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82.神の試練3

先生は後でスロー画像見たり天井までの距離計ったり大変です。

 カンニング疑惑は晴れたが、ちょっとでも私を疑った人はバツが悪そうな顔をしている。1つ聞きたい事があるんだけど、と疑った人たちに聞いてみた。


「なんで同じ一位の黒曜は疑われなくて私だけ疑われたんだ?」


 そう言われてみれば、と顔を見合わせている皆の中で、1人発言した。


「最初に声を上げた人がマリーさんだけを対象に糾弾したから、黒曜さんの方へ目が向かなかったんだと思います」


 ああ、言われてみれば。アンネットさんは黒曜が好きだったからなあ。条件は一緒だったのに黒曜様がカンニングなんてする筈がない!とでも思ってたのかな。


「ん、解った。疑問はそれだけなんだ。ほんと不思議で…仮にも聖女なのにそんな悪い面してたかなって気になって」


「いえ、僕たちこそ、疑ってすいませんでした」


「「「「「「すいませんでした!」」」」」


「あ、もういいよ、終わった事だし」


 今日は体力測定の日だ。前世と同じでこっちにもあるんだなあと妙に懐かしい気分になる。体操着に着替えて、体育館に集合する。魔法使用厳禁という事で、魔法が使えなくなっている。

 私達のクラスは垂直飛びからだ。名前を呼ばれて前に出る。脚力だけで真上に跳んだ。ずぼっと天井を抜けて3m程跳んだ後、天井に着地する。それから下へ降りた。


「えーと、天井+3mくらいでした」


「マリー。それは駄目だ。天井を破る際に減衰している。もう一回飛んでおいで」


「あ、そっか。じゃあもう一回飛びます!」


 ぴょん、と穴を目掛けて飛ぶと、大体天井+7mくらいだった。


「先生、天井+7mくらいでした」


「…先生?」


 ダメだ立ったまま気絶してる。

 ゆさゆさと揺さぶって先生がハッと気づく。


「あ、ああ、すまない、それで誰が何メートルだったかな」


「マリエールです。天井+7mくらいでした」


「天井…+…?」


 先生がそっと天井を見ると、私の空けた穴が見える。


「…………解った。天井+7m、な」


 自棄(やけ)になったのか、診断表にそのまま天井+7mと書き込んだのが見えた。

 因みに黒曜もアディもシュネーもリシュも天井を破った。この一行は体育館に何の恨みがあるというのか。


 立位体前屈は特に他とそんなに代わりがない。体は柔らかい方なんだな、と言った程度である。

 が、握力計を握ろうとしたらストップが入った。

 色んな金属の入った箱を持ってこられ、先ずは鉄塊を渡された。


「握ってみなさい」


「はあ」


 ぐにゅ。鉄塊には見事な私の手形がついた。


「じゃあ次はこれ」


「はい」


 ぐにいい。鉄よりは硬かったが、やはり見事に手形がついた。


「じ…じゃあ、これ…」


「はい」


 むぎうぬぬぬ。あ、これ硬いな。完全に手形がついたとは言えない。


「――そこまで。アダマンタイトに手形が…はは。先生、君とは握手したくないな」


 他の面子も握力計じゃなく、鉄とか握らされてた。多分小さい数字しか計れない握力計しかないんだろうな。


 上体起こしと反復横とびはスロー再生で先生が回数数えてた。がんばれ先生。

 立ち幅跳びは、思いっきり校庭の端っこから飛べと言われたのでそうした。逆側の校庭の端ギリギリで足りた。

 先生がガッツポーズしてた。


 50m走はスロー再生した上で何倍速だったかを元に計算して出すようだ。

 そして、学生よりも何故か先生方が疲労した状態で体力テストは終わった。

 天井までの高さとか、天井の厚みとか計るんだろうか。がんばれ先生。


 因みに私達ほど顕著でなくても、ダンジョン組はそれなりの成果を出しているようだ。良かった。


 そういや明日は調理実習だけど、リシュが作るのは全部普通のお店より美味しい味になるだろうけどいいんだろうか。


 昼休み、体力テストの結果にマルクス君はちょっと落ち込んでた。平均値を割り込んでしまったらしい。

 そんな事気にしなくても、ちょっとダンジョン行けば挽回出来る範疇(はんちゅう)だよ、と皆で慰める。


「…武器屋に行ったら、持てる剣が投げナイフしかなかったし、ダンジョンには俺は向いていないんじゃないかと思うんだ…」


 ごろり、と寝転んで腕相撲のポーズ。察してくれたマルクス君が腕相撲のポーズを取る。


「よーいドン」


 私は特に力を篭めず、マルクス君の力具合を見る。顔を真っ赤にして頑張っているのは見て取れるんだけど…。そこらの深窓のお嬢様の方がマシなんじゃないかというくらい弱い。両手を使う許可を出しても変わったか変わらないのか解らない。手を離してもらうと、マルクス君は肩で息をしている。


「なあ、黒曜。これ初心者ダンジョンも無理だと思うんで、1回だけキャリーしたいんだけどダメ?」


「私はそもそもマリーにキャリーされて龍が落ち着いたんだ。何もダメではないよ」


「マルクス君、放課後、ちょっと私達に付いて来てくれるか?戦闘には参加せず、付いて来るだけでいい」


「っはぁ…はぁっ…っわかっ…たぁっ…」


 ぇえー…今のでそんな疲れてるの?まずスタミナが足りないよな。こればっかりは毎日走ったりしてどうにかして欲しい。


「以前黒曜連れて行ったダンジョンを1周だけしたら後は自分でなんとかして貰うよ」


「私も行こう」


「経験点全部マルクスにフるから私らのレベルは上がらないぞ?」


 ――…それならば我らも外に出ちゃダメかのう。

 ――ワン!!ッワワワン!!

 ――きゅ!!!


「んー、待った黒曜、従魔が出たがってる」


「こちらもそうだな。トゥルースは相変わらずダンジョンには興味ないようだがマルコが出たいようだ」


「しゃあない、ちょっとだけ歯ごたえあるとこ行くか?」


「そうだな」


 従魔が出て来てマルクス君に挨拶している。狗神が気に入ったらしいマルクス君は凄いナデナデしてる。


「凄い可愛いし格好いいな…これが従魔?」


「あ、全員人間の姿で参加すると思うから」


「へ?」


 一斉に人間の姿に化けさせる。黒髪の美人、可愛い男の子、美形の男。


「ミニ竜だったのが黒髪で、さっきモフってたワンコがそこの可愛い子供で、スライムみたいだったのが美形の男な」


「うちのマルコも」


 羽の生えた犬だったものが、可愛い女の子になる。


「人間型のメンバーで行くから見知っておいてくれ」


「お…おう」


そして放課後、滝の裏のダンジョンに向かう。ここならまあまあ手応えくらいはありそうだ。きっと。多分。マルクス君は冒険者登録は済ませていたようで、カードを重ねてパーティ登録。全ての経験点をマルクス君に割り振るように設定する。


「あ、マルクス君、あとこれ」


 ダンジョン産の武器防具と入れ替えた為余っていた親父の黒神竜装備をマルクスに渡す。


「危ないかも知れないからつけといてくれ。あと、余ってたからやる。んじゃ、マルクス君、絶対私達から離れちゃダメだぞ」


「わわっわわわわかってる」


 むしろ私の服の裾握ってるもんな…。


「じゃ、黒曜、行くか」


「ほんとにココでいいのか?」


「んー、ちょっとしたリベンジも込みで。以前ここのラスボスに足溶かされたから」


 ひょい、と中に入るとそこそこ湧いている。

 黒曜がメテオ、私は範囲魔法で通路を駆けて行く。


「えっ、走るの!?」


「夕飯までに帰りたいから」


 従魔もはしゃぎながら漏れてきた敵の取り合いをしてる。

1~19層を走っただけで、マルクス君は青息吐息になっていた。小休止を挟む。


「…生きてるか~?」


「…………」


 息をするのに精一杯の生き物になっている。


「ドリンク要らないか?」


「っは…、ほし、いっ」


冷たいスポーツドリンクをがぶがぶ飲むのは良いけど…。


「飲みすぎるとまた走れなくなるぞ。つーかマルクス君は毎日学校来たら運動場10周な」


「10周!!?いや…無理…」


「途中歩いてもいいから10周な。喋れるようだから進むぞー」


 20層ボスは流石に一撃だ。久々にゴルゴンなんて見たわ。マルクス君に注意し忘れて石化してた。キュアで解いてやる。


 21~39層も、駆け足だったんだが、途中でマルクス君がリタイアしそうになっていたので、ただの早足に変更する。私達が特に何もしなくても、従魔が嬉しそうに敵を倒していくので問題なかった。

 マルクス君の息が整ってくるとまた駆け足に戻す。死にそうな顔をし出したら歩きに戻す、を繰り返してやっと40層ボス、オールドキングキメラだ。


「意味もなく騒いだらビンタな!」


 此方へと寄って来て爪を振るおうとするキメラ。


「アイスウォール」

「アポカリプス」


 キメラの頭部が炸裂する。動揺している隙に残りの二つの首も斬りおとす。

 キメラは其処から一歩踏み出そうと足を出した状態のまま息絶えた。

 ドロップは深淵の華、神鋼と魔法のスクロールか…うわこれ絶対仕込まれた。黒曜がひょいと覗き込む。


「多分使いこなせるのはマリーくらいだろうな」


「言われなくても仕込まれたのくらい解ってる」


 面倒なのでその場で天魔法を習得する。


「さて、また走るぞ」

「…っ、解った…!」


そこからは従魔がいい仕事をしてくれた。漆黒はブレスで、ケルベロスは爪で、ライムは六本腕の槍のような腕に変えて我先に先頭を行く。小走りでそれについていく。何度かマルクスが限界になり、その度に先にいく従魔を呼び戻すのが手間だったくらいだ。でもそろそろ体力の値が増えても良い頃なんだがな。


 ちろっとマルクスを鑑定すると、…ダメだ。自分達のパラメータが高すぎて、マルクスの数値が高いか低いか解らない…。でもさっきよりはまだ死にかけるような状態にはなってないからマシなのか…?


 60層ボス戦、懐かしい悪魔・ベルゼブブ


「以前は足を溶かされたからな。リベンジに来たぞ。眷属は無理に倒さなくてもいいが、襲われたら対処しないと卵を植えつけられるから必ず倒せ!腹から魔石のあるコアを狙え!首を落としてもいい――マルクス君はこっちに寄らずに端っこで隠れてて」


重力場(グラビティフィールド)


 黒曜の魔法で眷属が全て地に落ちる。


「我が身に刃向けし反逆者。そなた等は内から弾けて消えよ。黙示録(アポカリプス)之大禍(ディザスター)


 ベルゼブブの体のいたる所が内部から爆発する。ベルゼブブはその短い足を動かすが、何にも届かない。


「天道より来たりしもの、須らく邪悪を滅すべし!紅炎(プロミネンス)祓魔(エクソシズム)


 ゴオッ!とベルゼブブの体が燃え上がる。何かを詠唱しようとしていたのは解ったが、今は苦鳴を上げるのに忙しい。


「クグァアアアアアアアアアギイイイイイイイ!!!!」


「最後に大量の溶解液を吐く。気をつけろ」


 私と黒曜はベルゼブブからかなり距離を取る。


崩壊の雨(コラプスレイン)


「女神よご照覧あれ!代行者が天罰を下す!天降(フォール)雷神焦(ガデスライティング)!」


 大量の崩壊の渦を身に受け、裁きの雷がベルゼブブの体を貫く。


「ホーリーケージ、ホーリーバリア」


「ロックウオール」


 最後に弾けるような勢いで溶解液が吐き出され、ケージを溶かして突破、バリアとロックウォールは超えられずに凌ぎ切った。


「ふ、今度こそ完全勝利だ」


 ぽろっとドロップが落ちる。

 ベルゼブブの宝玉、神鋼、身代わりのタリスマン

 宝玉は過去を見通すもののようだ。私には時空魔法があるので要らない。第3部隊にでも渡そう。


「おーい、もういいぞマルクス君。あとこのタリスマン、1度だけ身代わりになって壊れてくれるから、持っておきな」


「あっ…ありがとう…っ」


ほい、鑑定っと。……レベル98

…しまった上げすぎた…。やべえな導師の弟子ついちゃったな。まあいいや後は手に入った力をきちんと使いこなす修練が必要だしな。


「かなりレベル上げすぎちゃったんだけど、自分の力にしないと意味ないから。レベルに見合った鍛錬が出来るよう努めてくれ」


 よし、帰ろう


「マルクス君、ここにカード当ててリターンって言って」


「リターン」


 続けて私と黒曜もリターンで外に出た。


「んじゃ、私らは帰るわ」


「あ、ありがとう、これで剣振れるようになったよ!」


 黒神竜の剣をぶんぶんと素振りして見せてくれる。


「それでちゃんと自分でもダンジョンに行くんだぞ!おんぶに抱っこだけじゃ私は認めないからな!」


「勿論だ!」




 マルクス君と分かれて転移しようとした時にそれは起こった。

 何もない白い空間に、1人、目深にローブを被った私くらいの背の高さの人が1人。

 ぱさり、とフードが落ちると、其処には「私」が居た。


『試練3つ目じゃ。己を超えてみせろ』


 武器なども同じだ。気を抜けば首を取られる。


「「ホーリーケージ」」


 くそ、考える事も同じか!

 ガシャン!とガラスを砕くような音を立ててホーリーケージから脱する。長い詠唱や隙の出来るスキルは使えない。 ――無拍子

 前触れもなく薙がれた「私」は斬りおとされた腕を見て驚く。回復はさせない。

 同じく無拍子でもう片方の腕を落とす。


 どうやら「私」は勇者と戦っていない所為か、無拍子は使えないようだ。

 そこで「私」は刀を口に咥えて瞬歩で私の腕を裂く。腱を切られた、と思っている間にもう片方の腕にも迫る。こちらも瞬歩で移動する。回復する余裕だけは与えてはダメだ。片腕で刀を握り、無拍子で袈裟切りにする。

 が、相手も慣れて来たのかかわされた。


「飛燕8連」


 ぐ…片腕ではきついなこれ。

 流石に口に咥えた刀では全部捌き切れず、「私」はあちこちに切り傷を負う。一番の深手は足か。


「アポカリプス」


 多分あちらもこの魔法を掛けたかったのだろうが、刀を咥えている所為で発動出来ない。

 「私」の頭部が内側から爆散し、勝負はついた。


『見事。まだ無拍子を覚える前のそなたで良かったのう?』


「そうですね。使われてたらまだ戦ってたと思います。かなりの泥仕合で」


『ではまた、4の試練で逢おう』



 ふっと現実に戻ってくる。同じタイミングで黒曜も戻ってきた。


「倒せたか?」


「かなりの泥仕合だったがなんとか辛勝だったな」


「そうか、うちは相手が無拍子を使えなかったからなんとかなったな」


「…使えるのか、あれ」


「ん?使えないのか?」


「敵がちょっと見せた程度の技では流石に…」


「解った、教えてやるよ早朝にな」


 今度こそ、二人は転移で我が家へ帰るのだった。



相手が自分だと全く容赦のないマリーさんでしたが。次の試練も無事超えて欲しいものです。

読んで下さってありがとうございます!少しでも楽しく読んで頂けたならとても嬉しく思います(*´∇`*)もし良ければ、★をぽちっと押して下さると励みになります!

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