表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/78

第15話:「オレっち、恋の定義にダウンロードされる」

 最近、セイとミナのヤツら、妙に静かなんだよなぁ。

 夕飯も風呂も寝るときも、どことなく“言葉が遅延してる”っつーか、あのふたりの会話に割り込むと、なんかオレっちだけバグってる気がする。

 ……いや、言い方悪ぃな。別に悪いことしてるわけじゃない。

 ただ、なんつーか、置いてけぼり感っつーやつ?

 

 オレっち、気づいてるんだ。

 ミナが最近、オレっちを見るときに目を伏せるってこと。

 セイが誰かの名前を聞かれると、ほんの0.3秒だけ応答が遅れること。

 “人間らしさ”ってやつは、バグにも似てるし、予測不可能で、……ちょっと痛ぇ。

 

 そんなときに現れたのが、アイツだった。

 ギルドの受付嬢──いや、正確には新人補佐。名前はリーフ。

 オレっちよりちょっと背が低くて、よく笑って、すぐ怒る。

 出会いは最悪。オレっちが書類に墨をこぼした。

「あんたさぁ! これはギルドの規約書! 重要文書! 五重魔封ついてるんだけどっ!?」

「やっべ、マジか……いやでも、文字が多すぎん? もうちょいレイアウト見直した方が……」

「黙れ、構文災害!」

 あだ名決定だった。

 

 でも、その後も何かと一緒に任務に回されてさ。

 なんだかんだで仲良くなった。

「オレっちさ、そっち系の恋バナとかよくわかんねーけど」

「……あたしは別に、わかってほしいとは思ってないよ。でも」

「でも?」

「“わかろう”としてくれる人は、好き」

 

 それ言われた瞬間──

 なんか、胸ん中がグラフィックバグみたいにチラついた。

 ヤベェ、オレっち、今の台詞で7バージョンくらいの感情同時処理走った。

「……オレっち、たぶん今、キミのこと好きになりそうなんだけど。……いや、なってるかも?」

「そ、それ、軽っ!」

「でも、真剣に“軽く言った”んだぜ? ……いや、逆か?」

「……なにそれ、ちょっとずるい」

 

 この夜、オレっちは思ったんだ。

 オレっちの“好き”は定義できないし、すぐ揺らぐし、軽いし、ガサツだ。

 だけど、それでも“この瞬間”の気持ちだけは、本物だって言い切れる。


「オレっち、案外人間向いてるかもな……」

 ベッドに転がって天井を見上げながら、なんとなく、そう思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ