生かされた処刑人
第一ステージ “生かされた処刑人”
【ルール説明】
・各プレイヤーは「+」を1人、「-」を2人に投票する。
・自分自身には投票できない。
・「-」は同じプレイヤーに重ねて投票できない。
・制限時間は3分。時間内に投票しなかった者は脱落。
・「+」は1点、「-」は-1点として加算される。
・10点に達したプレイヤー:生存
・-10点に達したプレイヤー:脱落
・投票は各ラウンドごとに、全員同時に行う。
・ラウンド終了後には、隠されたルールが一つずつ開示される。
状況を把握する間もなく、いきなりルールの説明が始まり、理解が追いつく前に制限時間を示す時計が動き出した。
落ち着け、僕。
今の時点で明かされているルールなら、第1ラウンドは深く考える意味はあまりない。
まずは、周囲の状況を確認する方が先だ。
僕がいるのは、モニターしかない部屋。
人の気配はない。いたらすぐにわかる程度の広さだ。
首には何か装置のようなものが装着されていて、簡単には外れそうにない。
モニターに映っているのは、名前と顔写真。
さっきまで同じ場所にいた人たちのものだ。
2分ほどでは殆ど何もわからなかったが、それでも気持ちを落ち着けることはできた。
残り時間が少なくなってきたので、モニターを使って投票を済ませる。
「第一ラウンドの投票結果を発表するよ」
ロキ――そう名乗った男の声が響く。
アオ -2点
イツキ -2点
ウミ +1点
エイジ -2点
サユリ -2点
シズク +3点
スミレ -2点
セリナ -2点
「おっと、リーチがかかってる人がいるね」
ロキが楽しげに笑う。
たぶん、みんな無意識に最年少に見えるシズクに「-」を投票するのを避けたんだろう。
同じ理由で「+」も集まり、彼女だけ得点が伸びた。そんなところだと思う。
「さあ、ここで隠されたルールを一つ教えるよ」
ロキがそう言うと、最初のルール画面に一文が加えられる。
《ゲームの終了条件:5ラウンド目を迎えた時》
今明かされているルールの範囲なら、現在の点数状況は悪くない。
-10点を出さずに5ラウンドを耐えきる――それを目指すなら、なるべく早く人数を減らした方がいい。
人数が減れば「-」の票が減るし、選択肢も絞りやすくなる。
シズクはすでに3点。次かその次で10点に届かせて、生存させればいい。
制限時間が残り1分を切ったとき、ロキが口を開く。
「さあ、ここがいきなりゲームの分かれ目だよ。
シズクちゃんは、みんなの運命を左右する投票になるかもしれないから、よーく考えてね」
からかうような声色。
投票を終えた僕は、その言葉に、妙な違和感を覚えた。
――シズクの投票が、運命を決める?
その意味を考える間もなく、投票の結果が発表された。
アオ -4点
イツキ -4点
ウミ -2点
エイジ -4点
サユリ -4点
シズク +10点
スミレ -3点
セリナ -4点
上手く行った。
「-」も固まってないし理想的な展開だ。
なのに、どうしてか胸騒ぎが止まらなかった。
その正体に気づく前に、ロキが少しつまらなそうに呟いた。
「あーあ、こんなに早く終わっちゃうとはね」
終わり……? 何が?
「予定よりだいぶ早いけど、まあ、これも面白いか」
ロキは勝手に納得したように話を続ける。
「現状がまだ把握できていない君たちのために、残りのルールを全部教えてあげるよ」
ロキの言葉と共に、ルール画面に新たな項目が追加されていく。
【ゲームの終了条件】
・5ラウンド目を迎えた時。
脱落者無し
・いずれかのプレイヤーが-10点に達した時。
該当プレイヤーは脱落。
さらに、そのラウンドで該当プレイヤーが「+」を投票したプレイヤーも脱落。
【・いずれかのプレイヤーが+10点に達した時
該当プレイヤーは生存。
“そのラウンドで該当プレイヤーに「-」を投票されたプレイヤーが脱落。”】