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74.罠と天秤教

宗教は怖いですね。女神教とは解釈違いで揉めているようです。

 レストランが立ち上がって、誘拐事件が起きた次の日、王からの連絡で、お家取り潰しと国外追放の刑になったと知らされた。モルンは親に溺愛されていた為、親はモルンの言う事をなんでも信じて言いなりの状態だったらしい。そりゃマトモな人格形成はムリですな…。


 早朝は店舗への商品移動と、オートモードにお願いするだけになった。らくちんだ。


 一方で、誘拐を心配する声と、レストランへ行った者の熱いコメントが両極端に分かれる教室。リシュの周りに集まった女子達は、手首と髪を切り落とされたけど、マリーが助けて治してくれたから大丈夫、というリシュに、「手首!!!??」という反応をしている。


 レストラン組は、「凄く単純そうなポテトっていうのとハンバーガーっていうのを頼んでみたら、じゃが芋って揚げただけでこうなるの!?ってくらい美味しかった!次に行ったら違うものも注文するんだ!あ、ハンバーガー、美味しいけど結構ボリュームあるから女子は気ィつけてな」どうやらリシュは日本製品の大きさでなく、外国製品のハンバーガーの大きさを参考にして一個で男の子もお腹が膨れるように考えたらしい。


「俺はラザニアとピザが気に入った!」


「僕はキッシュとシーザーサラダとベリーのパフェ頼んでみた!サラダに掛かってるドレッシングだけでも売ってくれないかな…凄く美味しいんだ!キッシュとパフェも凄く美味しかったけど、あのドレッシングが一番感動したよ!」


 ほうほう、ドレッシング単体での販売ね。いいと思う。

 リシュの心身が落ち着いたら提案してみよう。


 リシュの元へ行っていた女子の1人が、私の方へ来て、おずおずと話しかけてきた。


「兄は両足を失ってしまったのだけど、癒せますか?」


「全然問題ないよ。家まで行けばいい?」


「…はい!ありがとうございます!!」 


 感動しているのか震えている…いや違うな…なんだろう、これちょっと気持ち悪い。

 家の場所を教えてもらい、買出しと在庫だしとオートモードに頼んでから行く事にする。なんかすんなり終わりそうにないんだよな。勘だけど。害意があれば弾かれる筈だから、この子には害意はないんだろう。確か名前はナシュラ・リベントス。侯爵家だ。


 地図の書かれた紙は倉庫街を差している。指摘すべきか、このまま案に乗ってみるか。でも害意なく、という事は誰かに頼まれて私を引き出せと言われているんだろう。下手に思惑から外れる行動を取ったら、この子殺されるんじゃなかろうか。――まあいいや。一旦思惑に乗ってやろうじゃないか。


 昼食時、ナシュラの件を話してみた。黒曜は眉を(ひそ)めている。


「倉庫街へ行く必要はないだろう?家なら調べられるから直接家に行って兄を癒してやればいい」


「お兄さんが人質の可能性も0じゃないんだよ黒曜。…私はお節介だろうか」


「…そうだな。でも私はそなたのそういう部分に助けられたのだったな…」


 他の面子も大分と渋い顔をしている。1人で来いとは言われてないんだから黒曜と共に帯剣して行く、というと、やっと渋々頷いてくれる。


 折角の美味しい料理なのに、そんな渋い顔で食べられるのは可哀想だ。リクエストしたハンバーガーを(かじ)りながら、ジャンクフードを楽しむ。でもこれ、前世の某有名ハンバーガーショップのヤツより美味しい!ポテトとナゲットも笑顔で頬張る。うお~ジャンクフード食べたい欲が満たされていく~!

 いやー、普通のご飯ばっかり食べてると、ジャンクフード恋しくならない?私はなる。カップヌー●ルも食べたい。


 やっとぎこちない笑みを浮かべながら、リシュ特製ジャンクフードに手を付ける面々。


「食べやすい上に美味しいな!おお…さくっとしたチキンナゲットも凄く美味しいぞ」


 眼鏡君…マルクス君が空気を変えようとリシュの料理にコメントする。


「これもレストランで扱ってるんだよな!ウチはなかなか外食する機会がないから、いつか外食する時はリシュの店にするよ」


 と、空気読み2号ソラルナ。


「私はもう一個の某有名ハンバーガー店みたいにミートソースと厚切りトマトが入ってるのもあると嬉しいな!」


「あ、私もそれ思った!美味しいよな!」


 後はなんとか和気藹々の雰囲気で終了した。美味しいご飯は美味しく食べないとね。


 放課後、先ずは化粧品に必要な買出しと薬草とトウダイグサを摘んで、錬金部屋から商品を回収して転移でバックヤードに送り、オートモードでの作成を指示する。バックヤードに私も跳んで在庫が心もとないのを確認してからそれぞれ補充する。最近は冒険者などに、ここで高級ポーションが売られているとクチコミで広まったものだから、ポーションも確り錬金しなければならない。全部黒曜が付き添ってくれているので、草摘みが捗った、有り難い。


 それから冒険者衣装に2人とも着替えて、確り各装備を確認する。それからナシュラの指定した倉庫街へと転移した。


 思ったより人数多いな。ナシュラさんと、8人くらいの若者と爺さんがナシュラさんのお兄さんらしき人を捕縛している。けど抱え方が雑だな。


「ほら!マリーさんは来てくれたわ!優しい方だって言ったでしょう!?話をするのだってちゃんと約束どおり穏便に話をして!兄さんを返して!」


「ふん、マリーとやらが来たなら用無しだ。おい、返してやれ」


 切り取られたのか、足のない兄を放り投げるようにしてナシュラへ返す――と思いきや、その背を思い切り斬り付けた。


「いやぁああああああ!!!」


「よっと。グレーターヒール、もっかいグレーターヒール、こんなもんか」


 投げられたナシュラ兄を受け止めて癒してやる。足も元通りになった筈だ。ナシュラに増血剤を渡して飲ませるように指示する。


「ま…マリーさん、ありがとう、ごめんなさい、この人達が話があるって…」


「話など一つしかない。天秤教の神からの託宣だ。マリエール、お前には滅んでもらう」


 神って女神だけじゃなかったのか…天秤教とやらは知らんけど。

 ナシュラさんは責任を感じているのか必死で私を庇おうとしてくれる。前に出て訴える。


「待って!話が違う!!話をするだけだって言ったじゃない!嘘つき!そんな嘘が許される天秤教っていうのは禄でもない宗教なのね!!」


「そんな瑣末な事、問題にもならんわ!神はこの娘が居るだけで陰陽の天秤が傾いてると仰った!ならば原因を滅するしかあるまい!!」


 んー。帯剣してるのは4人か。私はナシュラさんの頭を撫でて、どいていて、と声を掛ける。

 ごめんなさい…と涙声で謝って、後ろの方へどいてくれた。


「飛燕8連」


 初手で飛び道具。上半身が生き別れになったのが4人、軽傷3人、後一人は良く解らない反応をしている。


「纏龍技、千刃挽歌(せんじんばんか)!」


 隣で黒曜も範囲スキルを使っている。剣から逃れたのが1人と、さっきのもう1人だが、技を受けてブルブルと震えながら咆哮する。


「ぅぅううううあああああああああ!!」


 咆哮した男を見て、残った老爺が歓声を上げる。


「おおお!!天秤の神の恩寵ぞ!!良くやった!早くあの女を殺すのだ!!」


 身体能力が、他のものとは違い、大幅に増えている事が解る。体から立ち上るあの魔力の量、私より少し少ない程度だ。


「ぐがぁああああ!!」


 理性も吹っ飛んだらしく、剣を抜かずに四足動物の動きで噛み付こうとする。


「ロックシールド」


 黒曜は冷静だ。見習わないと。


「九の型・無限乱刃」


 一先ず動きの早い相手なので、詠唱の短いものでないと打てない。

 躍り掛かって足場のない空中に居る相手に、100人程に分身した私が縦横無尽に斬りかかる。足は貰った!


 上半身もズタズタだ。骨だけになってもその神の力とやらで向かってくる気だろうか、悲鳴などは一切ない。


 老爺が何事か呟くと、傷が全て消える。


「黒曜、爺からだ」


「うむ」


「ホーリーケージ!」


 一旦問題の男には足止めをし、私は首を、黒曜は胴を狙った一閃で、老爺は倒れる。不気味な笑みのまま息絶える。


 多分、そんなに力のない男に、無理矢理神力を流し込んで強化したのだろう。理性も戦い方も何一つない獣のような男は、いくらパラメータで私達に競っていても意味がない。

 まだホーリーケージに囚われているがそろそろ破られそうだ。


「ホーリーケージ」


「――万物よ(ひざま)づけ、音にも聞こえよ我が龍術、纏龍技(まといりゅうぎ)一閃万葬(いっせんばんそう)!」


「女神よご照覧あれ!代行者が天罰を下す!天降(フォール)雷神焦(ガデスライティング)!」


 二つの極奥義を受けた男は、(しお)れるように崩れ落ちる。一生分の力を使い果たした、とでも言うように、シワシワと木乃伊(ミイラ)の様に朽ちる。それがブロック状になって散らばった。

 天秤教…聞いた事ないな。後でカフスさんに聞こう。


 ナシュラさんは泣きながら抱きついてきた。


「ごめんなさい!ごめんなさい!!話がしたいだけだって言われて…断ったら兄も人質にされて…っこんな事になるって予想もしてなかったの!それと有難う!断るたびに兄の足を斬られてしまって…もう兄さんはダメかと思ったのに…治してもらって…!」


 そこまで頑張って断ってくれてたのが意外だ。良識のある子なんだろうな、本来は。

 兄も目が醒めたのか、血塗れ現場に呆然と見入りながら、自分の足がある事に気付く。


「あっ…え、何があったか良く解らなくて申し訳ない、でも助けてくれたのは解る。本当に有難う」


「礼なら勇気ある妹さんにしてやれ。どっちかと言うとウチに用があるやつに巻き込まれたようだ」


 一応、水晶に過去録画しておいた。王より軍部かな…これ。カルト宗教ってやつかな。

 2人を家まで送ったあと、第3部隊まで行き、成り行きと過去映像を流して説明する。一先ず現場は死体が散らばるホラーな状態なので、後始末をお願いする。


 クリーンを掛けて帰宅。心配した家族がわっと寄ってきたので、事の成り行きを説明。でも家族にも天秤教なる宗教は耳に覚えがないそうだ。


 カフス様~!

『天秤教。数世紀に1度現れ、善なる者を減らしては消えていく宗教。女神の考える調律の取れた世界と天秤教の考える調和の取れた世界が異なるため、女神教の敵とも言われている』


 んー。天秤教では善が多いと不服なのか。なんだろうこの何とも言えない宗教。

 カフスに聞いた天秤教の説明をすると、家族も何とも言えない顔になった。

 ちょっと明日法王呼んで相談でもしようか。



 今日のところは、晩餐を楽しんで、風呂に入っておやすみなさいだ。



また敵が増えましたが、勇者との再戦も、偶には思い出してあげて下さいw

読んで下さってありがとうございます!少しでも楽しく読んで頂けたならとても嬉しく思います(*´∇`*)もし良ければ、★をぽちっと押して下さると励みになります!

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