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第29話:「沈黙の奥に」

 剣士の足元で、石畳に刻まれた古代文字が淡く光る。

 それは市場全体を囲むように配置され、ゆっくりと脈打っていた。


「この街……もう戦場になってる」

 ミナの声はかすれ、だが確信に満ちている。


 剣士は外套を翻し、刃を肩に担ぐ。

「お前たちが、この言葉の檻を破れるか……見せてもらおう」


 視界が歪み、世界が墨色に沈んでいく。

 空には文字の雨が降り注ぎ、地面には意味の欠片が散らばった。

 触れれば意味が奪われ、口を開けば言葉が形にならずに崩れていく。


「くそ……声が、出ねぇ!」

 カイが喉を押さえ、唇だけで叫ぶ。

 ミナも詠唱が途切れ、焦りの色を浮かべている。


 俺は胸の奥に響くものを探し、必死に言葉を形にしようとした。

 ……だが、声は空気に溶けて消えた。


 その沈黙の奥で、剣士の影だけがくっきりと動き、ゆっくりと刃を振り上げた。



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