MICHELLE(ミッシェル)
大学生活の中で忘れられない出来事がある。それはジョンレノンが1980年12月8日凶弾にうたれ帰らぬ人となった。ジョンにピストルを向けたのは、ジョンレノンをこよなく愛すファンの一人だったという。ショッキングでそれでいて不可解なニュースが世界中を震撼させた。
余談だがこのニュースは筆者が大学1年生の時のことだった。実は同じ日に私の祖父が息をひきとった。祖父の家を訪ねよう家を出ようとしたとき、友人から電話があった。「ジョンが死んじゃったよって・・・」私もびっくりしたが「これから、葬儀なんだ。」というと・・「ジョンの?」「まさか・・・今、大好きだった祖父が亡くなったんだ・・・」そんな会話をしたのを覚えている。この物語ではジョンがなくなったのは、大学4年生の時の設定になっています・・・・
Michelle (ミッシェル)・・・① ハッピークリスマス
ジョンが凶弾に倒れた翌日、石田から電話があった。ジョンレノンを語り出したら尽きない。世界中の至るところでこの悲報を受けショックを受けた。私たちはジョンの冥福を祈っている・・・・
「ところで今日電話したのは、お前のことなんだが、うちにお前の大学の後輩で、宇喜多君いるだろ。最近チーフになって、頑張っているんだがおれに折りいって話があると言ってきた。深刻そうなんでなにか壁にでもぶつかったかなあと思って聞いたら、それがお前の話なんだ。宇喜多君がいうには、お前は大学の物理学学科で2番の成績だという。そうなのか?」
そんなことまで石田に伝わるのか自分から言いふらすことではないので、噂で友の耳に入ると嬉しい。
「まあ、そうなんだよ。」
「びっくりした。チーフやってこれだけの成績に昇りつめる君を、宇喜多君は尊敬してると言ってた。それで2番なのは結構だが、1番の成績の学生は女の子だという。お前が一番わかっていることだと思うけど、で宇喜多君は、成績1番の女子と2番のお前が恋人同士だとみんなが噂してると言うんだ。」
学業の噂話かと思ったが、そこに来たか…と私は石田の話を聞くしかない。
「もちろんそんなはずないと俺は信じてるだが、宇喜多君が知っているということは、みんなそう思っているんじゃないかって…まあ成績のよいお前たちをやっかんでる連中の話だとおもうが、一応お前に話しておこうとおもってな。」
「ありがとう。俺たちは二人で優秀な教授の下で研究室にこもってる。いつもいっしょで、卒業したら同じ学校の大学院をうけるつもりだ。確かに周りが誤解するような状況だが、佐和ちゃんを裏切るようなことは、断じてしていない。おりをみて佐和ちゃんに話す。だからおれを信じてくれ。」
「わかった。余計なこと言って悪かった。」
「いや、ありがとう。おまえは本当にいいやつだな。」
「いやーもうおまえを殴るのはごめんこうむりたいだけだ。殴られたおまえに言うのはなんだが、けっこう殴るのも痛いんだ。一発で良かったのに佐和ちゃんが余計なこと言うからさ…おまけにおまえまで、なにをとちくるったのかもう一発とかいうだろ。手加減したらおかしいし、あれは今だから言う、一発でよかった。いつか佐和ちゃんに言ってやろうって思ってるよ。よけいなこといいやがってってな。ハハハハ」
「俺は絶対手加減すると思ったよ。まさかあんな強烈だとは思わなかった。めまいがした。2発めばもう死ぬかと思った。三発めは意識一瞬なくした。」
「そうか、やっぱり殴られる方がつらいな。しかしさ舞の笑う顔見ると、そんなこと忘れるよ。よく生まれてきてくれたって心から思うよ。とにかく受験勉強がんばってな。」
「ありがとう。」
二人は笑った。しかし電話を切ったあと冷静に考えると笑い事じゃない。
石田の耳にはいるのなら、佐和子の耳に入る可能性がある。何も言わないでいるのは、逆に誤解される。早めに佐和ちゃんに会って話さなければいけない。
ジョンレノンが逝ってしまったその年のクリスマス。
ジョンレノンの名曲、ハッピークリスマスが流れる・・・・そんな1980年の12月だった。
私と佐和子は久しぶりに会った。
「石田君と志摩ちゃんからクリスマスプレゼントが届いたわよ。」
「なに?」
「2人の演奏みたいよ。一緒に聞こう!」
カセットテープを入れてスイッチオンイヤホンを片方をわたされて二人で聞いた。
石田と志摩ちゃんが演奏するジョン・レノンンの「ハッピークリスマス」だ。
「ハッピークリスマスなのになんか寂しいわね。」
ジョンの美しいボーカルはいつでもレコードで聞けるが、もうライブで聞くことはできない。
そんななか佐和子が自分の将来について語り始めた。
「私は正式にあなたのお姉さんのA社を応募することに決めたわよ。できたらフランス支社勤務希望で。」
「そうなんだ・・・内定もらうとやっぱり5年は向こうにいるの?」
「そうね・・・勝手なこと言ってごめんなさい。」
「おれも、H大学院の試験受ける。もし受かったらそこで2年、それから研修生としてしばらく残って納得いくまで研究したいんだ。」
「結婚は5年後かな・・・」
「それとね佐和ちゃんにいっておかなければならないんだけと、実はね大学院まだうかったわけじゃないからあまり大きなこと言えないんだけと、今おれには研究室に一緒に一つの研究課題をおこなっているバートナーがいる。優秀な教授の上杉教授の下についてずっと研究をおこなっている。その先生がH大学の大学院に行くので私たちはその大学院を目指している。そのバートナーば女性なんだ。」
さすがに佐和子の顔色が変わった。
「もちろんその子には恋愛感情はない。朝まで研究室に一緒にいることもあるが、女性と思うことはない。だけとこれから何年か一緒に研究室に入り互いの夢を託す間柄になる。」
佐和子は取り乱すことはないがやはり尋常じゃなくなった。
「でも、これから恋愛感情がうまれることだってあるでしょ?ていうかあなたになくても、今だって向こうはそういう気持ちがあるかもしれないわ。」
「そればありえないんだ。」
「そんなこと言いきれるの?」
それから私はすべてを打ち明けた。彼女が性不一致障害者であること、それから私たちのことが噂になっていること、その噂を大学の後輩で石田の店でチーフをしている宇喜多が聞きつけ、心配して石田に話したこと。石田には詳しい話はしなかったが、何も言わずに「おまえを信じる」といってくれたこと。そんなことまでつつみかくさずはなした。
「うん、私も石田君の言うようにあなたを信じる。でも私はフランスに行くことになるかもしれない。そうなったとき不安になるかもしれない。できたらその直江さんに会わせてほしい。」
「わかった。彼女も協力してくれるはず。今すぐの方がいい?」
「それは、あなたが大学院が決まったらでいい。決まらなかったらそんなことで焼きもち焼くのばかばかしいもの。」
メリーメリークリスマス そして ハッピーニューイヤー
ジョンレノンの歌とともに1980年がおわり、新しい年が来る。
Michelle (ミッシェル)・・・② フランスへ
新しい年を迎えすぐまた春が訪れる。私は今までの人生の中で一番勉強に集中した。もう一度同じことをやれと言われても絶対できないといえるくらいの集中力だった。自分でも信じられないが念願のH大学院に合格した。うれしかった。おそらく上杉教授の強いコネクションがあったからかもしれない。それから時を同じくして佐和子はA社の内定をもらった。しかもフランス支社配属だ。佐和子のことだから大丈夫だと思ったが、いざ決まってみるとフランスという遠距離恋愛がはじまるのかと、寂しさが押し寄せてくる。
そう、佐和子との約束、佐和子を直江に会わせなければならない。直江のカミングアウト以来、通じ合うものができたが、しばらく受験勉強もあり、あれから直江とも物理の話以外していない。だから自分の彼女に会ってもらう話など切り出しずらかった。私が研究室にひとりでいると直江が入ってきた。「合格おめでとう!」そう彼女から言ってくれた。
「ありがとう。直江さんもおめでとう。」
いうまでもなく直江も一緒に合格している。それだけいうと直江は、自分の研究をはじめる。彼女へのお願いは今頼もう・・・私は思い切って話を切り出すことをきめた。
私はコーヒーを入れながら少し緊張していた。
「あ・・そうだ・・・コーヒー飲みます?」
「いえ、いりません。ご自分の分だけつくって私に気にせずお飲みください。」
あっさり拒否されると次が話しずらい…
「あのさ~~直江さん話があるんだけど…」
「私の彼女に君のこと話したんだ。そしたら会ってみたいって言うんだ。時間つくってもらえないかな?」すると直江は微笑みながら、
「もちろんかまいません。あなたと私が、バートナー関係を続けるには彼女の理解が不可欠です。何なりと協力します。」
「ありがとう。よろしくお願いいたします。」
「ところで、コーヒーいれてますがそれ豆を挽くタイプのコーヒーですよ。」
ああ・・・私はインスタントコーヒーと間違えて飲みそうになった。
一人でわらっってしまったが彼女はニコリともしない・・・・
直江が佐和子と会うことを快く引き受けてくれたので、私たち3人はレストランで食事をしながら会うことにした。ビートルズのBGM が流れるおしゃれな店だ。私が二人を紹介した。
「こちらは私の 彼女 の佐和子さん そして こちらが 私の研究室のパートナー の直江さん。」
二人は笑顔で会釈をし た。
まずは佐和子が口を開いた。
「二人はどんな勉強してるんですか?」
「何て説明したらいいかな つまりね僕たちは相対性理論について研究してるんだ。」
筆者の独り言・・・・・ここから先いろいろ書き綴りたいのだが、 筆者は 物理学の知識は全くない。高校時代の物理といえば 赤点だったので 、気のきいた 文字を綴ることができない。 即席で 相対性理論 なる本を図書館で借りてきて 、そこに書いてある言葉を引用してこの物語の 盛り上げようと 試みたが、 その本の内容が全く理解できない。 困った挙句に 書いているのか 今の文章である。
「 なんか 悔しいけど何言ってるのか全然わかんない。」
佐和子が がそう言った。
私は言う・・・
「何言ってんだよ 俺なんかより、 さわちゃんはフランス語を話せるじゃない。英語だってわかんないのに ・・・」
フランス語と聞いて 突然直江が 目を光らせる 。
「佐和子さんはフランス語を勉強してらっしゃるんですか ?」
「私実は 来年の春から A社のフランス支社に勤めるんです 。」
すると直江がますます目を光らせた。
「私実は 高校生まで フランスに住んでいたんです 。知ってますA社の近くに住んでましたから。」
これには 佐和子の方が 驚いた
「 フランス語喋れるんですか ?」
「はい 日本語より自信があります。」
すると直江は私たちに向かって フランス語を喋り始めた、すると 佐和子はフランス語で返す。
「何々?」と私が中に入ろうとしても二人は私を無視して話している。
いったいなにをはなしているのだろうか?何を話しても分からない それから おそらく直江が フランス語で冗談を言ったのだろう 佐和子 が 笑い出した。私一人かやのそとだ。私はたまりかねて
「オーイ何言ってんのか俺には全然わかんないよ。」
「 あーごめんごめん。」
佐和子は笑いながら話し始めた。
「昨日 研究室で あなたが 研究に夢中になってて コーヒー曳くコーヒー豆にお湯入れて飲もうとした話。それを聞いて大笑いしたのよ。」
「あ~~ この間の私の失敗ね。忘れていたことなのに変な時に思い出すなあ・・・」
直江は不思議だ。その時そばにいてその間違えに気づき指摘しておいて、何も反応しなかった 。
しかし今頃になって フランス語で 佐和子に笑い話としてお話して 笑っている。 信じられない 、直江の不思議な側面をまた垣間見ることができた。そう 3人で顔を合わせて本当によかった 私にとって直江は 同じ研究をしていく パートナーで、佐和子にとって直江は行ったことのないフランスを最もよく知るアドバイザーだった。私と佐和子にとってますますかけがえのない人となる。
Michelle (ミッシェル)・・・③ 旅立ち
そして次の日石田から電話が来る。おそらく佐和子が志摩に大学院合格の話が石田に伝わったのだろう。
「大学院合格おめでとう!佐和ちゃんはA社に内定したって聞いた。本当におめでとう。それでさ、ささやかながらおれたちから二人にお祝いをしたいんだ。おれたち二人が早番か休みの日いつでもいい、都合のいいときに2人でうちに来てくれよ。」
もちろん2つ返事でOKした。4人の都合を合わせてまた4人が顔を合わせた。私は佐和子と待ち合わせて石田の家に向かった。実は佐和子とあうのはその日が1か月ぶりくらいだ。
「まいちゃ~~ん」
家に入るなりすぐ舞ちゃんがよちよち歩きで迎えに来てくれた。
「舞ちゃんのお出迎えとはすごいなあ~」
この前来た時とは違って舞ちゃんは自由にお部屋を駆け巡れる。
「舞~~パパとママのお友達・・・」
「ぱ~~」
「何かしゃべったよ。」
「さあ、あがってあがって・・・今日は私の料理を食べて行ってね。」
4人が座ると石田があらためてしゃべり始めた。
「佐和ちゃん入社おめでとう!こいつの姉貴の会社なんだってね。ほんとうにおめでとう!それとお前が、こんなに勉強するなんて俺は信じられないよ。それも一流大学の大学院だろ。びっくりですね。じゃあ乾杯しよう!」
「かんぱ~~い!!」
お酒も久しぶりだ。
「今日は,ぜひ2人の新曲を披露してほしいなあ・・・」
いわなくてもすでに用意していたようだ。ギターとキーボードを持ってくる。
「何うたうの?」
「♪ Imagine ♪」
「イマジンか・・・」 この曲はじ~~んときた。ジーンと来るのはジョンの死を思い出すからだ。
「すごいね!いつ聞いてもすごい演奏だよ。」
ジョンが歌う姿を思い出しながらしんみりと聞いていた。歌い終わって拍手をするのだが、みんなおもいおもいの思い入れがあり少しだけ沈黙が続いた・・・・
「あの実は私・・・A社のフランス支社に配属になりました。もともとそれを希望したんだけど・・・」
「えっ??そうなの?」
「で・・・どれくらいフランスに行ってるの?」
「5年で戻ってこれると思います・・・」
「いっちゃうのかやっぱり……」
「おまえはどうするんだよ?」
「言っただろ、大学院だって北海道に行く。2年大学院生活であとは研究室に残れればいいかなあって思っている。」
「おまえは北海道か…」
それでふたりはどうするの?」
「 もちろん 別々の道ではあるけど 5年経ったら 結婚する 。」
「本当 ?」
「この前はみんなに心配をかけました。」
「本当に心配しちゃったんだから・・・」
「申し訳ない・・・」
私と佐和子は二人に頭を下げた。
「 そう 5年で 互いの夢を 叶えられればいいんだけどね。」
「 結婚式するから ・・・」
「私たちも呼んでくれんでしょ?」
「 当たり前じゃん 仲人はオーナー夫妻にお願いしたいんだ 。それと司会は大谷さん に・・・」
「そこまで決めてるのか?」
「で佐和ちゃん いつフランスに旅立つんだい?」
「3月卒業したら もう行くつもり 会社の方で準備してくれてるから 、そうか 一人で行くのか・・・」
「 それがね一人じゃないの 実は 彼 の研究室のお友達が偶然 高校生まで フランスに住んでたんだって、 びっくりしちゃった 。フランス語ペラペラなんだけど 春休み 実家に帰るらしいんだけど。ちょうどいいから一緒に行こうって・・・」
すると志摩が不思議そうに・・・
「 どういうこと ?彼の友達って男の子でしょ?」
「 いや女の子なんだ 。」
「えっ・・・ということは 研究室で そのフランスから来た女の子とずっとペアになって研究してきたってこと?それで2人でH大学の大学院に 一緒に 大学院に通うの? それってどういう仲なのよ 。」
「友達だよ・・・ さわちゃんとだって友達なんだから 何の問題もないだろ。」
志摩は納得がいかないような顔をしている。無理はないそう疑うのが普通だ。そこで石田が いう。
「何にも心配することないだろう 。大丈夫だって 、でも こいつだって俺のパンチ3発もくらいたくないって・・・」
実はさー ほらお前の後輩の宇喜多君、また俺のところに来たんだ お前が同じ研究室の女の子がと二人っきりで同じ大学院に行くって 、いつもふたりで 研究室にいるし、あの二人は間違いなく 付き合ってる 。そう言ってきたんだよ。 志摩もそれを聞いて すごい不安になっちゃってさ 、だから変な事言っちゃったけど さ、佐和ちゃんもその 研究室の女の子と 友達になったって聞いて 安心したよ。 変な疑いしてたわけじゃないんだけど 宇喜多君だって 人の陰口言う子じゃないから、・・・誤解してました。」
「本当に誤解だから安心して。」
佐和子は言った、親友 の石田達に性不一致障害の話をしようかと思ったが、あまり言いふらすと宇喜多の耳に入るのもいやなので黙っていることにした。
する と舞ちゃんが「 ダダ・・」と言いながら パチパチ手を叩いた 。まるで私たちのことを祝福するかのように・・・・
「じゃあ、みんながまた揃ったらここでまた会おうね。」
「じゃあ、4人の前途を祝して乾杯しよう!」
Michelle (ミッシェル)・・・④ 松田聖子に似ている
さて 私も北海道に行くので 姉さんとの二人暮らしも これで 終わる。 姉にに改めてお礼を言わなくちゃいけない。佐和子も来るか?と誘った、奇妙な関係で 佐和子にとっては 同じ会社の先輩後輩になるのだから 、フランスに行っても、お別れではなくよろしくお願いしますになる のでお姉さんとの距離は近づくことになる。それが私たちにとっては安心だ。そういうこともあって私は姉と2人で飲んだ。
今まで散々 迷惑をかけ続けてきた 姉に 改めて お礼の言葉を 言いたかった 。家で一緒にお酒を飲むのに、 まさか姉の買ってきたビールを 飲みながらお礼を言うのも 失礼な話なので、 今日は しこたま缶ビールを買ってきて、 姉の帰り を待つ。
「姉ちゃんおかえり・・・」
私は笑顔で出迎えて ちょっと飲まないかと 誘ってみた 。
「ありがとう。そうそう 大学院入学のお祝いをしなくっちゃね。」
「いいよ、この前前借したじゃない。」
「ハハハ、何言ってるの私社会人よ。」
「 いやいつも いつもたから 。今日はおれの方でが買ってきたよ。お祝くれるんだったら現金でもらうから。」
姉は楽しそうに早速 1本目のビールを飲み始めた 。
「佐和子さんね フランス支社に配属でしょ かなり期待してるわよみんな、 私もね本社のフランス支社担当になったからおそらく年に2回は 出張があるんじゃないかしら 。私来年からフランスに 行けるかもね、 私がたまに 佐和子さんの様子見に行ったら 迷惑 ?」
「迷惑なわけないじゃん すごいありがたいよ 。」
そう良かった。会社での佐和子さんのことは、任せておいてね。 突然外国に行くんで本人は 戸惑いもあると思うけど ・・」
「それがさあ 驚いたことに 、例の直江さんって 高校まで フランスに住んでたんだよ。 本人曰く 「私は日本よりフランス語の方が得意です。」だって、 私はお姉さんに 直江と佐和子を会わせたことをことを話した。
「 ちょっとショックだよ 。直江さんて俺と話す時は 全く冗談も言わないし、 プライベートのことは一切話さないのに、佐和ちゃんと話した時は フランス語でペラペラペラペラ、 俺のやった失敗まで フランス語にして 二人で笑ってるんだよ 。日本語で話す直江さんとフランス語を話す直江さんとではで、全く別人みたいだよ。 それでね二人は意気投合して 3月に直江さんが佐和ちゃんが旅たつのと同時に、フランスに帰省するらしい。一緒に帰ろうって 誘ったらしいんだ 。さわちゃんにとっては 不慣れな 行ったこともない国の道案内をしてくれるわけだから 、仲良くなるわけだよね。」
「なるほどね・・・
ところでさー さわちゃんって 松田聖子に似てない?」
「ああ・・ たま に言われるって言ってたけど。そうおれの好きな女性ナンバー1とナンバー2の女性だからね。それが何 ??」
「なんとなくそう思っただけ・・・ごめん変なこと言って。」
Michelle (ミッシェル)・・・④ マグカップ
北海道に行く前に姉と飲んでから、そうだもう1人、いや2人大事な人を忘れている。私たちが出かける前に どうしても 挨拶をしに行かなければいけない人がいる。そう・・・ オーナー夫婦だ。私達が出会い 私たちが社会人に 旅立つまで 一番お世話になった 人だ。私達はオーナーと奥さんが 二人揃っている時間に 出かけた。 二人は 私たちの顔を見ると とても喜んだ。
「本当におめでとう 夢を叶えちゃうなんて君達は本当に素晴らしい、」
「 いや夢を叶えるのはまだなんですよ。これから 5年後に 二人 が夢に向かって進んでいたら その時褒めてください。」
「 分かった。君たちは 私たちの誇りだと思ってる。」
「ありがとうございます 実はオーナー 今日は お願いがあって参りました。」
「 私達にお願い? できることなら何でもやりますよ。」
「 5年 だって 私たちが 胸を張って もう一度ここに来れる時が来たら、私たち結婚します。その時は オーナー と 奥さんに 結婚式の 仲人をしていただきたいと思います。 お引き受けくださるでしょう か?」
「そうか、結婚の約束しているんだ。もちろん喜んで引き受けるよ。君たちは このお店の 名誉社員として 永久に名前を残そうと思っている。」
「そんなお恥ずかしいですよ 。」これは佐和子と2人で 決めていた 先に オーナー夫妻に仲人お願いしておけば 途中でくじけそうになっても みんなと約束したんだからさ 夢に向かって 進んでいけるだろう そう思ったからだ 。
それから奥さんがきれいなリボンをつけた2つの包みを持ってきた。
「これ私たちからの心ばかりのプレゼント。」
「うわあうれしい!」
「おそろいのマグカップ、荷物になると思うけど持っててね。」
「ありがとうございます。あけていいですが?今あけないと2つそろって見るのが、5年後になっちゃうから。」
「そんな大げさなものじゃないけど気持ちは込めている。ここであけて。」
ドキドキしながら私たちは包みを開けた。
「かわいい!イブサンローランですね。」
ブルーとピンクのすてきなマグカップ。フランスのデザイナーイブサンローランのデザインだ。
「ありがとうございます。」
私たちは何も入っていないマグカップで乾杯した。
いつか夢が叶ったらおいしいコーヒーで乾杯しようね。
ここで注釈を ・・・仲人とは?すっかり聞かなくなった結婚式の仲人、この当時 結婚式というと仲人を立てるのは 常識で二人が理想とする夫婦に 仲人をお願いするものだった。と言っても たりの両方を知る 熟年の 夫婦など そうはいないものだ なので 新郎の会社の 上司などにお願いすることが一般的だった 今思うと 変な習慣だが 当時はそれが当たり前だ。
それから直江と 佐和子はフランスへと旅立った。 私は 姉と一緒に空港まで見送りに行った。姉は佐和子の会社の上司として、
「 直江さんよろしくお願いします 。」
「わかりました できたら 私がいない間に 研究を 少し続けていただけると 助かります。」
「 わかった少しでも続けておくよ。」
直江は私には相変わらず研究の話しかしない。
「佐和子さん、落ち着いたら私もそちらに出張に行きますから、いってらっしゃい!」
私は佐和子に声をかけることはしなかった。まさかここで
「愛してるよ!」とは言えない。心の中で叫んだ。すると佐和子も私に目配せをした。言葉はなくとも私たちは通じ合っている。
それじゃあ出発しましょうか・・・ 直江は佐和子をエスコートしていく。 飛行機にも 慣れてるとみえ とても 頼もしかった。 私と姉は2人が、飛行機に向かう 後ろ姿 見送った。 直江は 女性にしては 身長が 高い方なので、後ろから見ると 素敵な恋人同士に見えた。なんか 焼けてくる。そしてもう一度振り返り 私達に手を振る 佐和子 確かに 松田聖子に似てる・・・




