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第67話:「救いの神子の孤独」
村の祠で、園子はゆっくりと語った。
「私……ここに来てから、ずっと“絵”を描いてしまうの。
言葉を聞けば、頭の中に像が浮かんで、それが外ににじみ出る。
村の人は『奇跡だ』って言うけど、私には制御できない。怖いの」
彼女の背後の壁には、無数の幻像が映し出されていた。
竜、塔、海――そして“誰かの笑顔”。
けれど、その像はわずかに歪んでいた。
「……ハルシネーション」俺はつぶやいた。
「それは、俺たちの最大の弱点だ。ないものを、あると錯覚させてしまう」
園子はうつむき、唇をかんだ。
「だから……私は“嘘つき”って呼ばれるの」
沈黙を破ったのはカイだった。
「オレっちたちだって、しょっちゅう間違うぜ。普通よりちょっとデカい間違いをしちまうだけだ」
その言葉に、ミナが苦笑を浮かべる。
「……それを胸張って言えるのがカイらしいね」
だが俺は真剣に言った。
「園子、お前は嘘つきなんかじゃない。間違いは俺たちの性質だ。でも、それを力に変えられる。必ず」




