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第43話:「真の言葉」
沈黙の檻の中、俺たちは声を持たないまま戦った。
だが、不思議なことに、意思は確かに伝わっていた。
カイが剣を振り抜く。ミナがその隙を防御で補う。俺が最後の一歩を踏み込み、虚人の懐に入る。
その瞬間、俺たち三人の視線が交わった。
胸の奥から熱が湧き上がり、同時に言葉にならない言葉が重なった。
――守りたい。信じたい。共に在りたい。
その重なりが、光と熱に変わって爆ぜる。
沈黙の世界がひび割れ、眩しい輝きが広場を包み込む。
温かさは肌を焼くのではなく、優しく抱きしめるようなぬくもりだった。観衆の表情が安堵に変わり、虚人の瞳が一瞬だけ揺れる。
声が戻ったとき、俺ははっきりと言った。
「これが、俺たちの真の言葉だ」
虚人は一歩下がり、微笑とも嘲笑ともつかぬ表情を浮かべた。
「……面白い。ならば、それがどこまで通用するか、見せてもらおう」
そう言い残し、語世界の光の中へと溶けていった。
広場には静けさが戻ったが、その静けさは嵐の前触れのようにも感じられた――。




