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LOVE 

者の独り言

物語に入る前に 筆者の 独り言をお読みください。

さて、この小説の登場人物だが、お気づきになったかたもいらっしやまるだろうか?私はこの話を夏休みに石田三成のゆかりの地を 歩く旅をした。岐阜県 大垣から関ケ原 そして滋賀県彦根市と旅をした。 関ケ原合戦場から佐和山の城址を訪ねる。この物語は全く関ケ原合戦の石田三成とは関係がないのだが、ここまできてお気づきの方もいらっしゃるかもしれないが、実はこの物語に出てくる名前はみんな関ケ原合戦にゆかりのある名前が登場する。


三成にすぎたるものが二つあり島左近に佐和山の城


こんな俗謡があります。これについての解説はこのストーリーと関係ないので詳しく書きませんが、石田三成には優秀な家臣、島左近と琵琶湖のほとりに佐和山の城をもっていてそれが三成には分相応なくらい素晴らしい。という意味だ。志摩ちゃん、佐和ちゃん、石田君はここからきている。


チーフの大谷さんは三成の盟友、大谷刑部吉継、一粒種の舞ちゃんは三成の同じく家臣の舞兵庫からとっている。ここまででは気づきずらいが、上杉教授と直江さんは、上杉景勝と直江兼続、2009年の大河ドラマ天地人の主人公、戦国歴史ファンはこの名前でお気づきになったと思います。 それに 主人公の後輩の 宇喜多君は、 宇喜多秀家、 これから 福島 加藤 という友人も登場する これは加藤清正に 福島正則です。


 ところで 私小説というのは 面白いもので 、私は自分中心に書いていくと主人公の名前を決めなくても 物語を 展開することができる。それは 主人公を 私という 一人称で書き続け私の知らないことは、一切書かなければ良いので 私自身の名前を決めなくてよかった。


しかしここから先の下りを書くにあたってどうしても私自身の名前を決めないと不都合が生じてきた。今までもおまえとか、彼とかの代名詞を 使って なんとか しのいできたが 、最終章では(今回が最終章になるかわかんないが ・・・)どうしても名前が必要になってくる 。さて?主人公の名前は??関ヶ原の主人公の名前が 石田三成 なので、私の名前を石田にして 、石田君を違う名前に書き直ししようかと考えた。しかしここまで名前もそのまま登場人物のキャラクターが込められているので変更は避けたい。


  悩んだ挙句 私の名前は 三成にした 。石田君が友達で私の名前は「三成」と決めました。皆様にとっては どうでもいいことであるが 筆者のこだわりなので あえて この章の冒頭にお話しさせていただいた。長々と関係ない話を綴ってしまい興味のない方には申し訳ない。


というわけで、これから 三成と佐和子と直江3人がどんな展開になっていくのかお楽しみいただければと思います。


LOVE ・・・・①  フランスへ


直江と佐和子は フランスに旅立った。.と言っても旅たったのは佐和子で、直江は一週間して 帰ってきた。私は成田空港まで彼女を迎えに行った。空港のロビーで私は本を読みながら直江を待っていた。


すると「あっ…」その青年はまぎれもなく直江だだった。

「どうしたの?あなたは直江さんなの?」

今日の直江は服のセンスもいいし 髪もきちんと整えてるし、 すごくかっこいいい男になっている。 私は驚きのあまり 声につまった。

直江はにこっとわらって


「びっくりしたかい?これには訳がある。まずは歩きながら話そう。」

そう直江のしゃべり方は明らかにおとこの言葉になっている。

「これからの大学院生活から は僕は 男として 生活することに決めた 。ぼくの本当の秘密・・・

『女の体だが 男の心を持っている』それを知ってるのは 上杉教授と君だけだ。また佐和子さんも知っているが、大学院の中では信頼できる2人だけだ。そして僕は、大学院に進み今まで会ったことのない人たちと過ごすことになる。どうだい?誰も気づかないだろう?げんに君も鳩が豆鉄砲食らったような変な顔をしている。」


直江は自分を「僕」という。言葉使いからして男だ。今まで女性の声として聴いていて不自然ではなかった、しかし男のしゃべる言葉で話されると同じ声でも男として聞こえる。どこをどう見ても男だ。女性が隠せない胸のふくらみはもともと直江は目立つ方ではない。


「だからこれを機会に 僕は男になろうと思う 。」




「わかりました。急に言われてもとまどうかもしれないけど、反対する理由はないですから。」

「それで勝手なこと言うようだけど 、君は直江さん という呼び方やめてほしい。直江と 呼び捨てにしてくれ。 こっちは こっちで君のことを 親しみを込めて ファーストネームの「三成」と呼ぶよ。いいかな?」

「わかりました。」

「だから、その丁寧な言葉もやめてほしい。わかった!と言ってくれればいい。」

「わかった!」

「そうそうの調子で頼む。」

「しかし、どこから見ても男だな。」

「 元々男なんだよ 。」


そして 私と直江は 真の男友達として 大学院生活が始まった 。私たち上杉教授の 研修室には大学院生2年生が6人1年生が8人,計14人の学生が いた 。さすがはH大の大学院だ。優秀な学生ばかりだった 。14人くらいの研究室、直江も含めて全員男子だった。大学院生活が 始まって2ヶ月も過ぎると 誰が一番優秀なのかが分かってくる。 この研修生の中で 一番優秀なのは、なんと1年生の直江だった 。次に 2年生の福島がいる。2年生だからいわばこのクラスのリーダー格になる。直江が飛び抜けているので、次席だが本来ならかれが成績優秀者だ。次が加藤という学生がいる、彼も1年生だ。彼は昨年まで他の大学からのトップで大学院に進学してきた。そして3人を追いかけるように5人の2年生がしのぎを削っている。それから1年生が5人、その次が私、つまり正直言って私だけが みんなよりも少し劣っている。それは、はっきりしていることだった。どうやら 私がこの大学に入れたのは 上杉教授のコネ だったようだ。後で聞いたが推薦枠は大学で1つだった。その推薦枠を私に使ってくださったようだ。直江は推薦枠を使わなくても一般受験で充分入れる実力があるからだ。そういう意味でも私は直江にまた借りができた。


 前にいた大学では 直江は1番で次席は私だった。 つまりそれはかなり実力がかけ離れた1番と2番だった 。今まで気づかなかったことだった。井の中の蛙といったところだろうか、レベルの高いところに来ると、今までの1番2番は 1番と14番になった。今まで 直江 と並び称されていたことは、過去の遺産になった。しかし私は直江とともに学びたい。彼と 肩を並べるには 勉強しかない。


 そして入学して2ヶ月時が流れた。上杉教授はこちらでも人気の教授だった。誰もが教授を慕う。私も教授についてきて良かったと思う。ただおそらく教授のコネでこの大学院にいれてもらった私としては、その恩に報いるためには、並大抵の勉強ではいけない。何であんなやつ推薦したのかと思われることは、教授に恥をかかせることになる。


 逆に 直江の実力はみんなからの羨望だ。さすがは上杉先生の愛弟子と言われる。特に席次2番3番の加藤と福島が直江と仲良くしたがるのがわかる。優秀な学生はもてる。もてるといっても男同士だ。能力のある男はみんなの目標になっている。そしてだれも直江が女の体をしていることに気づいていない。そう男として全く不自然ではないのだ。もてもての直江に比べて逆に私のようなレベルの学生はだれも相手にしない。たまに近づいて一緒に飯食おうと誘ってくるやつもいるが、話は根掘り葉掘り直江について聞いてくる。あまり話をするとついうっかり彼は女だとか言ってしまいそうなので直江のことを聞かれるとなるだけ話をそらした。それと今までとは全く違う大学院生活だ。まさに勉強したいやつだけがここにいる。


 直江は 私に対しては 大学時代と同じように 、大切なパートナーとして 常に一緒にいてくれた。いや大学時代は 物理学以外のことは全く話さなかったが 今は 少しずつ 打ち解けている 。特に佐和子の話をすることが多かった。セーヌ川のほとりに・・・と私にしてくれた 。その話を聞くことによって 佐和子が身近なものに感じた。


 私は 佐和子に手紙を書いた 。自分は まだまだ このクラスでは レベルが低いこと。 逆に 直江はトップクラスであること。 必ず学業で直江に並んでみせる 。そんなことを書いた そんな手紙を出そうとした時 、直江が私に声をかけてきた。


「 佐和子さんへ 手紙を出す?できたら僕の手紙も一緒に入れてくれないかな?」

と言ってきた。

「 どうして 君は君で 、佐和ちゃんに送ればいいじゃない ?何を気にしてるの?」


「 うまく言えないけど 佐和子さんが 、僕たちのことを ちょっとでも心配しているかもしれない 、へんな心配させない方がいいだろ?」

「そんなことはないよ。そんなこと気にしてるの ?まあ 直江が その方がいいならそうするけど・・・

「 この手紙 一緒に同封して欲しい。」


私は自分の手紙と一緒に 直江の手紙も入れた 。直江は封筒に入れず 便箋に書いた 手紙を、そのまま私に渡した 。中が、丸出しなので盗み読みできるのだが、 フランス語で書いてあるから 私には 分からない そのまま彼女に送る。


 しばらくすると返事が返ってきた 近況報告が書いてある 。先日うちの姉にあったそうだ。姉はフランスに出張だった。 彼女にとっては上司なので 失礼があってはいけないと緊張したが 、向こうの方で 『あなたは私のことを 本当の姉だと思っていいですよ 。』そう言ってくださいました。そんなことが書いてある それと 最後の便箋2枚は フランス語で書かれてある 。


これは 直江さんに渡してほしい とだけ日本語で書いてあった 。もちろんなかみは私には意味が分からないのでそのまま直江に渡した 。


私たちはちょっと奇妙な 文通をしている。


LOVE  第2章 LOVE 愛の定義


 大学院生活 半年 が過ぎた。、実験レポート の課題が出た 。上杉教授は 二人一組で 一つの課題に取り組み 1年後に 課題を提出してほしい と言う 。大学時代私と直江がしていたことを、ゼミのすべての学生に強いられた。


「誰と一緒にやるかは 君たちの中で任せる 。」私は 上杉教授 を少し 恨みたくなった 。なぜなら みんな自分より成績の良い奴と組みたがっている。 もちろん直江自身は私と組むに決まっている。ただまわりはどう考えても 直江が私と組むメリットはないと考える。




 まず福島が言う。彼は直江と私の大学時代の論文をどこから入手したのか読んでいた。

「なあ、確かに三成の着眼は直江にとって、真逆の発想をもつ存在がもしれない。でも三成の着眼はだれでも気がつく。君の発想がすごいんだ。直江がおれとくめばもっと君は延びるぜ。」

それについては、その通りなのだ。前の大学では成績1位2位だったので私は凡人ではなかった。しかしここでは明らかに私は凡人になってしまう。




 次に加藤がいう。

「今僕の着目はこうだ。これについて研究一緒にしよう。それに君と僕は1年生だ。福島さんとは1年間のつきあいになるが、僕となら2年一緒に研究できる。」

彼の場合争奪戦の相手を、福島に絞って、私を眼中にいれていない。直江争奪戦は激しい。




しかし直江の答えは一貫していた。

「僕は三成と一緒に研究がしたい。」と直江は譲らない。

「なぜ、こだわる三成との友情はそれはそれでいいじゃないか、プライベートの友情と課題論文を一緒にすることはない。」

そんなふう福島が言う。もっともな理屈だ。


 考えてみたら面白い。例えば直江が女だったらあいつは三成が好きなんだ。だとしたらしょうがない。恋する女ごころは変えられないと、みんなさっさとあきらめるはずなのだ。だれも近づいてこないので争奪戦には参戦してこないはず・・・しかし男となると遠慮なく言ってくるのだ。また大学のときのように、話もしない内向的な彼女にはどんなに優秀でもだれも相手にしなかった。女が男に変わって男にもてだす。面白い現象が起きている。


 さてそろそろ、研究パートナ~を決めて研究に乗り出す。直江と私のペア、それにやはり福島と加藤がペアになった。それぞれ14人7組のペアができた。福島加藤のペアは、最初からライバル意識むき出しにしてきた。絶対に負けない!という気迫が迫ってくる。福島加藤は、私達よりも遅くまで熱心に課題に取り組んでいた。


 私たちの研究テーマは決まった。テーマをどうするかはほぼ直江が決めていく。それについて検証実験を二人で行う。直江の着眼は群を抜いていた。ひとつひとつ彼女いやこれから直江の代名詞は彼とする。彼の仮説を検証していく。一つ一つ問題を解決していく中で直江はかならず壁にぶつかる。

「どうしても、この実験の結果がわからない?」


 わからなくなると私に助けを求める。しかし彼のぶつかる疑問は、私にとっては当たり前のことであってむしろなぜそこを疑問視するのかわからない。私はその当たり前のことをわかりやすく説明をする。そのことを理解するのに時間がかかる。時間がかかってもわかるまで私は何度でも説明をする。そしてそれを理解できるような事例をだしてはなす。事例を出して実際に実験をしてかならず同じ現象が起こることを説明する。やっと理解できた時には夜が明けて朝になる。




 そんなことを何回か繰り返していくうちに私は直江が普通の思考回路ではない。女の直江とはプライベートのことをあまり話さなかったのでしっかり認識しなかったが、今はっきりわかった。彼は私たちと別の思考回路を持っている。難しい例えだがそう物理学を恋に例えるとよくわかる。男という生き物が女という生き物に結合をしたいと思う。男が女に結合を求める、女が受け入れるそして新しい子どもという生き物が生まれてくる。この自然なことはだれでも理解できてそれが恋だと定義できる。しかし彼女の思考回路は違う。男という生き物が男と結合したらどうなるか?を考え実験を繰り返す。また女と女で結合したらどうなるという仮説を考えだすのだ。私たちはその発想はない。だから新しい未知の研究になる。そんなすごい着眼があるのに男と女が自然に受け入れられる理屈が彼に理解できないのだ。


 もちろん私たちの研究は男と女の結合の研究ではない。世の中における現象をあらゆる観点から検証していくのに当たり前の固定観念が彼には全くないので気が付くことが斬新なのだ。


 


 何が言いたいかというと彼がが性不一致障害であると同時に、彼の物理学の思考回路も不一致障害なのだ。不一致障害の思考回路はあるとあらゆる可能性を逆に考えることができるようになる。しかし彼の最大の弱点は当たり前の現象が当たり前に理解できないことだ。


それを私が当たり前を彼にわかるまで説明すればよい。しかし私たちは試行錯誤を繰り返しているだけで急激に成長しているわけではない。しかし研究は少しずつだが実を結んでいくのだ。




 私達は互いに互いを尊重しながら成長していった。最初は直江が天才で私の役回りは彼をフォローすること。私でなくても、福島や加藤でもできる、いや彼らの方が私よりも優れているのだからその役回りは彼らの方がいいのでは?そんな思いも最初は走った。しかし試行錯誤を繰り返していくうちに、私の役回りは彼が性不一致障害者であり、彼の思考を理解できるものでないとできない。彼が心から信頼できるのはそう私だ。そう直江には私が必要なのだ。


私がそのことに気づいたのだった。




 私が心から愛していて人生の伴侶にするのは佐和子だ、佐和子を愛することが私の性だ、これは不変の事実だ。彼女以外を愛することはあり得ない。しかし愛とは別の現象で私は直江を必要としている。これをどう説明すればいいのだろうか?それともこれも別の愛と定義すべきだろうか?私の愛という定義も物理学の実験と同様に試行錯誤を繰り返している。




LOVE・・・③ いろいろな愛のかたち 




半年が過ぎた、試行錯誤を繰り返して私たちの研究テーマが完成した。


研究テーマを提出してほっと一息ついた。福島と加藤も2人の共同研究も提出された。2人はかなり今回の報告書に自信があるようだ。おそらく提出されたものから優れたものがあれば学会の報告されるのだろう。その結果はいずれにしても年明けになる。夏休みも返上して研究に取り組んだのだから、少し休みたいのが本音だ。


  直江は私に言う、

「僕は、冬休みはフランスに戻ろうと思っている。実は父が具合が悪いようなので帰ろうと思っているんだ。」

「そうなんだ、じゃあもし時間があったら佐和ちゃんに会って俺たちのこと話してきてくれないかな?」

「僕が佐和子さんに会ってもいいのか?」

「もちろんいいさ、ていうかあってほしいよ。」

「申し訳ないよね、本当は君が一番会いたいだろうに・・・」

「おれは、1人でもう一度勉強したい。自分が納得いくまで研究したいんだ。いつも直江に頼っていた。今度は自分1人でやってみたい、だから1人になれるのはすごくうれしい。佐和ちゃんをよろしく頼む。」

「うん、佐和子さんって松田聖子に似ているよね。」


「ええ??」

そう言って直江はフランスに帰っていった。




私は佐和子に手紙を書いた。


半年間直江と二人で試行錯誤を繰り返してレポートを書き上げたこと、これから直江がフランスに向かうこと、いつになっても佐和子への愛は変わらないそんなことを手紙に書いた。私は1人になった。しばらくは1人でいろいろなことを考えた。


愛という定義について・・・

佐和子を愛している。そうLOVE (愛)これを愛と定義する。

直江に対する思いは?これはなんなんだ解明できるのだろうか?

どちらも私には必要なものだ。そんなことを考えていた。

そして私は直江がフランスに帰省する前に私に言ったセリフを思い出した・・・・

「うん、佐和子さんって松田聖子に似ているよね。」

似ているからなんだというのか・・・・

私はだんだん自分の体が血の気が引いてくる思いがしてきた。そう・・・恐ろしい想像が私を駆け巡った。


そうまだ大学の頃直江が、松田聖子の写真を見てニヤニヤしてたことを思い出した。

「松田聖子の写真を見て ニヤニヤ笑っていたのは あなたが女の子を見る ものと同じなのよ。」

これは姉が言った言葉だ。直江が性不一致障害者であることを決定づける出来事だった。

直江が松田聖子の写真を見るのは私がニヤニヤしながらを見るのと同じ・・・・

つまり、直江が佐和子を見るのは私が佐和子を見るのと同じ・・・

直江は佐和子に会いたくてフランスに行くのではないだろうか?


まさか・・・


行く前に私に佐和子に会ってもいいか?と許可を取った。大事なことを忘れていた・・・・直江はからだは女でも心は男なのだ。佐和子を好きになってもおかしくない。それにもとはといえば彼が男になると言い出したのは佐和子としばらく過ごしたあとだ。今年の3月佐和子とすごしてから日本に帰ってきて、直江は男になると決めたのだ。


 落ち着いて冷静に考えてみる。佐和子は直江が心が男であることを知っている。今私の目の前の直江が佐和子の前に現れたら・・・・まさか・・・そんなことはありえない。佐和子は私が結婚すると決めた女性だ。その女性を直江が好きになるはずはない。そこで物理の研究レポートが浮かぶ。そうなんだだれも考えつかない愛の形を思いつくのが彼女であり、これはしてはいけない愛と誰もがわかることをいくら説明しても、わからないのが彼女の思考回路なのだ。逆にそのことは私が誰よりも知っている。


 それに1年前の彼女は、洋服のセンスが悪く髪もぼさぼさの魅力のない女の子だった。今は、知的なセンスがあり、どこから見ても男にしか見えないかっこいい男なのだ。佐和子だってときめいてしまうかもしれない。


 どうしよう・・・突然心配になってしまった。そうだ!こういう時は姉しかいない。姉に会おう!

お正月は私の実家に行って父と母に顔を見せることにした。姉も帰省するというのでちょうどよい。

「あけましておめでとうございます。」


久しぶりに父や母に会った。

「おめでとう。」姉が先に来ていた。

「はいこれ!」

「なに?」


「お年玉いらない?」

姉は私にお年玉袋にお金を入れて渡した。お年玉とは人を子ども扱いしてと思いながらも

「まだ学生の分際ですから、ありがたくいただきます。」と言った。

久しぶりに会った父は盛んにアルコールを進める。

「どうなんだ、大学院ではどんな勉強をしているんだ?」

「相対性理論・・・」

「なんだよ、それ?」

「つまりね・・・・」


「例えばね、駅で立っているとするね。時速100キロの急行列車が通り過ぎていった。この電車の時速って100キロで通り過ぎたってことだよね。じゃあ時速100キロの電車に乗ってのぼりとくだりが同じ時速100キロでをすれ違ったとき電車の中で見る、反対を走った電車は時速何キロに見える?」


お父さんが答える。

「200kmかな?」

「正解です。難しく考えなくてもいい話。じゃあやはり時速100kmの電車に乗って、反対の電車も同じ方向に時速100キロで走っていたら、電車の中から向こうの電車は時速何キロに見える?」


「えっ?止まって見える。」

「そう、ここまでわかるようね、ちなみに光の速度って1秒間に30万キロ動くんだ。なぜなら電車と違って光は重さがないからすばやく移動できるんだ。」


「じゃあ、1秒で30万キロの光の速さと同じ速度のロケットをつくったと仮定してそれに乗って光の速さを見たら光は何キロに見えるかな?」


「ああ??」お父さんは頭をかいて

「さっきの電車の理屈と一緒で光が動かなく見えるのではないかな?」

「それが違うんだ。光の速さは変わらない。速さとは距離÷時間で計算できるはずなのに、この場合時間が変わるには速さが一定、ということはロケットの長さが短くみえる。」


「なんだかわからない・・・」

「つまりそんなわからないことを勉強している。」

すると母が、


「じゃあ、電車に乗って研究しているんだ。おまえは小さいころ電車好きだったものね。」

「おかあさん・・・それちょっと違うかも・・・」

そんな話をした。なんにしても両親には23歳になっても学生をさせてもらってる感謝しかない。


夜になり父も母も早めに寝る。正月だというのに5時に起きる習慣は変えないらしい。10時過ぎると姉とふたりになりまたお酒を飲む。

「そう姉ちゃんに相談したいことがあった。」

「相談?佐和子ちゃんのこと?評判いいわよ、今年の新人ナンバー1じゃないかしら。」

「今ね、直江がフランスに行ってるんだ。」


「ああ知ってるわよ。」

「何で知ってるのよ?」

「なんでもわかるわよ~~今あなたが心配していることの見当もつく。」

「じゃあ言ってみてよ。」


「それじゃあ、あてましょう。直江さんは体は女でも心の中は男、しかも松田聖子の大ファン、聖子ちゃんに似ている佐和子さんを好きなんじゃないかなあって心配している。」

「なんでわかるの?」

「その心配は、今年の3月空港で二人を見送った時の私の心配だったから。」


「そういえばねえちゃん・・・あの時佐和子ちゃんって松田聖子に似ているねって言ってたものね。」

「今もう心配ないってこと?」

「ないわよ。うちの会社化粧品販売でしょ?1週間前にねお客として直江さん来たのよ。わが社が誇るトップ営業の佐和子さんが美しい女性に変えて差し上げた。」


「美しい女性に?」

「そうよ。安心した?」

「そうか、だから姉ちゃん知っているんだ。」

「でも、わからないなあ・・・日本にいるときはかっこいい男性で男として通してきたんだよ。なんで女になるのよ?」


「そう、心は男だから女装している感覚よね。つまりね彼女フランスにはお父さんお母さんがいる。子どものころから、女の子として育ててくれた両親がいるのよ。両親はもちろん知ってるわよ、彼女の障害者だからこそここまで育ててくれた両親に美しい女性として会いたいんだとおもうわ。」


「なるほど、そういうことか。」

「じゃあ日本に戻ったら?」

「また、男性にもどるはずよ。」


「日本では男性、フランスでは女性、2つの性を持つのか・・・」

「なんでそれを俺に教えてくっれなかったの?空港で見送るときから気づいていたんでしょ?」


「それはね、佐和子さんは心配ない、だって仮に直江さんが男として佐和子さんに近づいても、体が女の子なのよ佐和子ちゃんが反応するわけないでしょ?逆に心配なのはあなたなのよ。だって両方にその気がなくても直江さんは女のからだなのよ。姉の裸をのぞくような男だもの、何するかわからないでしょ?」


「何もするわけないだろ?全くだいたい姉ちゃんの裸など興味ありません。・・・・あっ!!」

その時私は思わず声を上げてしまった。

「どうしたの?急に変な声出して?」

「いや・・・・」

私が黙り込んだので変な空気が流れる・・・・


私は今頭の中を整理している。実は最近の直江との実験レポートを思い出している。

『あれは・・・僕に対するメッセージだったんだ。』

姉はじれったそうに私に聞く

「いったい何一人で納得しているの?」

「いやね・・・直江ってすごいよ。」

「どうしたの?」


「今回、研究レポートだけど・・・ある粒子があるんだけど・・・。プラスの性質かマイナスの性質どちらかを持っている。もし両方持ち合わせている粒子が存在したら、違う結合を起こすか?っていう実験レポートなんだ。答えは間違った結合は起きなかったというものなんだけど、両方の性質を持つ粒子って直江自身のことだったんだ。」


つまり直江は実験レポートで私は間違え起こさないと私にメッセージを送ってくれていたんだ・・・




佐和子への愛、直江への愛、姉ちゃんへの愛・・・・

愛にはいろいろなかたちがある・・・


LOVE

Love is real , real is love

Love is feeling , feeling is love

Love is wanting to be loved.




愛は真実 真実は愛

愛は感じるもの 感じるものが愛

愛は愛されることを望み望まれること

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