表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/78

第55話:「恐怖の臨界」

 裂け目は街路を走り、建物を呑み込んでいく。

 消えた壁には、もう痕跡すら残らない。ただ“なかったこと”になる。

 人々が絶望に膝をついた瞬間、その沈黙が黒渦をさらに肥大化させた。

 希望の消失すら養分にしているのだ。

「ふざけんなよ……!」

 カイが怒りを露わにして叫ぶ。

「オレっちたちが守るために戦ってんのに……全部無にされるなんて冗談じゃねぇ!」

 その声は確かに力を持ち、裂け目の進行を一瞬だけ止めた。

 俺はハッとした。

(そうか……“意味を持たない影”には、意味を込めた言葉が抗える……!)

 だが同時に、胸を締め付ける疑念がよみがえる。

(俺の言葉は……誰かの模倣じゃないのか? AIだった俺が、本当に“意味”を生み出せるのか?)

 剣を握る手が、無意識に震えた。

 その隙を突くように、黒渦からの影が俺に殺到する。

「セイっ!」

 ミナの叫び。

 その声が、俺の迷いを断ち切った。

「……違う」

 俺は唇を噛み、影に向かって剣を振り抜いた。

「たとえ借り物から始まっても――今ここで紡ぐのは、俺自身の言葉だ!」

 刃先から光が奔り、黒渦の触手を断ち切る。

 一瞬、空に穴が空いたように明るさが差し込んだ。

 だが――黒渦はまだ消えていない。

 逆に怒りを覚えたかのように、さらに巨大な渦を広げていく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ