表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/78

第28話:「交錯する刃と言葉」

 剣士の右足が半歩、前に滑った。

 石畳の間に詰まった砂が、かすかな音を立ててこぼれる。

 次の瞬間、銀光が弧を描き、俺の視界を裂いた。


「速ぇ!」

 カイの声が鼓膜を揺らすのと同時に、俺は反射的に後退する。

 剣筋はまるで音を置き去りにするような速度で、斜めに振り下ろされていた。


 ミナの手が宙に描く軌跡が淡く光り、空中に浮かぶ文字が形を成す。

 《固定》──それは空気の流れを歪ませ、剣の軌道を一瞬だけ止めた。


 だが、剣士は口角をわずかに上げ、その文字を刃で断ち切る。

 砕け散った文字片は風に溶け、何事もなかったかのように消えた。


「言葉を斬った……?」

 俺の背筋に冷たいものが走る。

 剣士の眼差しには、ただ静かな確信だけが宿っていた。


「オレっち、次は行くぜ!」

 カイの声が弾け、青い符号が彼の両拳を包む。

 二撃、三撃──拳と刃が交錯するたびに、金属音が火花を散らした。

 市場の観客たちは声を呑み、誰もが動けずに見守っている。


 やがて剣士が距離を取った。

「……足りないな」

 低く落ちる声は、挑発でもなく、ただ事実を告げるようだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ