76.獄級デート再び
ひさびさのダンジョン回です
特に問題もなく日が過ぎていく…いや一回あったな。
黒曜様が身につけているものが欲しくて!と言って、体育の男子更衣室から状態異常無効のペンダントを盗んだ子がいた。
「それは黒曜がダンジョンに行った時に身を守るための大事な装備なんだ」
と、説得して、なんとか返してもらった。大体お嬢さんが考えてる金額に0を5個くらい足さないと手に入らないぞこんなアイテム。手作りだから安っぽく見えたのかもしれないけどね。
これで2回目だぞ、と黒曜をキッと睨んで体育の時もペンダント取り外し禁止、と言い渡した。
しょんぼりした黒曜が頷きながら抱きついてきた。よしよし、そんなには怒ってないから凹むなよ。
天秤教は不気味なくらい沈黙している。前に倒したのが虎の子だったとか?まっさか~!それにしちゃ弱すぎた。今度の勇者に細工してる可能性が高い。ソレ以外は人材不足なのかも知れないな。
リシュのお店は順調にメニューが増えた。アヒージョやバーニャカウダ、ケ●タのチキンとビスケット、最近はコーラも自作して売っている。うん。自分でやってくれて助かる。そして日本食が1品!手羽元と大根の煮付けとおにぎりのセットだ。和食よ広まれー!
うんうん、最初はフォークでもいいんですよ。箸の使い方なんて後から必要な時に覚えればいいんです。
チキンは好きだけど油物はあんまり…という層に結構売れてるようだ。嬉しい。
アディのマニキュアは、私と同じように試行錯誤しながらなんとか色数を10品揃えてた。リムーバーは勿論ある。店に出しているが結構好評だ。追加商品と売れ行きを報告すると、嬉しいような辛いような顔をして引き受けてくれた。作ったらバックヤードに置いておくように指示する。
私も1日に2回、商品をバックヤードに補充し、買出しと草摘みとオートモードは毎日日課にしている。
ある日突然アディが「生えた!!生えたよ【極】!!」
と、涙を貯めながら報告に来たがその涙は本当に嬉し涙であってる?
そしてアディもオートモードでマニキュアを作って、材料を買って商品をバックヤードに置きに行く仲間になった。
訊けばリシュもとっくに料理には【極】が付いているようで、皮むきやカットなんかのオートでの下拵えから煮たりする時の丁度いい分量が鍋に勝手に入り、煮込み時間の短縮、必須材料の取り寄せまで出来るそうだ。気付かなかった。
そんな感じで過して、とうとう4日前。3日を使ってレベルを上げ、4日目に王宮前で待機だ。
オートモードには一日12000個(いつもの量を2回分けじゃなく1回で纏めた量)を作り、納品と買出しと草むしりはアディに頼んだ。すまんが4日だけだ、頼まれてくれてありがとうな!
黒曜とは新しい獄級ダンジョンに行った方がスタンピードの分敵が多くて効率がいいんじゃないかと提案され、了承している。
魔石には天降雷神焦と穢隔聖光陣をそれぞれ5個づつ入れた。低層では使わない。使うなら最下層と決めてある。
今回はトルクス内ベルモット領という山間に挟まれた小さな領だ。領の端っこの方に獄級ダンジョンがある。すなわち山中にあるのだ。いつも通り、少し離れた場所に転移して空中からメテオ爆撃。ダンジョン周りだけ禿山になっていたので見えやすい敵を一掃。
終わったら洞窟内に向けてメテオと範囲攻撃。
「んじゃ行きますかー!」
「うむ」
いつも通りに小走りで駆けながら見敵秒殺。下層の敵も混ざってる筈だけど、範囲魔法で死んでしまうので見分けが付かない。1~19層まで駆け抜け、20層のボス部屋の扉を開く。
「鑑定!悪魔アイム!弱点は聖と水、無効は火!」
「ロックウォール」
人間の体と頭に、猫と蛇の頭も生えている。そして毒蛇に跨っている。右手には松明を持っている。
松明を振ると、業火が巻き起こり、ロックウォールを焦げ付かせた。溶けなかっただけマシだ。
「女神よご照覧あれ!代行者が天罰を下す!天降雷神焦!」
「悪しきもの断つ鉄槌の刃よ、今こそ奮え断罪の剣閃!纏龍技、浄悪魂葬!」
「ギュエエエエエエ!!!!アギイイ!!」
ちょっと足りなかったようだ。
「飛燕8連!」
3つの首と胴、四肢を落として息絶える。毒蛇は黒曜が頭を落としていた。核が浮いていたので一刀で割る。ついでに魔石もゲットした。
ドロップアイテムは、アイムの蛇行剣、神鋼、アイムの松明。
蛇行剣は弱いので売る。アイムの松明は、無限松明というか、なくならない松明のようだったが、ライトがあるので要らない…売ることにしよう。
21~39層も特に変化なく混ざっている。駆けながら殲滅していく。此処で始めて宝箱に出会った。ちょっと興奮したが、鑑定するとミミックだった。私の感動を返せ!八つ当たり気味に剣を振り下ろすと、真珠のネックレスが出た。呪われてたのでまず呪いを浄化する。鑑定すると、付けている間、いくらでも食べることが出来る。という大食いチャレンジャーには嬉しいアイテムだった。…売ろう。
40層。勢い良く扉を開ける。
「鑑定!アガレス!弱点は聖と氷、刺突、無効はなし!」
見た目は鰐に乗った老爺である。手には大鷲をとまらせている。
「アイスウォール!」
「久々の獲物じゃの!イキが良うて何よりじゃ!」
「穢れたるもの、我が領域にその存在を認めず。清らなる聖なる光よ全てを浄化せよ。穢隔聖光陣」
「悪しきもの断つ鉄槌の刃よ、今こそ奮え断罪の剣閃!纏龍技、浄悪魂葬!」
「喝!」
私の穢隔聖光陣が喝の一言で掻き消された。
ほぼ同時に撃った黒曜の浄悪魂葬は生きているが、老人に効いているようには見えない。
「ほっほ。40層のボスじゃから、弱いと思うたな?普通の剣技や魔法なぞ掻き消してくれるわ」
いや、もしかすると…
「アイスウォール!」
「――夢幻の刻よ刻め、その足跡を。盤倉流奥義、無間不断刃!」
音速の世界に一気に入る。
「聖なる千剣、顕現し、蹂躙せよ!聖爆剣閃!」
「喝!」
強い聖属性を持つ剣が999本。眩いばかりのオーラを放って体内深くへ突き刺さる――そして体内で聖気を放ちながら爆発する。
「九の型・無限乱刃」
加速から更に加速で酷い重圧が体を襲うが、分裂した私が100の刃をその身に突き立てる。
「崩壊の雨」
崩壊を招く球体が雨の様に降り注ぎ、複数個所から老爺と鰐の体を分解する。
「我が身に刃向けし反逆者。そなた等は内から弾けて消えよ。黙示録之大禍」
内側から爆発する因子が幾つもその身の中に食い込んで行く。老爺と鰐の体はあちこちが吹き飛んだ。
ここで技の効果が切れる。痺れた両腕にグレーターヒールを掛ける。
「…何処でばれたかの…」
「私達2人の技のうち、1つしか消していなかったからだ。自分自身に掛けるバフは無効化できず、同時に複数の攻撃をされるとそのうちの1つしか無効化できない――違うか?」
「正解…じゃ…」
にい、と老爺は笑うと、サラサラと塵になって消えた。核は浮かんできたので壊しておく。
くるりと黒曜を振り返り、まだ少し痺れる手を振った。
「お茶休憩しよっか」
ゆったりと黒曜座椅子に腰掛けながら、お茶菓子を齧る。
「落ち込むなよ。初見だったんだからさ。私が見破れたのも勘みたいなもんだよ」
肩に顔を埋めている黒曜の頭を撫でる。
「大体、やせ我慢してただけで、浄悪魂葬もそれなりに効いてたみたいだぞ」
そこでやっと顔を上げて私を見る。
「ホントだって。ほれ食え」
あーんでクッキーを口の中に入れてやる。流石にお茶は零しそうだったので手に持たせてやった。
後ろでずずっと茶を啜る音が聞こえる。こんなとこで落ち込んでる場合じゃない。まだ40層なのだ。
振り向いて鼻の頭にキスをする。黒曜の頬が赤くなった。
自分でもクッキーを手に取り、食べ始める。うん。これで大丈夫そうだな。
41~59層は同じく駆け足で攻略。60層まで来た。
「昼食どこで食べる?さっきお茶したもんなあ…80層でいい?」
「そうだな。私もそれで構わない」
一気に扉を開く。
「鑑定!悪魔グラシャ=ラボラス!弱点は聖と地と刺突!無効は風!」
グリフォンの頭だけを犬に変えたような悪魔だ。
「ギャオオン!」
「…?黒曜!?」
さっきまで隣に居た黒曜の姿がない。
「此処にいる!ロックウォール!」
以前のサルガタナスのように、人の姿を透明に出来るようだ。性能はサルガタナスの方が良い様で、ただ姿が透明になるだけだ。
「ジャッ!!」
前足の一撃でロックウォールが崩される。グリフォンの羽の所為か、移動速度もかなりの速さだ。
「ホーリーケージ!」
「ギャウッ!?」
「悪しきもの断つ鉄槌の刃よ、今こそ奮え断罪の剣閃!纏龍技、浄悪魂葬!」
「穢れたるもの、我が領域にその存在を認めず。清らなる聖なる光よ全てを浄化せよ。穢隔聖光陣」
ホーリーケージが壊れる前に拘束魔法で絡め取る。
光る蔦がグラシャ=ラボラスの体を侵食し、ケージが壊れる頃には翼も使えなくなっている。
「女神よご照覧あれ!代行者が天罰を下す!天降雷神焦!」
「ウギャアアアオオオオオオンン!!!!」
天からの雷がその身を貫くと同時に、蔦は浸食を終え、その魔法陣を閉じた。肉片が散らばる。魔石は欠けてしまっていた。浮いてきた核を一刀で割る。
ドロップは、グラシャ=ラボラスの小手、神鋼、グラシャ=ラボラスの羽
小手は私達が装備しているものの方が良いが、黒神竜のものを上回っている。ソラルナかアディに渡そう。いや、前線寄りのアディかな。グラシャ=ラボラスの羽は一度行った場所に転移出来るアイテムだ。1回じゃなく何度でも使える。転移出来ない面子に渡そう。
61~79層も、問題なく駆け足で殲滅。80層だ。目で合図してさっと扉を開く。
「鑑定!悪魔ナベリウス!弱点は氷・聖・刺突、無効はなし!」
3つの犬の頭にカラスの体、紳士服を着ている姿は何処か滑稽だ。背に穴の開いた服であるようで、大きな翼が其処から出ている。
「ギャグォン!」
「アイスウォール!」
犬の頭だと思ったが、ブレスも吐けるようだ。みるみるアイスウォールが溶ける。
「ロックウォール!」
「ホーリーケージ!」
翼で飛び回られながらブレスを吐かれては堪ったものじゃない。先に動きを止める。
「――万物よ跪ひざまづけ、音にも聞こえよ我が龍術、纏龍技、一閃万葬!」
「女神よご照覧あれ!代行者が天罰を下す!天降雷神焦!」
それまでケージを壊そうと暴れていたナベリウスがぴたりと動きを止めたと思ったらブロック状に肉が落ちる。中心部は焼け焦げている。お。奇跡的に魔石が無傷だ。とっとこう。核は破壊されていた。
ドロップ品は、ナベリウスの足甲、神鋼、ナベリウスのスカーフ
黒曜が付けている足甲より此方の方が上だったので交換する。変わりにダンタリオンの足甲はシュネーに渡そう。
ナベリウスのスカーフは、被ると透明になれるというものだった。これは取っておこう。
ここで昼食を頂く。うむ?なんだこれ。砲丸みたいに見えるけど…おにぎりか!黒曜も目を丸くしながら眺めている。もぐっと齧り付くと中におかずが入ってる。きんぴらとか唐揚げとか雷蒟蒻とか。面白くていいなこれ。美味しいし!黒曜も美味しそうに食べている。デザートはきなことあんこの御餅だった。緑茶もついてた。リシュ神様、和ですね今日は。御餅も残さず食べて、和に癒されたので気力充実だ!
81~99層も変わりなし。ほんの少し耐えそうで耐え切れなかった敵は居たがそれくらいか。駆け足で殲滅していく。100層。この扉は終わりじゃないな。さっと扉を開く。
「鑑定!悪魔キュルソン!弱点は聖、氷、無効は火!」
獅子の顔をした男が、熊に乗っている。手には毒蛇が絡んでいる。
「ロックウォール!」
「ホーリーケージ!」
捕らえたのは熊だけだった。キュルソンは未来が見えるかのように避けていく。
「今、未来が見えているようだと思ったね?君」
言い様に、素早く横に回りこんだキュルソンは大きく口を開けて私の手を食い千切ろうとする。
「ホーリバリア!」
ガキン、と音を立ててバリアがみしみしと食い千切られていく。
「そうだよ。見えるのさ」
不動の今なら、と喉に剣を突き込むと、それより早く避けられてしまう。
「ホーリーバリア!」
自分と黒曜の周りにバリアを張る。
「むう!?」
「聖なる千剣、顕現し、蹂躙せよ!聖爆剣閃!」
強い聖属性を持つ剣が1000本。避けきれない範囲に展開される。眩いばかりのオーラを放ってキュルソンの体内深くへ突き刺さる――そして体内で聖気を放ちながら爆発する。
「グガッ…やるではないか!」
いつの間にかケージから出ていた熊がホーリーバリアを破る。
「…ッホーリーバリア!」
「――万物よ跪け、音にも聞こえよ我が龍術、纏龍技、一閃万葬!」
「――夢幻の刻よ刻め、その足跡を。盤倉流奥義、無間不断刃!」
黒曜の技で熊がブロック状の肉に変わるのが見えた。
「崩壊の雨」
キュルソンの周りに配備し、容易に避けられない崩壊がキュルソンを襲う。
「九の型・無限乱刃」
更に加速、分身した私の剣戟が音速でその身をズタズタに裂く。
「聖なる千剣、顕現し、蹂躙せよ!聖爆剣閃!」
強い聖属性を持つ剣が1000本。音速の世界で避け切れる訳もなく眩いばかりのオーラを放ってキュルソンの体内深くへ突き刺さる――そして体内で聖気を放ちながら爆発する
「ガァアアアッ…お前、お前は…ッ」
倒れこみ、身動ぎするのが精々といったキュルソンの首を刎ねる。
「――!!!」
すぐに目から光が消え、核が浮かび上がる。それを割り、まだなんとか素材の取れそうな体をアイテムボックスに仕舞う。
「未来が見えるんなら、未来が見えても避けきれない攻撃をするのが当然だろ?」
水分補給と飴を齧って少し回復すると、次の層へ向かった。
101~119層。ああ、こいつが最下層の連中だったのか、と思う程度で特に変わりなく駆け足で殲滅する。
120層。扉が豪華だ。此処がラスボス戦だ。目で合図し、一気に扉を開く。
「鑑定!悪魔アスモデウス!弱点は魚の内臓と聖、斬撃、無効は火!」
人と牛、羊の頭を持ち、足はガチョウで尻尾は毒蛇。手には軍旗と槍を持って地獄の龍に跨っている。
龍と人、どちらの口からも炎のブレスを吐いてくる。
「ロックシールド!」
「ホーリーケージ!」
ケージはいくらも持たなさそうだ。
「聖なる千剣、顕現し、蹂躙せよ!聖爆剣閃!」
強い聖属性を持つ剣が1000本。眩いばかりのオーラを放ってアスモデウスの体内深くへ突き刺さる――そして体内で聖気を放ちながら爆発する。
「纏龍技!千刃挽歌!!」
「ぐぉおおああああ!!痛い。痛いが其処の女が厄介そうだ」
アスモデウスはニタリと笑うとその姿をすうっと消す。
「!?なんだ…何処へ…」
その無防備な背中へ、マリーの剣が突き刺さる。
「ゲボッ、ぐ…なに…?」
急いでポーションを口に含みながら、マリーの方へ向き直ると、見た事もない表情のマリーが其処に居た。邪悪な笑みを浮かべる様は悪魔そのものだ。
「こういう時、お前ら人間は、仲間を攻撃できないんだろ?」
ニヤニヤと笑いながらアスモデウスはその体に剣を突き立てようとする。
「待て!!!やるならば私から屠れ。この命、決して安くはないがな。貴様も依り代が居なければ私に何も出来ないのだろう?」
「良いだろう。じゃあ少しづつ刻んでぐちゃぐちゃにして楽しんだ後にこの女を絶叫させてやる」
ピッ、ピッ、と少しづつ足が斬られていく。
黒曜は口の中で何かを唱えている。
「念仏かぁ?俺には効かんぞ?」
「…………今こそ奮え断罪の剣閃!纏龍技、浄悪魂葬!」
黒曜の目には魂が見えていた。邪悪に濁ったアスモデウスのものと、虹色に光るマリーの魂が。
正確にアスモデウスの魂を縦横無尽に切り落としていく。体に残る魂がマリーのものだけになるまで。
「ァグァアアアアアアア!!!人間がぁああああ!!」
煙のようにマリーの口からぼわっと出たアスモデウスは、油断していた。
まさか自分の出てきた口から攻撃を受けるとは思わなかったのだ。
「ブレス!」
神聖属性のブレスがアスモデウスの魂を焼く。黒曜にズタズタに裂かれた魂では受け切れなかった。
「ぃ、やだ、消え………」
最後まで台詞を言いきれずにアスモデウスは消えた。核だけが浮いているのを、黒曜は握りつぶした。
「ご、ごめんな、油断はしてなかったけど、まさか取り憑かれるとは…」
黒曜は、無言でぎゅうっとマリーを抱き締めた。その体は小刻みに震えている。
「…ヒール」
足の怪我を治すと、マリーは肩が濡れている事に気付く。しっかり抱き締め返してぽんぽん、と背を叩いてやる。
「大丈夫、此処にいるから。な?」
「ぅしなうかと…っおも、った…!マリーが、もう、居なくなるんじゃないかとっ!!」
「お前が守ってくれただろ?」
「守る…わたしが?」
「そうだ。ありがとうな。私の体がお前を殺すのかと気が狂いそうだったよ。私の心ごと、体も守ってくれたんだ。ありがとう黒曜」
お互いにぽろぽろと涙を流しながら唇が重なる。
「ふっ…へへ、初チューはしょっぱい味だな」
「そうだな…塩味だ。でもちょっと甘い気もする」
おでこをちょんとくっつけると、マリーは笑った。
「帰るぞ!」
120層を登録し、リターンで地上に戻る。ギルドへ行くと、黒曜に素材売却を頼んだ。
「で、また獄級デートですか?」
「カード登録してくれ!」
「ちょっ…報告も受けずに受け取れません!」
しぶしぶマリーは攻略してきたボスなどの情報を渡す。
案の定受付嬢は白目を剥いている。
「あっ…あすも…でうす?」
「そうそう、こいつ手強かったから、他のヤツが行くなら注意してやってくれ」
「誰も行きませんよ!!!獄級なんて!!キュルソンの素材はまあ…有り難いんですけどね!破損も酷いですけど!」
「カード処理」
有無を言わさず受付嬢の手を握ってカードを2枚持たせる。ぷるぷる震える受付嬢は何かを言いたげに口をぱくぱくしていたが、暫くして大きい溜息をついてカードを処理してくれた。良かった。
素材の売却を終えた黒曜と合流する。
「しかし、今日のダンジョン、いつもより手強かったな」
「そうだな。私達ももっと強くならなきゃ神殺しに手が届かないな。ずっと傍で戦うから、ずっと傍で戦ってくれ、私の戦女神」
どうしてこうも恥ずかしい台詞を真顔で言えるんだこの男は。
ぼんっと赤くなった顔を隠しながらマリーは言う。
「そっちこそ、ずっと傍に居ろよ、私の軍神」
あ、やっぱ止めときゃ良かった、これ凄い恥ずかしい。
赤い顔を更に赤くして2人は帰宅した。
アスモデウス戦は書いてて楽しかったです(*´∇`*)
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