A DAY IN THE LIFE
筆者の独り言
何度も言うのだが書き始めた当初は、She Loves You この章で終わらせるつもりでいた。それがいつのまにか10章まで。書き綴ってしまった。まったくストーリーを考えていたわけではないのに、たった1か月の間にこれだけ書き綴った。ここまでくると構成の都合上整理がしずらくなってきた。この物語のタイトルを決めないとせっかくビートルズの曲で統一しているのにバラバラになってしまう。そこで全体のタイトルを決めることにした。さて・・・何にしようか?3日間考えた挙句『夢想の窓』というタイトルが浮かんだ。夢を追い求めていくこれに決めた!『夢想の窓』11章 A Day In The Life をお読みください。
Day in the life ・・・① 置手紙
しかし次の日研究室に行くと私の机の上に置手紙が残っていた・・・・
「三成君・・・ご迷惑をおかけした。本当に申し訳ない。君が私を友と言ってくれたことは忘れない。だけど僕は福島が許せない!」
と書いてあった。
「これはどういう意味だ・・・・」
大学ノートをやぶったような紙に殴り書きだった。
「おはようございます!」
次にいつものように明るく小早川が研究室に入ってくる。
「ねえ・・・これ見て」
「三成君・・・ご迷惑をおかけした。本当に申し訳ない。君が私を友と言ってくれたことは忘れない。だけど僕は福島が許せない!」
「置き手紙?やけになってるみたい。」
「これって福島さんへの復讐宣言じゃないの?」
まったくひとさわがせなやつだ・・・私はいささか閉口するが、小早川は純粋に本気で心配をしているようだ。そこに直江が入ってきた。
「直江さん・・・加藤さんいなくなっちゃったようなんだけど・・・」
直江は加藤の置手紙を見てぼそっとつぶやく。
「あいつは真剣に悩んでいたんだなあ・・・おおごとにならなければいいけど・・・」
私は直江に加藤の一件を簡単に説明をした。
「今日一日休むだけでこんな置手紙しないよね・・・しかし加藤の気持ちもわかるよな。ほとんど自分が書いたレポートをあたかも共同制作のように発表して、おかげで福島さんはP社に入社できた。ところがそのレポートに不正があった、その不正を加藤は一人で被った。研究室ではみんなに白い目で見られ孤立した。それもこれも自分もP社に入りたかったから。しかしP社に入れるように計らうと約束して裏切られた。」
「ひどい話だな。福島さん許せないな・・・」
直江もそうつぶやいた。
小早川は直江にたずねた。
「今日は、一日検証実験をお休みして三成さんと加藤さんの行き先心当たりを探してもいいですか?」
すると直江はフランス語で小早川に返す。それに今度は小早川がフランス語で返す。
「なんだよ、俺にもわかるように日本語で言えばいいじゃないか?なんて言ったの?」
「友人に裏切られるって恋人にふられるよりつらいって、直江さんが加藤さんだったら死にたいと思うかもしれないから心配だって・・・・」
すると直江は私のところに来て
「加藤が心配だから探してやってくれ。」
今度は日本語で言った。
「じゃあ、しばらく小早川さん借りるぞ。」
「いいよ。あいつに会ったらおれも心配しているって伝えてくれ。」
「じゃあ、あきちゃん?食堂でコーヒーでも飲みながらもう一度、今までのこと整理してみるか・・・」
私と小早川は学食に行って話をした。おたがい紙コップのコーヒーを買ってあの時福島と話をした同じ場所に座る。福島の食堂での死角のトリックを検証してみる。
「なるほど、ここに座って前を見ていると横にいられても見えないよな。」
「きっと、加藤さんは福島さんが三成さんに用があるって訪ねてきた時、何の用なのか気になってたんでしょうね。当然福島さんに疑念を持っていた。」
「そしたら案の定、自分への裏切りとわかった。それで怒りに震えた。そこまではわかった次はどうするだろう?」
「加藤さんの家しってる?」
「もちろん君たちが来る前に家に電話して確認したさ。彼は親元から学校に通っている。お母さんが出ていつものように研究室に行ったっておっしゃってました。おそらくここに来たと思う。そして大学ノートを破ってこんな書置きをした。そうとうな覚悟と推察される。」
「それからここを出ていった。そのあと三成さんが入ってきて、この書き置きを見つけた。」
「ここを出て行ったのはまちがいないが、それからどこに行ったか分からない。」
「困ったわね・・・どこか加藤さんが行きそうなところってないの?」
「心当たりない。どこかのがけから飛び降りて死ぬとか?」
「死ぬ??自殺するかしら?三成さんちょっと待って・・・・冷静になってよく考えてみみましょう。確かに直江さんは、『友人に裏切られるって恋人にふられるよりつらいって・・・』死ぬかもしれないって言ったよフランス語で・・・」
「加藤にもそれが当てはまるとしたら・・・福島さんに裏切られて自殺する。」
「そんなわけないわよ。」
「どうしてさ?」
「福島さんと加藤さんって真の友達じゃあないもの。加藤さんはきっと最初っから福島さんのことよく思っていない。だから昨年だって、あわよくば直江さんと組みたかった。でもそれがかなわなかった。福島さんにとっては加藤さんはいいように使える後輩、加藤さんにとっては、福島さんは上級生で一番優秀な人と組める。互いの利害関係で結ばれただけで真の友達じゃない。だから裏切られたのではなくて、だまされただけ、『裏切られた』と『騙された』では全然意味合いが違う。自殺することはあり得ない。」
「そうだね・・・確かにそうだ。でもさ、直江が変なこと言ってたなあ・・・あいつ・・・軽井沢のイチゴ畑で死ぬつもりでいたのかなあ?友に裏切られるのは恋人にふられるよりつらいって・・・」
「それもありません。だって三成さんは直江さんを裏切ったわけじゃない。たまたま歯車がかみ合わなくなっただけ・・・・だから自殺なんて考えていなかったわよ。大丈夫。」
「そうだよね、そうだよ直江のやつが変なこと言うから・・・」
「直江さんが普通の人と考えることが違うのは今に始まったことじゃないでしょ?」
なるほどその通りだ、小早川は私と違って直江との付き合いはまだ浅い。しかし彼の本質をしっかり見抜いていると感心する。直江が小早川となら検証レポートのペアを組んでもいい、いや・・・組んでみたいと言ったわけもうなずける。
「そうなると加藤さんは自殺するようなことはない。しかし福島さんに復讐する。これを真剣に考えるべきね。」
一口に復讐と言っても何をするのか?
私達はまたあらためて福島の置手紙をまざまざと見る。
『三成君・・・ご迷惑をおかけした。本当に申し訳ない。君が私を友と言ってくれたことは忘れない。だけど僕は福島が許せない!』
「福島って呼び捨てにしているわよね?これって福島さんに対してかなり強い憎しみよね。その前に三成さんに申し訳ないと謝り『友と言ったことを忘れない』って書いてある。これって友である三成さんとのお別れのメッセージよね。」
「つまり、福島に復讐したらそのまま私のもとを去る。そういうことか・・・・」
「そういうことになりますよね。 ねえ、三成さんだったら、憎むべきやつにどうやって復讐する?」
「おれだったら・・・殴る。」
「そうよね、男の人ってそれよね。」
「1発ぐらい殴らせてやればいいじゃない。おれさ、昔3発友達に殴られたことがある。おれの大学時代の親友はその殴ったやつだ。」
「殴らせる?何言ってるの?殴ったらおしまいよ、三成さんの場合はその人と信頼関係がもとからあったからでしょ?相手は福島さんよ、殴ったら警察に通報されて逆に向こうの思うつぼだわ。」
「そうか・・確かにそうだ。」
「ねえ、加藤さんって暴力にうったえるかなあ?暴力には無縁そうな感じだよ。」
「そうだな・・・男って女性と違うのは、戦う本能みたいのがあるんだよな。逆にあいつどちらかというと口下手だろ?言葉で訴えられないから、一矢報いるのは暴力しかないのではないかな?」
「暴力を使わないで復讐するとしたら?」
「例えば、P社にあのあの検証レポートは福島さんがやったって訴える。」
「それって、やったところでどうなるもんでもないわよね。 ああ・・・そうですか・・・って言われて自分がP社に採用されずに終わってしまう。」
「だとすると・・・・・福島さんを脅す?……いや、そんな器用なことあいつにはむりだな。」
「やっぱり、もう戻ってくる気ないようだから、あの置手紙は生半可の決意じゃないな。福島さんに会ってぶんなぐるこれしかないかな・・・・」
小早川はずっと考える・・・
「その『福島さんをぶん殴る』線1本に絞って対策を考えましょう。それじゃあ?福島さんを殴るとしたら、どういうやりかたで殴る?例えば彼が帰る時間を見計らって会社の前で待機していて、出てきた瞬間襲いかかる。どう?」
「おれだったら、ちゃんと呼び出してこれこれこういうわけで殴る!っていう。」
「どっちも考えられるわよね。」
「それと・・・・やるとしたらいつやるかな?」
「思い立ったら今日やると思う。」
それについては私は自信を持って言う。
「今日だと言い切れるのはなぜ?」
「だって、家族にはいつものように学校に行ってくるって言って、学校に来て置手紙してどこか行っちゃったんだよ?どこかで時間つぶして家に帰る?そんなことするかな?決心したから置手紙残したんだよ。だから福島さんをぶん殴るのは今日しかない。」
今日か・・・
「ねえ?加藤さんにとって今日は長い人生の中のたった1日にすぎないけど・・・人生を棒に振るか降らないかの大変な日なのよ。」
「そう!もし今日やらなかったら、それは迷っているってことだから、計画だおれで『俺はダメな男だ!』かなんか言って戻ってくる。それはそれで最悪の事態はまぬがれるからいいのだが・・・しかし鉄砲玉のように今日決行したら・・・」
「加藤さんは自分の輝かしいエリート人生をこんなくだらないことで終わらせることになる。」
「あきちゃん、どうする?」
私はあきの考えに従うことにする。それが今まで一番うまく行ってた。先輩なのに恥ずかしいが、一番頼りになるのは彼女だ。
Day in the life・・・② 変装して探る
「三成さん、まずP社に電話をして、福島さんを電話で呼び出してもらえます。」
「なんて言って?」
「P社に入社希望を固めたからもう一度先輩の話を聞きたいって言えばいいのではないですか?」
「なるほど・・・」
「まずはH大学大学院の名前名乗って、福島さんにご紹介いただいて、P社の入社を希望しております。そう受付の人に言ってくれないかな?」
私は、小早川の言う通りにP社に電話をした。すると福島はあいにく今は外出中だと言われた。それなら外出先から戻ったら研究室に折り返しお電話をいただきたいと伝えてもらえばいい。」
私達は研究室で待機した。1時間すると福島は受付の電話の取次ぎを聞いて研究室に電話をしてくれた。
「三成か?電話をもらったみたいだな?」
「福島さんお会いできないでしょうか?」
「えっ?三成君はうちの会社に入りたいの?」
「そうなんです。それでご相談できればと思って・・・」
「いいよ、いつでも会いましょう。」
「今日、お帰りの時間にP社に行ってもいいですか?」
「そうかい?じゃあ今日仕事を終える5時半に会社の社員専用口の前においでよ。」
「ありがとうございます。」
「それじゃあ、のちほど・・・」
それを聞いていた小早川が
「今の会話で加藤さんは福島さんに電話での呼び出しはしていないってことね。もし電話してたら実は加藤と会う約束があって・・・・と言ってくるはずよね。」
確かにそうだ。今日は先約があってとか、さっき加藤から電話が来たとかいうはずだ。
「そうだ、あきちゃん確かにそうだ、ということは・・・・」
「加藤さんは福島さんの帰りを待ち伏せする。」
「それか・・・・・」
「そうなると例えば残業でおそくなると相当な時間無駄にすることになるわよね・・・」
「加藤は執念深く何時までも待っているとか?」
約束の5時半まではまだ十分すぎるくらい時間がある。
「ところで、福島さんに会ったらなんていえばいいかな?」
「そうね・・・P社に入社したいのですがお願いします。ってそれでいいんじゃないですか?」
「だって、もし俺がP社に入社したいっていうのが、加藤にわかったら俺にも裏切られたって思うんじゃないかな?」
「まあ・・そうだけど・・なにか当たり障りのない会話を10分もすれば加藤さんが現れる・・・私はそう推理するんだけど。」
「おれねP社に入社する気ないから、間違って入社しなきゃならないようになったら困るよ。」
「そんな、心配しなくても大丈夫かと思うけど・・・・。」
「簡単に言うね・・・」
しかし彼女は、私の言葉など耳に入らないようだ。別のことを考えているようだ・・・・
「ねえ?加藤さん今何してると思う?ひよっとしたらいてもたってもいられないのに、今特別することはない。そしたら‥‥‥今からP社の社員通用門の付近に行って、ここで待機してようとか作戦をねるというか、いろいろ考えたりしないかな?」
「現地を下見しているってことか・・・」
「私達も今から行ってみたらばったり加藤さんに会ったりして・・・・」
「行ってみようか?」
「でも、2人で行ったら向こうが気づくかもしれない。ちょっと変装してさ別々に行ってみましょう。」
「変装って?」
「変装っていったって普段着ないような洋服着て、サングラスかなんかしていけばそれだけでいいわよ。」
「わかった、それじゃあ1時間後にここでおちあおう。」
「OK!!」
私はなにやら探偵ごっこでもしてるかのようにワクワクしながら家に帰ってサングラスと帽子をかぶり、普段着ない服に着替えて1時間後に待ち合わせ場所に行った。1時間たったが小早川は来ない。何やっているんだあいつ?と・・・あたりを見回すと初老の紳士が近づいてきた。
「どなたかと待ち合わせですか?と」声をかけてきた。私は
「いえ・・・別に・・・」と取り合わないでいるとその初老の紳士が
「三成先輩?全然気づかないんですね。」
「えっ????」
その初老の紳士は・・・・なんと小早川だった。
「へ~~びっくり!」
「私、探偵の素質あるでしょ?」
「どうみても男性、それもおじさん・・・」
「三成さんは、どこをどう見ても三成さん。変装超 下手!」
私にはそんな探偵ごっこの素質がないと言われても別にどうでもいい。
私は小早川と連れ立ってP社の会社の入り口に向かった。
「おそらくP社の従業員はここから出てきそうね。多分一斉にみんな会社の就業のベルが鳴るでしょ?ここは5時半は混むと思う。今日はあなたと待ち合わせているのだからおそらく、早めに出てくると思う。5時半が勝負ね・・・」
「あっ!!あそこ!!」
「なになに??加藤いたの?」
「いや・・・あそこの垂れ幕・・・」
「何があったの…」
私が何も気づかないのに小早川は何やら発見したらしい。この通用門から入ったすぐのところに横断幕が垂れ下がっている。そこには
『水曜日、ノー残業ディ』と書いてある。
「それがなんなの?」
「今日水曜日でしょ、ノー残業ディつまり今日は5時半には社員は残業しないで一斉に帰るってこと。」
「そうか!加藤もノー残業デイを確認している。今日5:30に福島さんを襲う!」
「それじゃあ、別行動して加藤さんを探しましょう、あんまりきょきょろしないで探してくださいね。」
「じゃあ、1時間後またさっきのところで・・・」
2人は別々に行動した。
水曜日の午後、P社の社員通用門の前の通りを私はなにげなく歩いていく。
どこで待ち伏せするかな?このへんかな?逆におれだったら・・・このへんあたりかなあ?ここで目立つようにして待つかな?
自分なりにいろいろと考えてみる。完全に私は探偵ごっこを楽しんでいる。小早川が名探偵で、私は助手ということか。いろいろ探してみたが加藤は見つからなかった。
Day in the life・・・③ 襲撃!
時計の針は5時20分を過ぎたところだ。私たちは最終的な作戦の打ち合わせ確認をする。
「加藤いなかったね。結構探したんだけどやっぱりいま飯でも食って、戦闘準備にかかっているってところじゃないかな?」
「そんな余裕あるかしら‥‥‥いよいよ10分前そろそろ行きますか。」
「よしいくぞ!」
「待ってサングラスはずして‥‥‥福島さんに声かけるのに声かけるのにおかしいでしょ?」
「そうか‥‥‥」
私はまるっきりこういうのはだめだ。
「おれは、5時半に福島さんを探して声をかけるよ。で、あきちゃんは一緒に来るの?」
「私は遠巻きにみています。そして加藤さんを見つけたらお知らせします。」
「なんか緊張してきたね。」
「緊張していると言いながら楽しそうですよ。」
「なんか、探偵ごっこしてるみたいなんだもの。」
「実は、私もそんな気分です。」
時計は5分前になろうとしている。
「三成さん!そろそろ行ってください。私は後ろで見つからないように見てますから。」
私は福島に会いに会社の入り口に向かった。歩いているうちに5時30分になった。入り口で待っていると福島が出てきた。私に気づいて手を振ってきた。
「ああ、よく来てくれたね。ところでさ、さっき15分くらい前に受付に電話した?」
「いやしてないよ。」
「なんか、お友達のようなかたから、今日福島君は5時半に帰れるかって聞いてきたらしい。受付の女性から言われた。」
加藤だ・・・加藤が15分前に電話しているのだ。ということは小早川 あきの推理通り奴は、やっぱり福島を殴りに来るつもりなのだ。
私はすごく緊張してきた・・・
すると、向こうから大きな声で声がした。
「三成さん!うしろ!!」
小早川あきの声だった。私はとっさに振り返るとそこには加藤の姿があった。福島に向かって飛びかかってきた。私は夢中になり加藤に抱き着いた。
「加藤!やめろ!」
私が止めにかかった時、加藤の拳固は私の頬にあたった。痛かったがそんなことは言っていられない。加藤も必死になって福島に飛びかかろうとする。福島はもちろん周りの人たちも、何事かと私たちを囲む。
「福島さん!はなれて!あなたはさっさと帰って!」叫んだのは初老の紳士の小早川だ。
あまりの惨劇にびっくりして足をすくめていたが福島も、小早川に言われてすべてを悟ったかのようにそそくさと行ってしまった。通行人がこちらを見ているのでとにかく私たちはこの場を立ち去ろうとする。
一番動転しているのは加藤だ。なんと言っても夢中になって福島に殴りかかったのに目の前に私が出てきて、その私を殴り飛ばしたのだから・・・とんでもないことをしたと自責の念でいっぱいのようだ。そうはいっても加藤の方は、福島を殴ろうとしたのにそこに私がいたのだから狐につつまれたようにきょとんとしている。それともっとわからないのは、初老の紳士が私たちを支配しているのだ。いったいこの謎の紳士はだれなんだ?加藤はきっと目の前の光景に混乱しているだろう。
「私は、小早川 あきです。」
「えっ??」
「さっき喫茶店でもお隣に座っていたんですけど、お気づきになりませんでした?」
「・・・・・・・・・」
「加藤さん、これには深いわけがあるの。ここで話すのもなんだから、いいわ・・・私のアパートの部屋に行きましょう。そこで話しするから。」
そこでタクシーを拾って私たちは小早川の家に行った。加藤はやっと我に返りとんでもないことをしでかしたと泣きながらあやまった。
「どうぞ、おあがりください。」そう言って私達を部屋に入れてくれた。
まずは、救急箱をだしてきて加藤が殴りつけたわたしのほうにオキシドールをつけてくれた、とても優しく。それを見ていた加藤は、
「本当に何と言ってお詫びしていいか申し訳ない。」
すると小早川が
「加藤さん、あやまらなくてもいいですから、缶ビール500mℓを1ダースを買ってごちそうしてください。それとおなかもすいちゃったかなあ~ ごちそうさまです。」
すると、加藤は
「わかった、ビールと食べ物ね。買ってくる。」
「500mℓを1ダースですよ!」
後輩の小早川が先輩を鼻で動かしている。
そして今度は私に向き直して
「だいじょうぶですか?」
「大丈夫、けっこう痛かったけど昔友達に3発殴られた経験があるから、それに比べたら加藤のパンチはそんなに痛くもない。」
「でも。結構腫れてるよ。」
「大丈夫・・・あきちゃんの胸もけっこうはれてるよね。」
「何言ってるの!すけべ~~お姉さんの言ってたとおりだわ。こいつ~」
と腫れた傷口をつねった。
「いて~~」
思わず大きな声で叫んでしまったところに、加藤は帰ってきた。律儀にも本当に缶ビール500mℓを1ダースを買ってきた。
「そんなに飲めるの?」
「あまったらおいてってくれればいいです。」
Day in the life ・・・④ 乾杯!
「じゃあみんなで乾杯しよう。」
「と言っても、今日の出来事は加藤さんにとって何が何だかわからないでしょうから最初から説明しますね。あっ・・・その前に私変装を解いてくる。」
そう言って鏡の前で化粧を落とし髪をおとすといつもの小早川に戻った。そしてビールを飲みながら話し始めた。
「加藤さん、まずあの検証レポートだけど検証3,4は素晴らしい内容なのはみんなが認めるところ。はっきり言って検証5はなかった方がよかった。私の想像だけど検証1.2は2人でおこなったのではないでしょうか?それから今後の方向性2人で話し合った。加藤さんが3.4の実験をしたいといい、福島さんは検証5のたたき台をつくった。お互い別々に検証実験を行った。できあがった、検証3と4を加藤さんは福島さんに見せた。きっと福島さんは素晴らしい出来に唸った。このレポートを発表すれば、P社に自分は入社できると確信した。ところが自分の実験検証5はうまくいっていなかった。加藤さんは福島さん学力をどう思います?最初の1年は秀才でトップだったけど卒業の時は学年の中でも下の方じゃなかったかしら?」
私は小早川の話を聞いて
「そんなわけないだろ?」というと・・・
加藤はしみじみと
「福島さんは、酒と女にだらしないところがあってここ1年堕落してた。ひどかった。」
すると小早川は
「三成さんは、鈍感だから気づかないだけ(笑)・・・女にだらしないのは本当よ、私もつきまとわれたから・・・」
小早川はけろっと言ってのけた。
「続けますね・・・検証5の実験はうまくいかなかった、そこで3.4がすばらしいから、実験結果を捏造してつけておけばこのレポートは、福島さんと加藤さんの共同作品として提出しようとした。ところが加藤さんは実験5の捏造に気づいた。そこで5を削除すればよかったのだが、福島さんは、すべて加藤さんの書いたものを提出することにプライドが許さなかった。そこで加藤さんに口止めを約束させた。P社には自分のおじさんが取締役をしている。必ずコネで入れてやるからいう通りにしろ。そんなところじゃないですか?」
加藤はうなずいた。
「その通りなんだ。」
「加藤さん?あなたは大変失礼ですが物理学はトップですが、お人よしというか、世間知らずというか、全く世の中わかっていないですね。あなたのような方はコネがなくたって、P社の方からから入社してくださいってお願いが来ますよ。逆に福島さんの学力では難しい。福島さんがP社に入れたのは、おじさんのコネじゃない。あのレポートですよ。あの検証レポートを見たP社の採用担当は、提出者の福島さんの功績と思い彼を採用した。おじさんがP社の取締役ってうわさだけどそんなのうそ。福島さんはおじさんのコネで入ったんじゃない。加藤さんの書いたレポートの功績で福島さんはP社に入れたのよ。」
小早川は早くも500mℓを1本のみほして2本目に入った。
「実験レポートはおかしいこれは捏造と私が見破った。捏造は立証したがどうしてもP社に入社したかった加藤さんは、本当のことを言わなかった。見事に福島さんは加藤さんにぬれぎぬを着せた。みんなそれを問題にした。私たちもみんな不正を許さなかった。卒業した福島さんだけがいい思いをして加藤さんが貧乏くじを引く形になった。ところがP社が注目したのは、捏造ではない。検証3,4を書き上げることのできる素晴らしい能力を持った学生。つまり加藤さんなの。福島さんはあせった、だって後輩のあなたが入ってきたら、完全に抜かれるからです。いつかあなたに使われる立場になることになると考えると耐えられなかったと思うの。だから、福島さんは三成さんを訪ねてうちに入社するようにすすめた。加藤さんの推薦がなくなったといって他社に行ってほしかったんですよ。というよりも能力のあるあなたを、検証レポート不正の罪で失脚させたかったのよ。それで落ち込ませようとした。そして今日・・・・」
加藤は静かになった・・・
「今日、あなたは福島さんを殴りつけていたら、福島さんのシナリオ通り、あなたは失脚してこの業界から消えてしまうとこだったの。でも幸いにしてパンチは三成さんが受けてくれた。あなたはこれからこの業界のトップに君臨する。トップエンジニア加藤 清正の誕生よ。」
今日は人生の中の一日に過ぎないけど大事な一日。」
やっと加藤に笑顔が戻ったがそれと同時に私にまた拝むように詫びた。
「加藤さん?私は1時間くらい前から、あの喫茶店のガラス越しから加藤さんを見つけた。P社の社員通用門が見えるあのテーブルでコーヒーを飲んで時間をつぶしていた。私はそれを見つけてお隣に座ったのはお気づきにりました?最も変装していたから私だってわからなかったと思うけど・・・」
加藤が喫茶店で社員通用口を見ていたなんて初耳だった。
「えっ??そんな話俺聞いてないよ。」
「ごめんなさい・・・加藤さんの居場所も突き止めたあとは、三成さんに止めてもらえば一件落着と思ってたんです。でもまさか三成さんがパンチを受けるなんてそれだけは予想できなかったので・・・」
「え~なんで俺だけがこんな目に合うんだよ。」
「本当に申し訳ない。」
「すみません~~」
そこで私が口をはさんだ。
「ところでなんであきちゃんは接点のない福島さんのことを学力が低いとか知っていたんだい?」
「それは・・・ここだけの話にしてくださいね。私のクラスメートの女の子が福島さんの元彼女で同棲していたんです。実はね福島さんのレポートとかほとんど彼女が書いていたんです。私よりも学力が優秀だった。でも許せない私に付きまとうようになったんです。彼女と私は親友だったのにおかげで彼女は私を恨むようになった。彼女大学院には上がらないで実家に帰った。もったいないわ・・・
彼女から聞いて私は福島さんの学力を知っていた。あのレポートは福島さんでは書けない。最初から捏造だと思ってたわ。それで三成さんの実験室お借りしたかったの。
福島さんて最低なの。女性にだらしなくていやらしい。三成さんのいやらしさとは程度が違う。」
「おいおい・・・そこで俺を引き合いに出すか?」
「聞いて聞いて・・・加藤さん・・・さっき三成さんは私にいやらしいことしようとしたの。加藤さんが戻ってきてくれなかったら何されてたかわからないわ。加藤さんありがとう。さっきのパンチは私のためにしてくれたのね。だから気にしないで・・・」
「気にするなって何言ってるんだよ・・・おれはとんだ三枚目になるじゃないか。」
私が三枚目を演じたおかげで加藤に笑顔が戻った。
「とにかく、加藤、君の能力はトップレベルだってことなんだ。あらためてお願いしたい。検証レポート一緒に協力してほしい。」
「こちらこそ、本当に申し訳ないとしか言えないがお願いいしたい。」
「そうこなくっちゃ!」
私達は熱い握手をした。すると小早川は言う・・・・
「そうなったら、2人は直江さんと私の敵になるのね。」
「急に他人のように言わなくても‥‥‥」
「とにかくこれで一見落着、私は残ったビールを貰えばいいですから今日は帰ってくださいね。」
「そうだね、女の子の部屋に男がいたら何かと噂の種だからね・・・お邪魔しました。」
加藤にとって人生の中のたった1日に過ぎない今日一日が、これからの人生を変える大事な一日となった。




