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60.獄級デート

2人きりでダンジョンデート。マリーさんはいつになくご機嫌です

「ふんふふ~ん♪今日は黒曜っとはーんぶ~んこ~♪」


 早朝修練ではしゃぎ過ぎて鼻歌が漏れた。皆苦笑しながら…いや、黒曜は凄く嬉しそうにそれを聞いている。


「け~いけ~んち~もは~んぶ~んこ~♪」


 歌いながら錬金していたそれが出来上がる。

 深淵(しんえん)の華とリューベツァールの涙から、身代わりの人形を5つ作成できた。


「黒曜、これ持っててくれ。1こづつな。使ったらアイテムボックスから補充、って感じで」


 黒曜に身代わりを3つ渡す。自分の分は2個だ。

 そうこうしてる内に、朝食の時間だ。冒険者装備のまま――全員そうなんだけれど―朝食を食べる。

 今日は黒糖のテーブルロールだ。黒糖好き!バターを付けながら焼きたてを頂く。美味しい!コーンポタージュもカプレーゼもスモークした鶏肉も美味しい!

 食べ終わった私の元に、昼食と晩餐の詰まったお重を持ってきてくれる。あと、お茶のセット。スポーツドリンクと棒飴はもう私と黒曜のアイテムボックスに入っている。


「じゃー行って来ます!」


 今日のダンジョンはマフィートという少し離れた場所にある国の南端だ。少し手前に跳んで、飛翔する。2人でメテオ撃つとダンジョン周りの敵はすぐに殲滅できた。早い。

 ダンジョン入り口で、メテオと範囲攻撃魔法を撃つ。黒曜はメテオの焦点を私よりだいぶ奥に設定して撃ったようだ。範囲魔法も撃ってくれてる。やっぱり似たようなやり方してたんだなあ。


 そっと入り口を覗くと、かなり奥まで敵が駆逐されていた。小走りになりながら、メテオは黒龍に任せて私が範囲魔法を担当する。メテオの火力が凄いんじゃなくて、これ、私の魔力が強かったんだな、と思う。だってホーリージャッジメント1発で敵死ぬもんな。うーむパラメータの差は埋めてやれないからなあ。しょうがない。


 小走りで敵を殲滅していく。隣に黒曜も居る。楽しい。

 やっぱり私は一緒に宝飾店なんかに行くよりこっちがいい。背中を預けられる相手と一緒にダンジョン。楽しすぎるだろ!


「楽しいな、黒曜」


「うむ。何よりそなたが私の隣で楽しそうにしているのが嬉しい」


「っはは、そっか!」


 1~19層は呆気ないほど直ぐに終わった。20層、ボス部屋だ。2人でのボス退治は初めてなのでちょっと緊張する。サクっと倒せますように!えいや、と扉を開く。


「鑑定!悪魔キメリエス!弱点は聖・光・斬撃!」


「アイスシールド!」


 黒い名馬にまたがった勇猛な戦士の姿に、背後に従えた悪霊。

 一目で私の極魔法が有効と見たのか、シールドで時間を稼いでくれる。

 馬を操り、巧みな剣捌きで此方に攻撃を仕掛けてくるのを、黒曜が剣で応戦する。


「穢れたるもの、我が領域にその存在を認めず。清らなる聖なる光よ全てを浄化せよ。穢隔(エクソサイズ)聖光陣(イムピュアリティズ)


 そのお陰で詠唱が完成した。魔法陣を被され、蔦の文様が全ての敵の動きを封じて行く。


「グァ…ァガアアアア!!」


「ヒヒィイーン!!!」


 馬も騎手も身動ぎできずに咆哮する。


「――万物よ(ひざまづ)け、音にも聞こえよ我が龍術、纏龍技(まといりゅうぎ)一閃万葬(いっせんばんそう)!」


「悪しきものよ、我が前に膝を付け(ホーリー)(パニッシュメント)!」


 ダメージを受けて半透明になっていく敵を、光の蔦が絡め取り、閉じていく。後には光の粒子と核が残った。

 ポロッとドロップ品が落ちる。

 キメリエスの剣、神鋼、キメリエスの蹄鉄(ていてつ)


 剣は残念ながら弱かったので売却、蹄鉄(ていてつ)は錬金アイテムだ。とっとこう

 2人とも特に疲れるまでもなく敵が倒れている為、休息なしで次へと進む。

 21~39層。此処も範囲魔法1発で残る敵が居ない。此れまで通りにさくっと進んで40層。まだ後れを取るようじゃやっていられない階層だ。サクッと倒せますように!さっと扉を開ける。


「鑑定!悪魔シャクス!弱点は炎・聖・刺突、無効は風」


 大きな白い鳥の姿をしているが、翼の他に一対の腕を持つ。


「アイスシールド!」


 シャクスが鋭く長い嘴でシールドを貫く。黒曜の腕肉を抉っていく。

 お返しとばかりに黒曜はその嘴を両断した。


「アイスシールド!」


 私の詠唱が完成する。


「穢れたるもの、我が領域にその存在を認めず。清らなる聖なる光よ全てを浄化せよ。穢隔(エクソサイズ)聖光陣(イムピュアリティズ)


 アイスシールドに風のブレスを叩きつけていたシャクスは魔方陣を被せられ、光の蔦に全身を絡めとられて行く。


「ギュウウウゥェエエエ!!!」


「グレーターヒール」


「――万物よ(ひざまづ)け、音にも聞こえよ我が龍術、纏龍技(まといりゅうぎ)一閃万葬(いっせんばんそう)!」


「悪しきものよ、我が前に膝を付け(ホーリー)(パニッシュメント)!」


 蔦の網の中でブロック状に切り分けられ、聖滅でその身を半分溶かされたシャクスが、断末魔を上げる間もなく蔦を閉じられミンチとなって零れ落ちる。核は半分に割られていた。

 ドロップアイテムがぽろっと落ちてくる。

 シャクスの槍・神鋼・シャクスの嘘


 槍は売却、シャクスの嘘は一度だけ、吐いた嘘を本当だと思い込ませるアイテムだった。これはこやしだな。


 少し怪我があったとはいえ、順調だと言える。休憩するか?と訊くと要らないといわれたので、スポーツドリンクと飴で疲労回復し、次へ進む。


 41~59層。少し奥の魔物が増えて来たかな?とは思うが、相変わらず範囲魔法1発で沈む。小走りで駆け抜けた。60層。そろそろボスが強くなって来る頃合だ。気合を入れて扉を開ける


「鑑定!悪魔グレモリー!未来を読む。弱点は聖、氷、斬撃、無効は土だ」


 その悪魔は美しい女性の姿をしていて駱駝に乗っていた。にい、と裂けた笑いで唱える。


「槍」


 シールドを掛けようとしたのを悟られたのか、先手で短い詠唱のものを叩きつけて来る。私を庇った黒曜の刀が間に合わず、横腹に槍が刺さる。


「ぐっ…アイスシールド!」


「ロックシールド!」


 未来が見えるのだ。攻撃に転じようとした所を悟られる。が、詠唱は完成した。


「穢れたるもの、我が領域にその存在を認めず。清らなる聖なる光よ全てを浄化せよ。穢隔(エクソサイズ)聖光陣(イムピュアリティズ)


 シールドごと、その蔦は絡めとる。真っ先に蔦の切断力に負けてロックシールドが崩壊する。バチン!と音を立てて、その分の余白を食ってグレモリーを捕縛する。


「グレーターヒール」


 槍を引き抜き、その傷を癒すと、黒曜の詠唱が完成する。


「――万物よ(ひざまづ)け、音にも聞こえよ我が龍術、纏龍技(まといりゅうぎ)一閃万葬(いっせんばんそう)!」


 蔦の網の中で身動ぎしようと踏ん張るグレモリーに、黒曜の技が入る。ブロック状に切り分けられたグレモリーが、更に蔦に(しぼ)られ、閉じられる。後には肉の切片となったグレモリーと、肉の上で浮いて光る核が残った。黒曜が一閃して核を砕く。

 ポロリとドロップ品が落ちる。

 グレモリーの手甲、神鋼、グレモリーの水晶


 手甲は交換出来そうなメンバーに持たせる事にする。水晶は未来を見れる、とある。

 少し集中して水晶を使ってみる。勇者がトルクスの王宮に向かうのが見えた。2日後だ。


「…1日、猶予があるようだ。上げられるだけレベル上げちゃうか?」


「それで構わない。明日もダンジョンデートしてくれるんだろう?」


「…ふふ、勿論!」


 ただ、王宮の結界は今日ダンジョンから出たら張り直そう。王に危害を加えられては堪らない。

 水晶は私が取っておく。王から要請があれば出向いて使う心算だ。


 お昼、と言うほど時間が経っていない。お茶を飲んで少し休憩する事にした。お茶請けはお萩だった。

 お萩好きですよ?でも紅茶かあ…。しかし、食べ始めると懐かしくて美味しくて、ちょっと涙が出た。

 うっうっ、お萩美味しいですリシュ神様…!今回の襲撃が終わったら、リシュのレシピで店を出そうかな。店員は雇えばいいだろう。それで少しでも食改革が出来れば嬉しい。

 とり合えず明日、土地を押さえよう。こればっかりは早くからやっておかないと中々見付からない事もあるからな。

 まずはパン屋にして、盛況なようならレストランもやろうかな。それでこの世界の食事情が発展するといいな。


 お萩で疲労回復した私達は次へ向かう。

 61~79層も、問題なく小走りでクリア。むしろどの魔物が奥の魔物なのかも解らない。途中でキノコの群生地があった。鑑定すると上位回復アイテムの錬金素材だった。根こそぎ全部頂いてアイテムボックスに詰める。


 そして80層。獄級に来てから60層で終わるダンジョンがないなあ、と苦笑する。此処をクリアしたら流石にお昼を食べようと提案する。了承を貰って、せーの!で扉を開ける。


「鑑定!悪魔フールフール!聖・刺突が弱点、雷と風は無効!」


 それは鹿が人間の両手を持ち、羽根が生え、尻尾が蛇の悪魔だった。


「アイスウォール!―重力(グラビティ)(フィールド)!」


 重力に押さえつけられ、ブルブルと震えるフールフールは、手をついたりはせずに耐えたが、身動きがなかなか取れないようだ。


「キュゥゥァアアアア!!」


 咆哮(ほうこう)と同時に雷がアイスシールドを破壊する。伝導率のいいシールドだったため、私達にも雷は届いた。

 が、詠唱は完了した。


「穢れたるもの、我が領域にその存在を認めず。清らなる聖なる光よ全てを浄化せよ。穢隔(エクソサイズ)聖光陣(イムピュアリティズ)


 フールフールに更に魔方陣が被さって光の蔦が伸びる。

 それを見届けてからかくりと膝を折った。自分と黒曜にグレーターヒールを掛ける。

 体の中心部が焼け焦げたような痛みが消えていく。

 角の間でバチっと雷が弾けるのを見て、黒曜が刀を構える。


「キュゥゥァアアアア!!」


纏龍技(まといりゅうぎ)、夢幻の廻!」


 丁度雷がまた降ってくる直前だった。弾き返しても相手にダメージはないが、助かる。


「聖なる千剣、顕現し、蹂躙せよ!聖爆剣閃(せいばくけんせん)!」


 強い聖属性を持つ剣が1000本。眩いばかりのオーラを放って体内深くへ突き刺さる――そして体内で聖気を放ちながら爆発する。


「グギュウウゥウウウ!!!」


 あちこちの肉を内部からの爆発で失い、蔦は完全に相手を絡めとった。少し抵抗があったようだが、無事魔方陣が閉じる。肉片となったフールフールがボタリと落ちる。核は爆破で粉々になったようだ。

 ポロリとアイテムが落ちる。

 フールフールの角剣、神鋼、フールフールの紋章


 角剣はいわゆる七支刀だった。使えそうな面子が居れば渡してやろう。能力は高い。紋章の方は、毎日1度即死ダメージを無かった事にするアイテムだった。


 ここで私と黒曜でどっちが紋章を付けるか争いになる。私は黒曜に付けたい。黒曜は私に付けたい。帰りにもう一度此処に寄る約束で、一先ず私が付ける事になった…解せない。


 一旦此処で昼食にする。オムライスとハンバーグとコーンスープ、プリンですか。お子様セットの再現ですかリシュ様。凄く美味しいです。黒曜も、オムライスの中のチキンライスが気に入ったようで、珍しく「美味しい…」と漏らしている。美味しくてお腹もぱんぱん。ふいーっと一息ついて、黒曜座椅子に座る。直ぐに腕が私を抱きかかえた。少しお腹がこなれるまでこの状態で(くつろ)ぐ。いやあ…癒されるなあ…


 お腹がこなれた辺りで、攻略を再会する。二人きりでも結構なんとかなるもんだ。ラスボスだけちょっと心配だがなんとかなると信じよう。黒曜は強いし!


 81~99層。特に変わりなし。さっくりと100層まで進む。あー、ここもラスボスじゃないなあ。さっと扉を開ける。


「鑑定!悪魔マルコシアス!弱点は氷と聖、無効は火と風!」


グリフォンの翼と蛇の尾を持つ狼の姿をしている。


「アイスウォール!」


 アイスウォールを目掛けて、猛烈な火のブレスが襲う。黒曜はロックウォールに切り替えた。


「ロックウォール!」


 ロックウォールの難点は敵が見えない事だ。だが、まだ其処に居てブレスを吐いているのを感じる。詠唱が完成した。


「穢れたるもの、我が領域にその存在を認めず。清らなる聖なる光よ全てを浄化せよ。穢隔(エクソサイズ)聖光陣(イムピュアリティズ)


 炎を吐いて静止していたマルコシアスの上から魔方陣を被せる。直ぐに蔦の侵食が始まり、マルコシアスの体を絡め取っていく。

 隙間を縫って蛇の尾が此方に噛み付こうと俊敏に動くが、黒曜がそれを切断した。


「悪しきものよ、我が前に膝を付け(ホーリー)(パニッシュメント)!」


「――万物よ(ひざまづ)け、音にも聞こえよ我が龍術、纏龍技(まといりゅうぎ)一閃万葬(いっせんばんそう)!」


 溶けかけたマルコシアスだが、龍技を耐えた。最初の一閃で首を断ち切られ掛けているが、内部は完全に切られずに半端な斬撃が幾つも走っているようだ。


(かぶり)落とし!」


 残りの首部分を断つと、蔦の侵食が一気に進む。元々斬撃で内部をやられていたマルコシアスは、絞られる魔法陣に対抗しきれず、魔法陣が閉じた。ぐちゃりと肉片が漏れる。肉片の上に浮いた核が静かに光る。黒曜はそれを薙いで両断した。

 ポロリとドロップアイテムが落ちる。

 マルコシアスの刀剣、神鋼、マルコシアスのスクロール


 刀剣はなかなか良いもので、黒曜の持っていた剣と交換する。元々持っていたアガレスの刀剣はアディに渡そう。

 スクロールは、マルコシアスを召喚出来るもののようだ。だが別に召喚者に従うとも限らないようで、倉庫のこやしにする。――と、小さい羽根の生えた犬がもぞもぞと肉片の下から現れる。うわあ久々だなこれ。私にはもう3体も居るので、目線で黒曜を促す。すっと黒曜が犬を抱き上げ、名付けた。


「そうだな…お前はマルコだ」


「ワン!!」


 嬉しそうに尻尾を振るマルコ。いいのか?元の名前の前半ままなんだけど。いそいそと黒曜のペットハウスに入る姿を見送る。


 ちょっとスポーツドリンクと棒飴を齧って休息した後、次へ向かう。

 101~119層。特に今までと変化がないように感じるのでそのまま小走りで駆け抜ける。そして120層。豪華な扉が見えた。ちょっとホッとする瞬間だ。ここが最下層。気合を入れて扉を開ける


「鑑定!堕天使アザゼル!弱点は聖・斬撃、火と風は無効!」


 7つの蛇頭、14の顔に6対の翼をもつかなりの異形ぶりだ。

 其処に居るだけで火を纏っているような熱を感じる。

 蛇の頭が攻撃を仕掛けて来るが、黒曜のシールドが弾いた。


「アイスワールド!アイスシールド!」


 黒曜のお陰で喉を焼く事無く詠唱を終えた。


「穢れたるもの、我が領域にその存在を認めず。清らなる聖なる光よ全てを浄化せよ。穢隔(エクソサイズ)聖光陣(イムピュアリティズ)


 魔法陣を被せられ、光の蔦が浸食する。それを、7つの首を振って振り払おうとするアザゼル。


「アイスワールド!」


 燃える様な暑さが戻りきる前に、黒曜がアイスワールドで周辺を凍らせる。残念ながら熱源であるアザゼルは凍らない。


「ロックシールド!」


「――夢幻の刻よ刻め、その足跡を。盤倉流奥義、無間不断刃(むげんふだんじん)!」


 止まっているように見えるほど緩慢な世界で、私は更に技を重ねていく


「聖なる千剣、顕現し、蹂躙(じゅうりん)せよ!聖爆剣閃(せいばくけんせん)!」


 強い聖属性を持つ剣が1000本。眩いばかりのオーラを放って体内深くへ突き刺さる――そして体内で聖気を放ちながら爆発する。


「九の型・無限乱刃」


 更に速度を上げた私が分身し、アザゼルの体のあちこちを切り刻んで回る。首は全て落とし、核のある場所に剣を突き刺した時に技が切れた。慌ててその体から跳び退り、筋断裂と火傷で酷い状態の腕と体を癒す。


「エクストラヒール」


 胴体と手足しかないアザゼルはほぼ蔦に絡めとられて動けない。


「――万物よ(ひざまづ)け、音にも聞こえよ我が龍術、纏龍技(まといりゅうぎ)一閃万葬(いっせんばんそう)!」


 黒曜の技でブロック状に切り分けられ、後は蔦が絞り上げて閉じた。肉片が辺りに散る。核は既に分断されていた。

 近づいて剣技を放った黒曜の火傷を癒す


「グレーターヒール」


 ドロップ品が落ちてくる。

 アザゼルの軽鎧、神鋼、アザゼルのカフス


 軽鎧はこっちの方が良いものだったので、私の鎧と取り替える。アバドンの胴鎧はシュネーにでも付けさせよう。

 アザゼルのカフスは、百科事典のようなものだった。解らない事に答えがあるならそれを教えてくれる。

 これは…ゆくゆく国を統治するシュネーが持つのがいいだろう。

 ふ―――っと大きく息を吐いて、黒曜のところへ行く。


「どっか怪我してないか?」


「さっきのグレーターヒールで癒えた」


「そっか。んじゃ約束の紋章取りに行こう」


「…覚えてたか」


 2人でこの階層を登録し、一旦外に出る。内部で移動すると、もう一度アザゼルと戦わないといけなくなるかも知れない。外から80層にカードで転移する。フールフールだ。2戦目なので割愛するが、やっぱり雷が厄介だったと言っておく。紋章を手に入れ、黒曜に付けさせる。


 本当はこんな便利アイテム、人数分欲しいところだけど、フールフールが厄介なのでちょっと勘弁して欲しい。


 そして今度は確信に近い。獄級に冒険者カード用の施設があちこちにあるのだ。誰かが設置した。このダンジョンも攻略されていた。そして何かが起こって人間は弱体化した。――一体何があったのだろうか。


 冒険者ギルド前に転移する。中に入ると、私の姿を見た受付嬢が身構える。


「…私は嫌われているのだろうか?」


「いえ全然そんな事ないですけど?」


「なんで身構えるの?」


「私が壊れない為です」


「………まあいいや。今日は2人で獄級ダンジョンデートしてきた」


「は?何デート?」


「獄級ダンジョンデート」


「何やってんですか!!!??デートなら色んなデートスポットがあるでしょうが!!!」


「ダンジョンが良かったから」


「……流石バケモノ姫とカイブツ王子…」


 額の汗を拭って、受付嬢はこちらへと耳を傾ける。今日やった事を報告した。


「なんっで2人で獄級踏破してるんですか!!??120層!!?もう全然普通じゃない、ダメだ情報を脳が拒絶するうううう! …フールフール?…マルコキアス?アザゼル!!??2人で倒せるもんだったんだ…へぇー…初めて知ったわ…ほほう…いや普通無理ですからね!!!!」


「うん、カード処理してくれ」


 受付嬢の叫びに飽きたので、こっちの要求を伝える。


「~~~~~~~ッ!!わっかりました、しますよ!」


 カードをてきぱき処理し終わると、受付嬢から受け取る。素材を売りに行ってた黒曜と合流して帰る。


「んあー楽しかった!2人で最後まで行けたの嬉しかったし!」


「そうか。それは良かった。そなたの笑顔が見れて私も嬉しいよマリー」


 私達はレベルが上がりやすい加護を持っているので3800程のレベルになっていた。


「明日行ったら他の皆を追い越せそうだな」


「そうだな」


 後は王にケイタイで連絡して、勇者の到来は明後日、行き成り王宮へ向かう、と知らせて置いた。

 それだけでなく王宮に転移し、残ったMP全部を注ぎ込む勢いでガッチガチの結界を張っておいた。


 じゃあ、家に帰ろうか。な、黒曜


シールド要員が減った分、どうしても被弾は増えますね。でも、マリーに言われるまで夫妻や兄はぼおっと敵を見てた要員でもあるので、マリーも黒曜も居ない、自分達だけでダンジョン攻略をする事はとても良いことだと思います。

読んで下さってありがとうございます!少しでも楽しく読んで頂けたならとても嬉しく思います(*´∇`*)もし良ければ、★をぽちっと押して下さると励みになります!

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