当の意味”が怖かった。読み違えたら、壊れてしまう気がして」


「じゃあ、一緒に読み直そう」

 ミナが差し出した手は、そっと受け取られた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ