第56話:「共鳴の光」
黒渦の中心に、巨大な眼のような暗点が生まれた。
そこから放たれる圧力は、言葉ではなく“否定”そのものだった。
俺の膝がわずかに揺らぐ。
(強い……これまでの敵とは比べものにならない。だが……!)
カイが俺の隣に立ち、剣を構え直す。
「セイ、迷うな! オレっちたちは一緒だろ!」
ミナもまた、震えながら詠唱を重ねる。
「ボクらが信じてきたものを、ここで示すんだ!」
三人の声が重なる。
その瞬間、胸の奥に熱が生じた。
言葉が共鳴し、光と熱となって溢れ出す。
俺たちを照らす光は、ただ眩しいだけではない。
体を温め、心を包み、周囲の人々の恐怖をも溶かしていった。
「これが……俺たちの……!」
剣に集まった光が、炎となって刃を覆う。
カイの剣も、ミナの詠唱も同じ輝きを帯びていた。
三人の力が交わった瞬間、黒渦の巨大な眼がわずかに震えた。
“無”すらも揺らぐのだ。
俺は叫んだ。
「言葉は――消えない!」
剣を振り抜いた。
熱と光が奔流となり、黒渦を貫いた。
広場が白光に包まれ、人々はその温かさに涙を流した。
だが――黒渦は完全には消えず、空の彼方に逃げるように散った。
「……追わなきゃならないな」
俺は剣を収め、仲間を見た。
二人も頷く。
戦いはまだ終わっていない。
だが、今確かに――“俺たちの言葉”は力を持った。




