70.競合
がんばるマリーさん
あと2日でビューラーが納品される。それまでにアイシャドウくらいは用意しておきたい…あ!しまった、化粧って化粧落としっていうヤツでないと落ちないんじゃなかったか?これは今日絶対作らなきゃならない!でも今回作ったヤツ…また6000個作るとしたら時間が…いや、2回目だから昨日ほどは時間掛からないか…?
個数減らしてでも対応した方が良さそうだ。目の周り用品はまだ2日ある。今日は今回のラインナップを6000個作る。詰め替えには元凶のアディを連れてきて手伝って貰う。アディも錬金持ってるからな。やれそうな錬金も任せる。錬金釜もっと増やそう。足りないよりは余る方がいい。それで時間が空くようならマスカラとかに手を付けよう。
しかしカフス、シュネーに渡す心算だったのに物凄いお役立ちすぎて渡せない。黒曜の分も欲しいから、今度の休みに三回くらい倒してこよう。いや、錬金が上がってきたらアディやリシュにも必要か…?なんにせよ、カフス様凄い!
放課後、急いで店舗に向かう。シャンプーとトリートメント、石鹸はある程度行き渡ったのか、1000ほど余っていた。化粧品は惨敗です。昼で売り切れたらしい。だが、何処からも宣伝されてなかった所為で、文句を言われる事はなかったようだ。でも私は6000以上は作らない!!要望に答えすぎると私が死ぬ。
そのまま閉店時間まで平常運転をお願いする。錬金ギルドでまた大型錬金釜を5つ買って帰る。カフスで軽く調べて、今日の調合に使いそうな材料も大量に買っておく。
で、化粧下地・ファンデーション・フィニッシュパウダーも作った。多分もう店頭にない気がする。
各6000個。もうこれ以上はしんどいので、勘弁して欲しい。
店のバックヤードに転移して在庫を置き、店頭の方に基礎化粧品を並べる。
ケイタイで連絡を取ると、待っているといわれたので、王城に基礎化粧品を包んで持っていく。キラキラした顔の王妃様が嬉しそうに私の説明を聞いてくれた。
●化粧落とし
オリーブオイルから、脂肪酸を錬金、聖水を入れて錬金で混ぜてオリーブ乳化ワックスを作る。
別の植物オイルに乳化ワックスを加えて80℃くらいでよく混ぜ、そこに聖水を入れて更に錬金でよく掻き混ぜる。お肌に優しいクリームクレンジングが出来た。
こちらも使いやすいようにプッシュのついたチューブ型の容器を作り、化粧落とし・Rosaの刻印を入れる。中身を小分けする作業はアディに任せる。
其処から倍速で昨日作った化粧水、クリーム、美容液、下地、リキッドファンデ、フィニッシュパウダーを順番に作る。お茶したい。疲れた。6000個づつ作った時点で晩餐の合図が丁度来たので、昨日より作業が大分早くなってるなと思う。嬉しい。
●アイシャドウ
化学式錬金で、色んな色調の色剤とクレイパウダーを大量に作成。
ココナッツを錬金してドテラココナッツオイルにする。
クレイパウダーと色剤を、それぞれ2人の好みを聞きながら色調を作っていく。
色調の決まったものにはドテラココナッツオイルと薔薇の製油を入れる。
確りと斑なく混ぜて出来上がり。
先ずは金属の小さな入れ物にそれぞれ6000づつ山盛りに入れてはプレスしていく。此処からは黒曜も混じって入れ物にどんどん入れていく。私は石英と向き合い、12色の金属皿がきちっと納まるサイズでコンパクト状の入れ物を作る。アイシャドウ、Rosaの刻印も忘れない。
ラライナに小分けを頼んで、次に行く。
さて、口紅か…リップグロスの方が使いやすそうかな。
●リップグロス
3種の材料を錬金。
キャンデリラワックスを加え、全て80℃程度の温度で溶かして良く混ぜる。
色材は化学式錬金で赤、ピンク、暗めのローズを錬金。
それぞれの色材を入れて錬金で物凄くしっかり混ぜて冷やしながらも混ぜるよう設定。
その間にガラスとプラスチックで容器を作る。見たことのある、グロス容器の形にガラスを錬金し、蓋側にガラスの棒と、その先に海綿状にした柔らかいプラスチックを確り一部溶かして同化させてつける。リップグロス、Rosaの刻印も忘れない。
そして実はずっと気にしてた事がある。リキッドファンデなんかは手でもいいけど、フィニッシュパウダーやこのアイシャドウ、アイライナー、手でやるの無理じゃない?
木材と手触りの良い毛皮を釜に入れ、ブラシを作る。太さを変えて5種類もあればいいか。どんどんブラシを増産した後は、プラスチックを入れた釜からビニール容器を作る。ぴったり筆が5本入る。
後は筆を詰めればこっちは出来上がりだ。独りでブラシ詰めをやってると、丁度同じ時間くらいでアイシャドウ小分け組が終わった。もう寝る時間になるが、アディ達に今回作った新作を渡して、もう一つ全種セットを包装しておく。
後は黒曜と手分けして店舗に跳び、新作とブラシを店舗にディスプレイし、シャンプー類と新作の在庫をバックヤードに置く。
使い方の説明はメモに書いて残しておいて、店員が対応出来るようにしておいた。
後、POPは図入りでどう使うかを書いて飾っておいた。マスカラとか順番間違っちゃいそうだしね。
今更だけど、化粧水やらファンデーションなどもどの順番で付けるのか、図入りで説明するPOPも作って飾っておいた。
そして私は見た。アディの錬金が、最後10に上がっていた事を!扱き使っちゃうぞ!
早朝、修練の変わりにあれこれと材料を錬金する。アディも引っ張り込んで錬金させる。黒曜は言わなくてもやってくれている…。大好きだ黒曜…!
朝食を食べると、先ずは包装した新商品を抱えて王宮へ跳ぶ。それぞれ説明していると、王妃様は嬉しそうにしていた。良かった。明日がビューラーの納品か。こっちは既にアディやリシュが使ってるから明日は店が混みそうだ。
一旦家に戻って学用品の鞄を持っていこうとすると、お呼びでない感じがするチャイムが鳴った。
やって来たのはコスメ協会の人だった。話を聞くと、顧客がどんどんウチに流れて皆困っているという。いや、それをどうしろと…。どうか1品だけでもレシピを明かして貰えないか、という事だったが、私がやっている製造方法を話すと愕然とした顔になり、しょんもりと肩を落とした。
「あ、アイライナーだけなら作れますよ!」
ぴんと気付いた。あれなら別に錬金も要らない。椿油が無理でも、植物性の油で代用出来そうだ。
「本当ですか!?レシピなんて教えて貰っても…!」
製造方法を紙に書いて渡してやる。
「あ…これなら出来そうです!ありがとうございます!」
ぺこぺこと何度もお辞儀しながら帰って行った。パン協会とは大違いだ。
まだ懲りてないらしく、店の邪魔をしようとあれこれ画策しているが、肝心の店に辿り着けていないようだ。
学園に転移し、遅刻を免れる。チークなどがなくともそれ以外フルメイクで学園に来たアディとリシュは女生徒にもみくちゃにされている。私に飛び火し、いつから販売!?と訊いて来るので、もう今日販売する事を話す。
女生徒はがくりと膝を付き、今日はもう買えないだろうなあ…と呟いている。そ…そんな目で見たって学校に商品なんか持ってこないからね!!
今日、チークとアイブロウとフェイスシャドウを作ったら、商品数は揃った事になる。やっとカフスとの戦いが終わる…。今迄錬金して作って来たものは、商品別に化学式も込みで全部メモを取ってある。帰ったらアディに読んで貰わないと。
いつ頃になったら店、落ち着くかなあ…。2ヶ月以内に収まって欲しいな。
娘(元)の要望に応えてあげたいパパ心…でも余りの忙しさにパパ心はそろそろ死んだんじゃないかと思います
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