終わりと目覚め
「今日は皆さんに、ちょっと殺し合いをしてもらいます」
目を覚ました瞬間、見覚えのある男がそう言った。
僕は驚いた。男の言葉に、それを聞くのが、二度目だということに。
そして何より、殺されたはずの僕が生きているということに。
ざわつく空気の中、男は淡々と話を続ける。以前と同じ調子で、同じような説明を始めた。
「まずは自己紹介、私のことは……」
たしか、“ロキ”
「ロキとでも呼んでください」
……やっぱり、同じだ。
ロキがルールについて説明している間、僕は状況の整理を試みた。
考えられる可能性
まず、夢。頬をつねってみる。痛い。けれど夢かどうか確かめたところで、それに意味がない事に気付く。
「僕は馬鹿か。夢なら悩む必要なんてないだろ」
次に、予知能力。
たしかに“予知夢”と考えれば、筋は通る。だが、あの光景はただの夢にしては鮮明すぎた。
なにより、自分が殺される場面を事前に見るなんて、そんな都合のいい能力があるのか?
そんなふうに考えを巡らせているとき、ふと、周りを見回すと、他の参加者の様子が少し変な事に気づく。
何か、おかしい。
みんな驚いてはいる。けれどそれは、“デスゲームに巻き込まれた”という驚きではないように見える。
もっと別の、何かに対する驚きだ。
普段ならわからない他人の感情の意味。
その意味が、わかる気がする。
それは数分前までの僕と、おそらく同じ感情だから。
そう、それはまるで、殺されたはずの自分が生き返った事に対する驚きに見えたんだ。