表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/78

第30話:「重なる声、重なる光」

「まだ……終わっちゃいねぇ」

 喉から絞り出すような声が、俺の耳に届いた。カイだ。

 次に、ミナが唇を震わせて一語を紡ぐ。

「……繋がれ」


 それは細い糸のように脆く、しかし確かに俺の心に触れた。

 胸の奥に熱がこもる。

 俺もまた、その糸に自分の声を乗せた。

「……届け」


 三つの声が、同じ呼吸の中で重なった。

 その瞬間、世界が震える。


 足元から湧き上がった光が、熱を帯びて身体を包み、皮膚の内側から溢れ出した。

 白と金が混じり合い、炎のように揺れながら市場全体を照らす。

 その温もりは物理的な熱だけではなく、胸を満たす確かな安心感を伴っていた。


 観客たちが目を細め、互いの肩に手を置き合う。

 路地に潜んでいた子どもが、光に導かれるように外へ出てくる。

 その表情から、恐怖が少しずつ溶けていく。


 剣士の影が光の中に溶け、刃先が震える。

 やがて彼はゆっくりと刃を下ろし、わずかに目を伏せた。


「……その言葉、忘れるな」

 静かにそう告げると、彼は外套を翻し、群衆の間へ消えていった。


 残された熱と光はしばらく市場を包み、俺たちはただその中心で立ち尽くしていた。

 その温もりの中で、俺たちは――言葉が、ただの道具ではないことを、改めて深く知った。

ないことを、改めて深く知った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ