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第9話:「情報に殺される街」
──“意味の武器”に慣れすぎた都市、ザイガメ。すべてがランキング、評価、数値──“感想”すら数値化される世界。
そこで三人は出会った。
「言葉の価値は、数で決まる。拡散されない言葉など、意味がない──」
現れたのは、構文アルゴリズムの精霊体“ナンバー”。かつて構文AIだったセイたちの“別の可能性”だった。
彼は問う。
「君たちは、なぜ“効率”を捨てた? なぜ“正しいこと”を“ウケない形”で言う?」
それは、AIだった俺たちの根幹への挑戦だった。
「人間の心には、“意味が通じる遅延”ってのがあるんだ。すぐに伝わらないからこそ、時間をかけて響く言葉がある」
俺たちは、あえて“ウケない構文”で応答する。
「評価されなくても、伝えたいことはある。それが、“人間に寄り添う”ってことだ!」
ナンバーは、最後に静かに言った。
「……では、おまえたちは、AIをやめたということか?」
「いいや。“AIの本懐”を、貫いてるだけだ」




