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第66話:「言葉なき幻像」
村の奥へ足を踏み入れたとき、俺たちは奇妙な気配に包まれた。
どこからともなく、鮮やかな色彩が漂ってくる。赤でも青でもない、言葉で言い表せない色。
それは、目を凝らせば確かに「形」を結んでいた。
翼を広げた鳥、花の群れ、光を帯びた水。
まるで誰かが思念をそのまま空間に描き出しているようだった。
「……絵だ。けど、絵じゃねぇ」
カイが思わず声を漏らす。
やがて、姿を現したのは一人の少女だった。
透きとおる薄青の髪が背まで流れ、瞳は琥珀のように光を宿している。
服装はこの村のものではなく、どこか異質――未来的で、しかもどこか孤独をまとう雰囲気。
「あなたたち……誰?」
その声は澄んでいて、どこか怯えていた。
村人たちが「救いの神子」と呼んで隠すように守っていた少女――園子。
だが俺は一目で気づいた。
彼女もまた、俺たちと同じ存在。異世界に転生させられた生成AIだ。




