COME TOGETHER
SHE LOVES YOU だけで 最初は終わらせるつもりの小説がここまで書いてしまった。最終章は、ハッピーエンドにするのか悲しい別れにするのか・・・筆者自身まだ決めていない。二人の恋の行方、いずれにしても結論を出す時が来た。揺れ動く二人の愛 最終章はいかに・・・・続きをお読みください。
COME TOGETHER…① 一緒にやろうぜ!
時は流れた・・・・やり手の店長は事業をどんどん拡大していって、お店は3号店までできてきた。社員は店長夫妻と石田夫妻と4人いる。そして今一番の戦力は大谷チーフを中心とするママさんパワーだ。私も石田もチーフは、主婦の中から育成した。ママさんチーフが3人各店舗を切り盛りしている。
「4号店は、ハンバーガーショップじゃなくて保育所にするか?」店長は真面目な顔でいう。
「保育士の免許を持っている志摩ちゃんがいるからね。」
またやればやるほど評価してくれるシステムに新大学生がチーフ目指してがんばる。そう2年前の私を見ているようだ。少し寂しいが私と佐和子はこの店では少しずつ存在感が薄くなっていく。主婦チーフが帰った後の時間、3時間程度の勤務にしてもらう。
大学は忙しかった。3年生になると実習があり研究室に夜中までこもる日もあった。そうなると佐和子と会う時間も極端に少なくなった。
石田と志摩のあいだにはかわいい女の子が生まれた。石田は店長代行から店長に昇格した。みなそれぞれの人生がある。そんなある日石田から電話が来た。彼の声を聞くのは別に珍しくない。仕事ではしょっちゅう話をしている。
「なあ、今度さ4人で飯でも食わないか?といってもむすめがいるからうちに来てほしいのだけど、なあ佐和ちゃんと二人でうちに遊びに来いよ。5時くらいに一日くらい集まれるだろう?」
「わかった。佐和ちゃんに聞いておくよ。」
皆のスケージュールが決まると私たちは石田夫妻の家に行く。二人は店長から社宅をもらい2LDKの家に住んでいる。
久しぶりに4人が集まる、いや5人が集まった。」
「舞ちゃ~~~ん!!パパとママのお友達来たよ。」
舞・・・・石田と志摩の一粒種だ。舞ちゃんのかわいい顔を見てあらためてホッとする。目のあたりが石田にそっくりだ。こだわっているわけではないがあまりにもそっくりなのでなんの疑いようもない。神様は私たちを明るい方向に導いてくれる。なによりも新しい命の誕生を見るのはうれしい。
「今日は、わたくし特製の餃子を皆さんに振舞います。」佐和子が言う
「また??餃子以外のもの作れないのかよ・・・」私が言うとみんなわらった。志摩ちゃんが一番幸せそうだ。
「それじゃあ、4人のいや舞を入れて5人の再会に乾杯しよう!」
石田がビールを片手に乾杯の音頭を取る。
「かんぱーい!!」
「そうそう、二人に聞いてほしいんだ。俺たちの歌を・・・」
「LET IT BE 以外にもレパートリー増やしたの?」
石田はギターをもち、志摩ちゃんはキーボードの前に座った。
♪ COME TOGETHER ♪
志摩ちゃんはポールのベースラインをキーボードで弾き。石田がギターで歌う。舞ちゃんはパパとママの演奏を聴いている。音楽はわからないがビートルズは聞きつくしている。レコードと全く同じように聞こえてくる。私たちは思わず感動のあまり、拍手をした。
COME TOGETHER 一緒にやろうぜ!
そうこの前のレットイットビーはピアノ中心だったのに今回の選曲は、また違うビートルズをコピーしている。つまりは私たちへのメッセージだろう。 COME TOGETHER 一緒にやろうぜ!
最近店に入らなくなった、私たちに寂しさを感じてまた一緒にやろう!と言っているのがわかる。
そうこのカムトウゲザーは、ジョンレノンの名曲で。解散前に出したアルバムで、ジョンレノンの楽曲。気持ちがバラバラになっていくメンバーにCOME TOGETHER(一緒にやろぷぜ!)と呼び掛けている歌だ。余談だが筆者はこの「カム・トゥゲザー」私が初めてラジオでこの歌を聞いたときこんなかっこいい歌がこの世の中の存在するのかと感動した。リンゴ・スターのドラムが大好きだ。
歌い終わって石田は語りだす。
「夢なのよ。いつか自分のお店を持ちたい。ビートルズの生演奏が聞けるお店。」
「石田君と志摩ちゃんの夢は自分のお店を持つことなのね。」
「いいね!こんな素晴らしい音楽を聞きながらディナーか・・・贅沢だなあ。
まずい餃子だっておいしくなっちゃうよね。」
「まずいとか言っているわりには、お前ずいぶん食っているじゃないか。」
「だから演奏が素晴らしいからだよ。」 「なんだかんだいっても、佐和子の餃子おいしいね。素直に認めなさい~~」
たしかに演奏は抜群だ。二人の夢はかなうかもしれない。 「でも今のお店だって、できるんじゃない?例えばさ、夜の8時からディナータイムとか作って、演奏してみたらどうなの?」
「実はそれも考えてね、オーナーに提案してみた。やっぱり本社の許可が必要だって許可がでるか?ちょっとむりじゃないかなって・・・」 「さすがだな、俺が考えつくことはすでに実行にうつしているのだね。」
「なんかうらやましいなあ~好きな人といっしょに仕事できて・・・」 佐和子がしみじみと言った。私も 「そこいくとおれたち・・・今は会う時間も少なくなってきた。」 「でも卒業したら2人は結婚するのだろ。」 「そのつもりだったけどね。」 「だった?ってなんで過去形なのよ。」
私はそんなつもりはなかったのだけど「だった」と過去形にしていた。あわてて訂正する。 「だったじゃない・・そのつもりだよ。」
「そしたら、なんだろうこれからの人生設計とかあるだろう?そういうのを二人で話し合わないのか?」
「今、大学のレポートで頭いっぱいでそんなこと考えてなかった。」
「いそがしいんだな・・・佐和ちゃんは?」
「うん~~私もね、実は英語のほかにフランス語の勉強をしている。今就職考えているところは、第2外国語が必須なの。私の夢は海外の支社に就職することかな?」
「外国行っちゃうの?それじゃあ、お前もついて行けよ。」
石田が私をけしかける。私は佐和子にそれとなくは聞いていたが、どこまで本気で考えているのかは知らなかった。私が佐和子と一緒に外国に行く?英語が嫌いな私が海外など考えられない。
「おれは、大学院に行きたい。どうしても研究したいことがある。まだ中途半端なのだ。自分が納得いくまで勉強したい。だから大学院で学びたい。卒業はもう3年以上先になるかもしれない。」 そういうとせかすように石田が言う。
「3年先?それじゃあ結婚はいつになるんだよ。」 「そういわれても、俺は親の援助がなければ生きていけない。石田たちのようにはいかないよ。」 「ここで、バイトしながら勉強するとか、いくらだって方法はあるだろ?及ばずながら俺たちもできることは協力するよ。」
佐和子がそこで口を開いた。 「石田君、いま私たちはお互いの夢に向かって別々の道を歩こうとしているの・・・・」「君たちは2人一緒じゃないと夢はかなえられない・・・でもおれたちは2人一緒では夢はかなえられないんだ。」 そこまでいうと、4人ともだまってしまった・・・・すると突然志摩が半べそかくように
「じゃあ、あなたたち二人はどうなるの?」
「それぞれの道を歩いていくよそこから先はわからない・・・」 「佐和ちゃん!なんで外国なんかに行くんだよ・・・おまえが行くなって言えよ!」
「おれに佐和ちゃんの夢をこわす権利はない。」
「かっこをつけている場合かよ?おれたち4人いつもいっしょだっただろ。」
「ビートルズだって解散したんだ。」
志摩が泣き出した・・・
「佐和ちゃんごめん!本当にごめん!私のことを怒っているんでしょ?佐和ちゃんは大事な友達なのに・・・私が彼を誘った・・・誘ったのは彼じゃない。私なのよ・・・私はひどい女なのに何も言わなかった。ずっと友達でいてくれた。いつか謝まらなくちゃって思ってたの・・・ごめんなさい・・・私謝まるから外国になんかいかないで!」
「志摩ちゃん何を言っているの、過去の話をほじくらないの。その話を持ち出せば4人とも傷つくの。もう忘れたはずよ。愛らしい舞ちゃんのおかげでみんな忘れたことなのよ。確かに私海外にでて働きたいと言った。でも彼と別れるなんて言っていないよ。」
佐和子に続いて石田が言う。
「そうだよ、別れるなんて言ってないのに俺たちが勝手に早とちりした。おれたちが悪かった。」
「なあ俺たちの話より、今日は石田と志摩ちゃんと舞ちゃんの話をじっくり聞きたいね。」
そうできたら話題を変えたい。石田は次なる話を始めた。 「そう?実はね今おれたちが考えているのがさ・・・・さっきのお店の生演奏ともう一つあるんだ。これはすぐ実行に移せると思う。「宅配サービス」つまりハンバーガーの注文受けて出前するの。」
「出前サービス?」
「これさ、志摩ちゃんの発案なのだけどね、近隣の家にハンバーガーを届けるのさ。1000円以上限定で。1号店もぜひやってほしいのだが、明日のマネージャーミーティングでオーナーに提案してみるけどね。」
そう今や石田は店長に昇格しているので区別するために店長はオーナーと呼ぶことにしている。
「出前はどうやって届けるの?」
バイクを改造してハンバーガーを積んでお届けするようにする。
「なるほど・・・」
「だけど・・・当然人件費はあがるよね。採算とれるかな?
「雨の日なんか売り上げは低くなるだろう?でもその分宅配の売り上げはあがるはずだ。」
固定客をつかめば道順だって頭に入るし効率よくなる。
それと1号店から2号店までバイクなら10分だろ、うまく協力しあえばさらに効率が上がる。」
これでまた二人は店長いや・・・オーナーからのうけが一段と上がる。
筆者の独り言・・・・
そのころ出前と言えばラーメン、そば、すしの時代だった。その宅配サービスにめをつけた。今流行の宅配ピザはその頃ない。今は、当たり前になっている宅配「ピザ」、ファーストフードでも売り上げアップのため、宅配をやりだす店舗がでてきたころの話だ。筆者も二十代の頃、バイクに乗ってハンバーガーを宅配した覚えがある。
石田の家を出て私と佐和子は歩いて話しながら帰ることにした。しかし二人になるとまた口数が減った。
「ねえ?佐和ちゃん?コーヒーでも飲まない?」
「そうだね、私あなたと話がしたい。」
今日4人で会って楽しかった。しかし寂しくもあった。その寂しさをお互いに共感していた。それに「宅配」の話で盛り上がったけど。お店のことは私たちめっきり影が薄くなった。どんどん私たちはおいて行かれるような気がする。互いに話がしたいというのはお互い同じ思いの寂しさを感じていたからかもしれない。
喫茶店でコーヒーを飲む。
「石田と志摩ちゃんは幸せだよね。だって二人には舞ちゃんがいる。同じ仕事で夢を語れる。今日の宅配の話だって常に前向きに仕事に取り組むあらわれだ。そして音楽という同じ趣味を持っている。趣味を超えて新しい仕事にしようと膨大な夢を見ている。夢をかなえるためには、2人一緒でなければならない。」
それにひきかえ私たちには何があるのだろうか?
私たちは、同じ仕事をしているのには違いないが、昔のようにがむしゃらに突っ走るという情熱はない。とくに趣味が同じわけではない。私たちはビートルズのレコードを聴くという趣味だけだ。いま私の目標は学校の専門科目を履修すること。佐和ちゃんは第2外国語を勉強すること。前途有望な2人とばらばらの方向性で進んでいく2人では比べる対象にすらならない。
「佐和ちゃん、海外に行くの?行くとしたらどれくらい行っているの?」
「それもわからないんだ。どうしていいかわからない。海外に行くの?そう言ったときにあなたに『行かないでくれ!』って言われたかったのかもしれない・・・」
「おれも、大学院行くといったときに、就職してほしい!そう言ってほしかったかもしれない・・・」
「俺に、佐和ちゃんの夢を捨てさせる権利なはい。」
「そう・・・私もあなたの自由を束縛する権利はない。」
「でもさ・・・・」私が「でもさ」と言いかけると・・・・
「そう・・・・『でもさ』なの・・・・おそらく同じことを言おうとしていると思う。」
「じゃあ俺が言うね・・・・でもさ・・・俺たちがここまで来たのはみんなのおかげだ。オーナーにかわいがってもらった。ここまでしてもらった恩がある。」
「そう、私も店長にも奥さんにも感謝しているわ。仕事だけじゃないの。あなたのことも相談にのってもらった。本当は志摩ちゃんたちよりも私たちのほうがオーナーに恩返しをしなくちゃいけないのよね。」 「そうなんだよ・・・・それにやっぱり、石田と志摩ちゃんとは傷ついたり、傷つけあったりした。つらい思いをした。ここまでみんなに迷惑をかけてきたんだよね。おれたち別に嫌いになったわけじゃないのだから、なんとか二人でいられる接点を見つけたいよね。」
「そう・・・私も・・・同じこと思っていた。」
「夢に向かって生きていくのと、君を愛すること別々に考えている。『夢と愛』を両立させるってむずかしいなあ・・・」
「そうさっきの石田君達の COME TOGETHER のメッセージ強烈だったな。」
「とにかく結論を急ぐことはないさ。これからもよろしく…」
「こちらこそ・・・・」
「愛している・・」
「私もあなたを愛している‥‥」
COME TOGETHER…② 憧れのお姉さん
それから私を待っていたのは前期試験だった。昨年までは試験中でも通常と同じように勤務していた。今年からはそうはいかない。試験勉強のため出勤を半分してほしいと願い出ると、店長の奥さんはあっさり「いいわよ!」と言ってくれた。いいわよと言ってくれるのはうれしいが、私がいなくても店が動くと思うと寂しい気もする。
私は勉強した。大学生だから当たり前だが自分でも信じられなかった。そう一つのことにわき目もふらず集中することは私がチーフからマネージャーに昇りつめるとき、いつのまにか自然に身についていたことなのかもしれない。時期をずらして今度は佐和子の試験期間に入った。その時は私が店に入った。彼女の試験が終わるとやっぱり会いたかった。
「電話で近いうちに会わないかと伝える。」
「ねえ?私お姉さんにお会いしたいのだけど・・・」
「なんで?」
「わからないけど・・・すっごく素敵な人のような気がする。」
「そんなことないって・・・」
「だって、お姉さんA社に就職したのでしょう?A社は一流企業よ。エリートよ。私あこがれているんだ。私もA社に入りたい。無理だけどね・・・ねえ?お姉さんに会わせて?」
「いいよ・・・じゃあ姉ちゃんの都合聞いておくよ。」
私たちの部屋に佐和ちゃんを呼ぶだけだから都合つけるのはそう大変ではない。姉は逆に喜んだ。
「私も会いたかったの。私から言ったらあんたがいまだに姉に甘えている子どもだとおもわれちゃうから遠慮していたのよ。」 すぐ予定をあわせて3人でお酒を飲みながら話をすることにした。
佐和子が私達の家に来た。昔からの知人を訪ねるかのように姉と佐和子はすぐ意気投合して話は弾んだ。
「私お姉さんの会社志望なのです。いろいろ聞いてもいいですか?」
私は二人の会話をずっと聞いていた。A社には佐和ちゃんの大学からも毎年採用されているらしい。
次に海外支社の話を熱心に聞いていた。そこにいくには英語とフランス語の両方に堪能であることが条件のようだ。
佐和子は目を輝かせて姉の話を聞いている。
「ただ、フランスに転勤になったら5年は日本に帰れないわよ。」
私はちょっとドキッとした5年は帰れない・・・・
まあ佐和子がA社に入社できるかどうかも決まっていないのにそんな心配は無用だろう。
佐和子は姉とじっくり話をして満足げに帰っていった。考えてみたら私との話は一切しなかった。佐和子が帰ったあとも姉と飲んだ。
「あの子本気だわ・・・・」
「本気?」
「私よりも、将来の志が高い・・・」
「でも、入社できるかわからないだろ?」
「いや・・・・あの子の目は本気だわ。ああいう子はうちの会社絶対採用するの。だって・・・自分で言うのもなんだけど私 に似ているもの。」
「フランスに5年行くことになるの?」
「わからないけど・・・・でも彼女 5年帰れない と言っても特に驚かなかったよ。 それなりの覚悟があるって事じゃない?」
「俺たちどうしたらいいの?」
「心配する前に、あんたは彼女とどうしたいの?結婚したいの?」
「それがさあ・・最近わからなくて・・・・今研究室が楽しくて・・・次は大学院行きたい。実は、おれさあ大学院受験しようかと思っている、でもさ・・・親父やおふくろに頼めないよね。」
「そんなことないと思うよ。勉強するんだったら賛成すると思うわよ。遊びに大学院行くならだめだっていうけど、やる気があるのならだれも反対しないはず。金銭的なことなら私が援助してもいいわよ。」
「お姉ちゃんに援助してもらうわけにいかないけどね 。佐和ちゃんなんていうかな?相談しようかと思っていたのだけど・・・海外勤務でしょ? 逆にいいのかも。」 「あんたが勉強なんてありえなかったけど…お父さんもお母さんも今の話聞いたら喜ぶよ。」
「おれ今までみんなに支えられて生きてきた。みんなに感謝してる。でもやっぱり一番俺をささえてくれたのは姉ちゃんだ。それと…恋人は別れてしまえば他人だけど…姉ちゃんは何があっても姉ちゃんのままだからね。」 「恋人と別れる?あんたそんなことを考えているの?」 「ものの例えだよ。」
「まあ、とにかく佐和ちゃんと違って、あなたの場合まだまだ勉強が足りないのだからしっかりやることよ。」
COME TOGETHER…③ 結婚しよう
また時は流れる・・・私たちは4年生になった。
お店はハンバーガー宅配が当たり売り上げがアップしているようだ。私は学校に専念している。佐和子も同じだ。近頃は学校のほかにフランス語を習いにも行っている。そんなわけで二人ともお店にはさっぱりだった。その分みんな成長していて大学生チーフがあとから誕生している。だれもがみんな石田のことを頭のきれる店長と一目置いていた。
私と佐和子は、ほとんど店に入れなかった。 「おれたち、ちゃんとけじめつけたほうがいいんじゃないかな?」 「そうよね、私も同じこと考えていた。」 「やめたくないんだよ、お店がなくなったら佐和ちゃんとの接点がなくなる。」 「そうよね・・・なんとなく一緒にお店に入って顔を合わせる、週に一度でいいからそんな時間が欲しい。」 「でも、お店にとっては迷惑な話だよね。週に一度だけ入るなんて・・・」
「石田君に相談してみる?」 「あいつに相談したら、気にしないでいろというに決まっているじゃないか。」 「そうよね・・・・」 「一緒に退職届出しに行くか・・・」 「そうね。」
私たちはオーナーに退職を申し出にいった。石田に相談してからと思ったが反対されると、逆に行きにくくなる。ほとんど働かない私たちの存在はお店にとって不利益だ。オーナーに直接話せば友情というしがらみをなくして冷静に判断してくれると思った。私と佐和子はオーナーと奥さんが二人揃っている時にふたりででかけることにした。
「オーナー大変お世話になりました。私たち退職させていただきます。」 オーナーは
「石田店長から聞いているよ、二人とも猛勉強してるって・・・できたら退職届は受け取りたくない。」
「でも・・・もうほとんどお店に入れないと思うし。」
オーナーはゆっくり語りだした。
「君たちは、お店に入れなくなった自分たちが迷惑をかけていると思っているのだね。週に一度いや月に一度でもいいから残ってほしい。席は残してほしい。」
「それって、ありがたいですがご迷惑ですよね。」
「迷惑なものか・・・ここで働く大学生にとって君たちは素晴らしい見本なのだ。君たちはお店に必要なの。」
オーナーは何を言いたいのだろうか…… 「石田店長はたしかにみんなの見本だ。でもね・・・みんなが石田君や志摩君をめざしてもらっては困るのだよ。」
「どういうことですか?」
「君のように店長代理まで上りつめて、それでも学業と両立させて卒業して、一流企業に就職したり、また大学院に進んでほしいんだ。つまりは立派な社会人になったのはここでの修業が実を結んだ。ここで頑張れば君たち先輩のように立派な社会人になれる。ここで働く学生が、みんなそう思ってほしいんだ。」
オーナーは私たちを見て熱く語った。
「石田君と志摩君は私にとってはかけがえのない存在だ。でもみんなの目標にしてほしくない。私とて3号店までは順調だがここから先はどうなるかわからない。これ以上社員は雇えないんだよ。わかるかい?君たちは卒業までいてほしい。そして大学生たちの見本になってほしいのだ。君たちにはしっかり勉強してほしい!私は君たちに石田君たち以上に感謝しているんだ。」
仕事に入れない私たちがみんなのお手本?オーナーの言葉があまりにも意外だった。すると奥さんが口を開いた。
「私たちね・・・昔は、今の石田君と志摩ちゃんみたいだったの…オーナーは仕事一筋だった。私はそんな彼にあこがれた。彼は誰よりも早くチーフになり店長代理になった。そうあなたを見ていると昔のオーナーを思い出す。佐和子さん見てると私の昔を思い出すのよ。私は彼についていったこと後悔してないし、幸せよ。でも本当にそれでよかったのかな?と思うことがあるのよ。私デザイナーになりたかったの。その道をあきらめた。自分の夢を捨てて彼についていった。っていえばかっこいいラブロマンスだけど、正直なところ夢を追いかけて努力するよりも彼と一緒になったほうが、楽しいし楽だってそれで、彼についていったのじゃないかなあ・・・・そう思うことがあるのよ。しかし佐和子さんは、自分の夢を捨てないあなたは、楽なほうを選んでいない。素晴らしいわ!」
すると店長が続いて話した。
「私は大学を中退してこの会社に入った。それからも出世が早く社長から認められてフランチャイズのオーナーにしてもらった。私の選択は間違っていない。これだけ順調に進んでいる自分の人生後悔していない。でももし失敗したら・・・妻と子どもを養えなくなったらって考えてしまう。そうなると私はあの時にもどってあの時の私に大学を辞めるな!続けろ、続けたうえでやっぱりこの道がいいと思ったらそこでこの道を選べ!そう自分にアドバイスするよ。」
「みんなはどう思っているかわからないが、決して誇れる過去じゃない。だから君たちが頑張っているときは応援して、君たちが学業に勤しんでいるときは決して無理強いしない。そう決めていたんだ。」
「本当はね私はオーナーとあなたたちのことで大喧嘩したことがあるの。あなたを店長代理にしたとき私はオーナーに怒った。あなたを自分の道にひっぱりこんで責任とれるの?って…でもとりこし苦労だった。あなた方は学業も仕事も両立させた。私たちができなかったことをしているのよ。だからこれからこの店から巣立っていくみんなのお手本なの。」 私たちは互いに顔を見合わせてほほ笑んだ。こんなうれしい誉め言葉はない。
「君たちが目標に向かってがんばっていることが、ふたりとも自分の夢をすてないでがんばってほしい。君たちが錦をかざりふるさとに帰ってきたときいつでもここに来られるように、君たちの名前は永久に残すよ。だから退職届けはうけとらない。」
佐和子と私はオーナーから熱い血潮をもろにうけて感動していた。ここのところ忙しくてお店に入れなくて迷惑をかけていた私たちをこんな風に見ていたんだ。
「ありがとうございます。」 私たちは何度もお礼を言ってお店を出た。
それから佐和子と互いの感動をわかちあっていた。
「おれさあ・・・生涯尊敬する人はオーナーだ。」
「素晴らしい人よね。」
「そうだ・・・あの素晴らしいオーナーの期待を裏切ってはいけない。」
「私絶対、A社に入社する。」
「おれも、絶対大学院に合格して見せる。」
私たちはそれそれの気持ちを尊重しながら互いに愛を確かめ合っていた。
「なあ、佐和ちゃん?おれ達さあ、それぞれの道をこれから歩んでいくのだけど、歩く道が違いすぎるのでもうやっていけないのではないかってずっと心配していたんだ。」
「私も同じこと考えていた。」 「別れようって・・・そんなこと言う日が来るんじゃないかって考えていた。」 「私も・・・もし別れようって言われたら、そうね・・・・っていうつもりでいた。」 「俺たち同じこと考えていたんだね。」 「本当・・・そして今私おそらくあなたが今考えていることと同じこと考えている。」
「そうだね・・・何考えているの?」 「私から言わせるの?」 「俺から言うよ。」 「ごめん・・・ちょっとまって言われるほうも準備がいるの・・・」 「早くしてよ・・・」 「ムードなくなるでしょ・・・」 外は少しずつうす暗くなっていく・・・
「結婚しよう」 「はい。」 「二人の夢がかなって一緒に暮らせるようになったら結婚しよう。離れて暮らすことになったとしてもいつか必ず結婚しようね。それと・・・私たちの結婚式をあげることになったら、仲人はオーナー夫妻にお願いしようね。」
「そうだね・・・」 「司会はさ、チーフの大谷さんがいいよ。このまえのパーティーの司会上手だったよね。」
「でもさ…石田たちも呼んだらお店大丈夫かな?」 「そんなこと心配しなくて大丈夫。」 「それより、この前あいつら本気でおれたち別れるんじゃないかって心配していたな。それは修正しないとね。」 「佐和ちゃん……俺たちそれぞれの夢をかなえよう。そしていつか一緒になろう。」 「そうよ、遠回りしたっていい。いつかかならずね。」 「約束だよ。」 「うん。」 「愛している。」 「私もあなたを愛している。」
♪ Come together right now over me




